転生したら髭もじゃの夫がいました。

黒月白華

第1話 プロローグ

私…間宮進子23歳OLは毎日疲れていた。残業の多いブラック企業勤め。上司にいびられ客のクレーム対応でストレスは溜まり…そんなある日スマホでストレス解消の方法を検索していたら…


乙女ゲームの広告が目に止まった。


「乙女ゲームか…学生の頃よく友達と騒いでやったな…」

楽しかった。よく異世界トリップでイケメンが横にとか悪役令嬢に転生してヒロイン成敗やら…あったよね。盛り上がったわ。


何にしても彼女達はどの道イケメンを手に入れしハッピーエンドが定番となる。


私だって物語の世界に転生できたらイケメンと幸せになるのにな。


「うぇへへへ!誰でもいいからイケメンと恋に落ちたいいい!!毎日毎日クソ客のクレーム対応は精神を削る!乙女ゲームして死んで異世界転生したいっっ!」

と私はなんとか事故に遭わないか考え始めた。

よく人助けをして死んだら転生できると漫画や小説知識で知る。


「とにかく…乙女ゲームをしてから考えるか!」

とりあえずクリア目指して私な夜な夜な部屋でゲームをしていたので遅刻がちになり上司に怒られる。


私は昼休みもパンを齧りながら一人乙女ゲームをする。今は我儘な王子様の攻略中だ。他にも人懐っこいイケメン幼馴染やホストと紙一重のイケメン教師やらクールイケメンの公爵令息やら甘えん坊の病気気味の伯爵令息などがいる。大体一人一週間ほどかかり攻略を進めて私は幸せだった。


現実逃避とはこういうことだ。しかし私にはその世界しかなくどっぷりハマる。


ある日仕事帰りに私は歩きスマホで乙女ゲームを楽しみ信号待ちしていた。するとボールが転がっていく。


「待ってー?」

と男の子が駆けていく!

え?不味くない?この子…死んじゃわない?ホールを拾った時子供に車が迫る!

目の前で子供が跳ねられる姿なんて嫌だ!

自分でも驚くほどの反射神経で子供を引っ張り信号の方に投げた瞬間にガツンと私は空中に放り出され今迄の走馬灯が流れた。


小学生の頃名前をバカにされた。

シンコだから…おしんことか下ネタとか。

それで辛い思いをした。

それで…学生時代はボッチが多く就職したらブラック企業で…。

私の人生って一体…。


地面に落ちる数秒間。

今度生まれ変わったらイケメンの金持ちと幸せになりたい!とにかくイケメンと!!


と思いながら地面に激突し私は暗闇に包まれた。



「ん……」

目が覚めると…


私は知らない家にいた。やけにボロい小屋?

え?

訳がわからずに辺りを見渡す。薄暗くてまだ夜なのがわかる。窓がある。外を見たら何かわかるかもとベッドから降り何かを踏んだ!


「いでぇ!!」

と男の声がして私は驚いた!!


「きゃあ!!」

と叫ぶと捲りと男が起き上がる。ブワッと酒の匂いがして…


「あんだよ!?いてえな!人が気持ちよく寝てたのに!ドリス!妻なら夫を踏むんじゃねぇよ!」

とその男は言う!

音が蝋燭にマッチみたいので火をつけた。

明るくなり私は恐怖する!

ボサボサの髪に髭もじゃで顔は長いボサボサ前髪に隠れてよくわからない!

怖っ!


「だ!誰なのあんた!!?出てって!もしや強盗!?」

と怯えると男は


「あに言ってんだドリス?俺だよ。ゴルダじゃねぇか。お前の夫の!」

と言い私は青ざめる!


「そそそ、そんな!!夫!?貴方が?私の!?」


「ドリス…お前頭でも打ったのか?おかしいぞさっきから?明日は早いんだからさっさと寝な!お前さんは学園の食堂で働いてんだからよ!


まぁ、その金でこうして俺は酒が飲めるけどなぁ!!」

わははと男が酒臭い息で笑った!!


は?学園?食堂ですって?


「な、なんて学園よ?」

と聞くと男は


「ああ?何だったかねぇ?マーウィ?ファーウェイ?」


「…もしかして…アルヴェル学園!?」

と聞くと


「そんな名前…。とにかく寝ろよー。ああ、一緒に寝て欲しいのか?ぐへへ?そろそろ子供も欲しいよな」

と男が私の隣に入ってきたので恐怖で私は男を蹴り飛ばした!!


「いでえええ!!」


「来ないでっ!!」


「へ?」

と男が不思議な声で聞く。


「ドリス??」


「そうだ!鏡は!?」

と蝋燭を持ち家の中を探しまくり引き出しを開けようやく手鏡を見つけた!!


「ドリス?」

男はもう一度聞く。

無視して鏡を覗き絶句する!!

そこには茶髪の少し優しそうなお姉さんがいた。

これが私の…姿!!

転生した!!


そう、私は転生したのだ!この姿で…スマホでハマってた乙女ゲームの世界に!!

アルヴェル学園…ゲームの舞台となる学園だけど…


私はどうやらそこの食堂に勤務しているらしい!そしてこの髭もじゃ男と結婚してるだとお!?

私は髭もじゃを睨みつけた!


「どうしたドリス本当に?」


「別れて」

と私は冷たい声で言う。


「は?何冗談言って…」


「冗談じゃない!別れて今すぐ!!」


「はぁ???」


「出てって!!あんたなんかお断りよ!!」

と私が怒鳴ると男は驚き


「ドリスがおかしくなった!!大変だ!!」

とドタドタして出て行った。

私は鍵をかけた。


とにかく…あの男と別れよう!

そして私は学園に行き攻略対象のイケメンと恋に落ちるの!


ヒロイン?悪役令嬢?知ったことか!

私は金持ちのイケメンを手に入れる!!絶対に!!


と心に決めた。

その後男が戻りドンドン戸を叩いて


「薬…貰ってきたよ!ドリス!開けてくれドリス!」

と叫ぶが私は布団を被り開けなかった。

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