雨で思い出したこと

星之瞳

第1話突然の雨

「畜生!夜の散歩なんか出るんじゃなかった!」受験勉強が煮詰まり出掛けた俺に、突然の雨。傘をもっていない俺はずぶぬれになりそうだった。確かこの先の公園に・・・。俺はあることを思い出し公園に急いだ。滑り台の下に確か・・・。滑り台に近寄ると「ここ、ここ」俺は滑り台の下にある穴に入り込んだ。「ここってこんなに小さかったっけ?いや、俺がここで遊んでいたのは小学校低学年の頃だから、俺の方が大きくなったのか。うん?」俺はその穴の壁の上の方に何か書いてあるのに気がついた。スマホのライトを当てると『またかえってこれるかな、田中さとる』薄くなっていたがどうにか読み取れた。

「田中さとる?」俺は記憶を探る、「あ、あのさとる君か!」

さとる君は俺が小2の時の転校生。親の仕事の関係で転校を繰り返しているのだと聞いた。クラスメイトとはあまりなじめなかったけど、俺とは同じカードゲームが好きということで仲良くなってこの公園のこの滑り台の下でよくカードを見せ合ったりして遊んだ仲。

そんなある日「僕、また転校するんだ」とさとるは悲しそうに言った。「ねえ、たかや君は将来なりたい職業ってある?」とさとるに聞かれた俺は「別に今は考えていない、毎日楽しければいい」って答えたつけ。

「僕はね、転勤しなくていい職業に就きたい。社長もいいけど、弁護士とかいいよね。自分で事務所を持てばそこにずーっとそこに住んでいられるし」とさとるは夢を語ったっけ。それからしばらくしてさとるは転校していった。

今、さとるはどうしているだろう。俺と同じ学年だからあいつも受験生か。

あの頃言ってた通り弁護士を目指しているのかな。俺も頑張らなくちゃな。まだ先は見えてないけれど、とにかくこの共通試験を合格しないと志望校を決められないし。色々考えているうちに雨が小やみになってきた。「帰ろう」俺は歩きだした。自分の足で。

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雨で思い出したこと 星之瞳 @tan1kuchan

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