ニートは深夜の散歩でアラサー女子を拾う

白鷺雨月

第1話ニートは深夜の散歩でアラサー女子を拾う

どうにかして入った会社はとんでもなくブラックで、メンタルを病んだ僕は一年でやめてしまった。

ニートとなった僕は唯一の趣味である深夜の散歩を楽しむ。明日のことを考えると不安しかないので夜はあまり眠れない。だからそれならいっそのこと眠らずに散歩を楽しもうというわけだ。


深夜の街は昼間とは違った顔を見せる。

僕はコンビニに立ち寄り、好物のメロンパンと缶コーヒーを購入した。近くの公園で食べるのもよいだろう。


買い物用のエコバッグをぶらぶらとさせながら歩いていると、僕はとあるものをみつけた。

それはものではなく人であった。

ボサボサの黒髪をした女性であった。生地がすっかりうすくなったスエットの上下をきていて、三月とはいえまだまだ夜は寒いのに足はサンダルだった。


ちらりと見ると目があってしまった。その直後、ボサボサ頭の彼女のお腹が盛大に存在を証明した。


「食べますか?」

僕はきく。放っておいても良かったろうに、なぜだか気になった。僕は彼女にメロンパンを手渡す。


ボサボサ頭の彼女はメロンパンをむさぼり食べた。よほどお腹が空いていたのだろう、感心するほどのたべっぷりであった。


「あ、ありがとうございます」

ペコリと彼女は頭を下げる。


「僕は結城ゆうき良一りょういち。君は?」

僕はきく。

「私は佐藤さとう結実ゆみ、二十八歳です」

ボサボサ頭の彼女は聞いてもいないのに年齢までこたえた。その後、またお腹を鳴らす。


「良かったら家でなにかたべますか?」

僕がきくと彼女は大きく頷いた。


佐藤結実を家に連れて帰った。ニートなのにアラサー女子を拾ってしまった。

佐藤結実はおそらく何日も風呂にはいっていないのだろう。かなりすっぱいにおいがした。とりあえず彼女にシャワーを浴びさせた。着替えに僕のジャージを用意してあげた。

シャワーを浴びて、さっぱりした彼女の顔はかなりかわいいものだった。けっこう好みかも。

僕がつくったもやし入りのインスタントラーメンをうまそうに彼女は完食した。


何気なくテレビをつけるとニュースが流れる。

「自宅で交際していた男性を殺害した佐藤結実容疑者は現在も逃亡中です……」

化粧の濃い女子アナウンサーがニュースを読む。

佐藤結実はラーメンの汁を飲んでいた。どんぶり越しに目があう。


ことりと佐藤はどんぶりを置く。

「違うの……家に帰ったらあの人が勝手に死んでいたの……」

エンエンと泣きながら佐藤結実は言った。

根拠はないが僕はその言葉を信じることにした。


殺人容疑者の佐藤結実と僕は共同生活をすることになった。

僕のアパートから出ると彼女は捕まるかもしれない。気晴らしに外に出られるのは皆が寝静まった深夜だけだ。

誰もいないことを確認して僕たちは深夜の散歩を楽しんだ。

そんな生活を一年ほど続けた。

僕は再就職が決まった。前に働いていたところに比べたらかなりホワイトなところだ。

そして、佐藤結実の容疑ははれた。真犯人が捕まったからだ。

真犯人は結実が交際していた男性の本当の交際相手だった。結実は本人は知らなかったが、浮気相手だったのだ。


「で、どうするの?」

僕の部屋を出ていくかと結実にきく。

「ここにいていい?」

質問に質問でかえされた。

僕はいいよと答えた。

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ニートは深夜の散歩でアラサー女子を拾う 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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