深夜の散歩
水谷一志
第1話 深夜の散歩
一
今、何時なのだろう?
辺りは暗い。物音もしない。私が時間が分からないのもおかしいが……、時刻が客観的に知りたくなる。
二
私はどちらかと言うとせわしなく動くタイプだ。それは……、実は昼でも夜でもそんなに変わらない。太陽がまぶしかろうが、当りが真っ暗で月あかりもなかろうが関係なし。ひたすら歩き続け、あまり疲れを感じない。
ただそんな私も、もちろんエネルギーが必要だ。……まあ腹持ちは良い方だが。特に歩いている時はエネルギーの枯渇を感じない。むしろ歩みを止めた時に「エネルギーがなくなった」と感じるかな。
三
おっと、私にライバルが現れた。これは「競争」になるのか!?……まあ良いがこんな相手見たことがない。今までもライバルは確かにいた。歩いているのか何なのか分からないヤツだ。でも今回は少し違う。なに、心拍数が測れる!?スマホなるものも駆使できるのか!?……そう、私は古いタイプだ。何年生まれかは秘密だが。
四
そんな私の古い仲間たち。せわしなく動く私に比べて、仲間はゆっくり歩く。そこそこゆっくりの仲間に、もっとゆっくりの仲間。みんなで歩くのは楽しい。また、眠気覚ましかしっかりうるさくしてくれる仲間もいる。これは……、深夜や明け方など心強い、かな。
五
ただ今日は私の仲間、かなりうるさくしている。今はまだ暗い。こんなに叫んで大丈夫なのか!?……私が時刻が分からないと言うのも変な話だが夜中にうるさくするのはいかがなものか。
六
※ ※ ※ ※
「あ~起きなきゃな……!いま何時だ?危ねえ~2時50分!」
「時差ってキツいよな……。深夜のヨーロッパのサッカー、【日本じゃ午前3時】にキックオフだもんな!【目覚ましかけといて良かったよ】」
そう、私は【時計】。秒針の私は仲間の分針、時針、アラームたちと今日も歩み続けている。
(そんな私が「時刻が分からない」と言うのもヘンな話だが)
(終)
深夜の散歩 水谷一志 @baker_km
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