未来の月

ミンイチ

第1話

 人類が宇宙に進出して数世紀、地球はただの田舎の一惑星となっている。


 しかし、人類がそこから発展していったという事実があるため、地球全体が人類の歴史を記す保存館のようなものとして、観光惑星として他の田舎の惑星よりも栄えてはいた。


 そして、地球の衛星だった月は見た目は昔と同じに、しかし中身は全く違ったものになっていた。


 人類が宇宙に進出し始めた頃、月は宇宙への中継場所としての役割を担っていた。


 人類は信心深いもので、月の中継基地にも教会や寺、神社などを建立していた。


 地球にいる人類の数よりも宇宙にいる人類が多くなった頃、月は通信基地へと作り変えられた。


 この頃はまだ太陽系の外に出ている人類は少なく、太陽系内で通信するのにちょうど良い場所に月と地球があるため、通信基地として大いに活躍していた。


 宇宙にはたくさんの人類が進出したが、やはりその中には略奪行為などを行う人々が現れた。


 そしてその中のある組織が月を侵略し、乗っ取ってしまった。


 宇宙に進出した国やうちゅで新たに生まれた国は月に通信を依存していたため、大きな混乱が生じた。


 各国は急造ではあるがなんとか通信基地を新たに設置し、連携を取って月の奪還に動いた。


 月はかつては宇宙への前線基地であったため、時代遅れではあるがそれなりに強い兵器が大量に設置されていた。


 一つ一つの強さは最新のものに比べると劣っていたが、量があったため各国の月の奪還計画は失敗し続けた。


 ある時、宇宙内でも下から数えたほうが早いほど小さい国がある兵器を使った。


 その兵器はのちに「サテライトバスター」とも呼ばれるものになるもので、その兵器の威力は凄まじく、強すぎる威力で月は粉々に砕け散った。


 月が破壊されると、地球の自転は少しずつ早くなっていくと昔から言われていたが、それは現実になりつつあった。


 このままいけば地球は生き物が住めなくなる惑星になると危惧した人々によって、月の代わりになるものを近くの小惑星群で作り、それを月があったところに戻した。


 地球は素の速さに戻ったが、月の破壊の衝撃と自転が早くなったことで住んでいた人々の生活は成り立たなくなった。


 そして地球にいた人々はほとんどが宇宙に飛び出していったが、残った地球と地球の復興を任された月を破壊した国はその地球丸々一つを保存館として生まれ変わらせた。


 そして、月は地球の場所を示すビーコンの役割を担うように改造された。


 現在では、新たな月は昔の月と同じ見た目になるようにもう一度改造し、地球はすべて人類の歴史保管館として各国の学校の修学旅行先へと変化したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

未来の月 ミンイチ @DoTK

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る