業欲の天体

イルカ巻き

序章 異世界に飛ばされて

プロローグ

 誰かが欲した、圧倒的な力を。

 誰かが欲した、皆からの称賛を。

 誰かが欲した、森羅万象の知見を。

 それらは我らを支配しようとする『欲』である。我らはそれに抗い、されど従いながら生きている。そんな、欲が渦巻く摩訶不思議な世界の夢を見た。


 とある夏の日の夜中、『森川 樹生もりかわ いつき』は目が覚めてしまった。時間は、2時16分。なんとも微妙な時間だ。もう一度寝ようと目を閉じるが、なかなか寝付けない。仕方なく布団から起き上がり、夜風に当たろうと外に散歩にでかけた。

 季節は夏だが、この時間にもなると少しばかし涼しく感じる。

 とある地方国公立大学への入学が決まり、一人暮らしを始めてから一年と四ヶ月が経っていた。夜道を歩きながら、時間の速さを感じていた。

 そして、上を見上げれば、そこには星空が広がっていた。ここが地方だからだろうか、東京に比べて街の明かりが少なく、星空がある程度きれいに見えていた。

 星空を眺めながらそんな些細なことを考えていると、一つの星に目が行った。その星は他の星と違って、点滅しているように見えた。

―飛行機か人工衛星の見間違いだろう。

そう思いながら歩けば、次第に眠気を感じてきたので、家に帰り、床に就いた。どうやら、今度はしっかり寝れそうだ。


「目覚めよ。異界の存在たちよ。」


 聞き慣れない声とともに目を覚ますと、いつもとは違う見慣れない光景が目の前に広がっていた。

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