その祓魔師は彼岸を迎える。
柚野朱莉
第1話 融合
「面倒なことになった…ここは…どこだ」
男の戸惑いは空へと消えた。
それは人間というにはあまりにも透けているものであった。
彼がいたのは熊本県某所。ドが付くほどの田舎で彼はひとり彷徨っていた。
「くそっ来る場所を間違えたか。ここには死にぞこないしかいないじゃねえか。どこか元気な奴はいないのか…」
やけに口の悪い男は高齢者の多い村を歩く。
「なんなんだこの村は…老人が多いのはいいとしても、やけに霊が多いな。まるで心霊スポットだ。」
周囲には彼の様に半透明な者たちが多くいた。彼以外の半透明な者たちは俯いており生気をまったくと言っていいほど感じなかった。
逆に彼が元気すぎるのかもしれない。
そして彼はある家にたどり着いた。いかにもな外見をした古い日本家屋だ。
「ここまで古くなくていいが日本家屋に住んでみたかったな。」
するとドアが開き20代前半と思えるような若い男性が出てきた。
「おっ!ちょうど元気そうなやつ。こいつでいいか」
彼はその青年を追い、機会をうかがった。しかし青年は隙を見せるどころかまるで逃げる様に動き回る。
「こいつ勘が鋭いのか?俺が追っていることに気が付いていそうな動きだな。これは寝るまで待機だな。」
彼は人が寝静まる時間まで待ち、青年のもとへ行った。
「よし。悪いがお前の体をもらうことにするぞ。」
彼は青年の頭上に手をかざすと溶けるように青年の体へ入っていった。
朝になり青年は目を覚ました。身支度をし、家を出る
「どういうことだ。なぜおまえがいる。」
「っ!?僕の体の中にもう一人いる!!?」
青年は玄関で体の中に入った男の存在に気が付いた。
「俺はお前の自我を破壊したはずだ。なのにお前の自我がまだいやがる。一体どういうことだ。」
「僕の自我を殺した?一体なんでそんな。」
「俺はお前の体を貰おうと思っただけだ。そういうことで主導権はもらおう。」
そういうと男は青年の体を奪おうと試みる。しかし…
「なぜ動けない。なるほど。そこまで力が弱まっているのか…仕方ない」
そういうと男の抵抗が消えた。
「君は誰なんだ?」
青年は聞く。
「人に名前を聞くときはまず自分からっていうだろう?」
男はそう返した。
「そうだね。僕は加納唯人。19歳だ。君は?」
唯人は律儀に挨拶をする。
「俺は仁。俺は人間ではなく鬼だ。あまり人に言うなよ。祓われたら困る」
仁はそう答えた。
「お、鬼?そんなもの都市伝説とかの類と思ってたよ。」
「まぁ間違ってはない。都市伝説から生まれたわけだからな。」
仁は唯人に対し返した。
「いつまで僕の体にいるつもりなのさ。」
唯人は先の部屋に戻ると仁と会話を始めた。
「俺は体を見つけるまでだな。」
「体?仁の?」
「あぁ。鬼に肉体なんてないんでな代わりになる体があればいなくなるかもな。」
たわいのない会話をしていたが仁が外に注目しだした。
「面倒だな。」
ふと外に何か嫌なものを感じた。
「あれは?」
「悪霊だ。お前が急にあちら側に傾いたから惹かれてしまったんだろうな」
「ともかく体のない俺にできるのはお前に技術を教えることだ。」
唯人は焦りを見せた。
「悪霊!?逃げることは出来ないの?」
「逃げることもできるが、いいのか?今のうちに慣れておかないとまた来た時に困るのはお前だぞ。」
「…わかったよ。やらないといけないんだろ」
仁は唯人に祓い方を伝えた。
「そんな力がうまく使えるかはわからないけど頑張ってみるよ。」
そういい彼は手に力を集中させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます