第十三話 幹部による重大な伝え忘れ

 赤木家を見送り、ピエロの仮面を脱いだ。これで俺の役目は終わりだ。さて、ちょっとコーヒーでも飲んで落ち着こうかな。


 ふと下を向くと、そこにはカンペが落ちていた。どうやら、途中で落としていたらしい。男はそれを拾い上げ、全てのことを赤木家に伝えられたかおさらいした。


「あ……」


 そして彼は、冷や汗をかいた。裏にも書いていたのを忘れていた。むさぼるように裏を読む。


『重要! 充電式なのを確実に伝えるように! ソリには様々な機能があるが、それを使うと充電がなくなるので、決して使用しないように言うこと!』


「忘れてたああぁぁ!!」


 慌てて外に出たが、もうそこに赤木家の姿はなかった。

 まあいいか。どうやって機能を使うかは教えていないし、多分大丈夫だろう。多分。おそらく。メイビー。


 心の中で言い訳をしながらコーヒーを注ぐ彼の手は、かわいそうなほどに震えていた。

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