第9章 アイドルダンジョン配信者さん

第41話 朝星チャンネルとコラボ

「リスナーのみんなー!こんばんはー!『モーニング☆スター』のフーちゃんです!」

「同じく『モーニング☆スター』のサヤサヤで〜す」

「ナミです」


〈始まった!〉

〈きたー!〉

〈サヤサヤー!〉

〈なーみんは俺の嫁!!!〉

〈みんな今日も可愛いよ!〉


「今日は何と!今話題のダンジョン探索者コンビ、『2F』とのコラボ配信だー!」


〈コラボだ!〉

〈ニーエフだあああああああああ!!!〉

〈うおおおおおおおお!!〉

〈ニーエフって誰だ?〉

〈有名な人?〉


『2F』と聞いてピンときた人は少なかったようだ。

まあパーティー名決めるだけ決めて全然使ってなかったしな…。


「えー、9割以上の人が初めましてだと思うので初めまして、サンです」

「ミアでーす!」

「みんなー!サンミアだよー!」

「わ〜!」

「その節はありがとうございました」

「いえいえ」


〈あ、サンちゃんかあ!〉

〈3chの人じゃん!〉

〈この間はみんなを助けてくれてありがとう!〉

〈深層転移の人だ!〉

〈凄え!〉




今日はアイドル配信者の『モーニング☆スター』とコラボ配信だ。

スタンピードの際に土砂の下から助け出したことで縁ができ、お礼ついでにコラボ依頼が来たのでOKした。

『モーニング☆スター』は『ダンジョン配信者系アイドル』として活動していて、チャンネル登録者数も100万人超えの人気グループ。

レベルも全員30を超えていて、歴とした高レベル探索者でもある。


「今日は『品川ダンジョン』26層からスタートして30層を目指すよ!」

「前回はスタンピードのせいで失敗しちゃったからね〜」

「リベンジ成功させましょう」


〈大丈夫?またスタンピード起きたりしない?〉

〈心配だよ〜〉

〈下層攻略はもっとレベル上げてからでもいいんじゃない?〉

〈もう危ない目にはあってほしくないんだ…〉


(やっぱり、うちの配信とは結構雰囲気違うな)


今回は彼女達の『朝星チャンネル』の方で配信を行っている。

『3ch』での配信は無しだ。

この間のスタンピードで危険な目にあったせいか、コメント欄には彼女達を心配する声が多かった。


「大丈夫!スタンピードなんてそうそう起こんないはずだし!」

「フーちゃん、それフラグや〜ん」

「フラグ?フラグって何?」

「この後起こることを暗示するような発言のこと」


リーダーの『フーちゃん』こと白鳥風子さんは性格も髪の色も明るいザ・陽キャ。

ピンク色の派手な道着に身を包んでいる弓使い。

『サヤサヤ』こと桐島鞘姫さんは黒髪金メッシュ。

ミニ丈の黒ワンピースに黒い上着で、全身黒ずくめだ。

露出も1番多くてダークな雰囲気だが、何かずっとヘラヘラしている槍使い。

『なーみん』こと長谷波さんはアッシュブラウンのストレートロングヘア。

前髪を後ろへ流しておでこが見えている。

白シャツにパンツルックで全体的に真面目な印象。『モーニング☆スター』の前衛担当で剣士だ。

そして3人とも美人である。

流石アイドル。


「これでまたスタンピードが起きたらフーちゃんのせいだからね〜?」

「えー!?でも、今日はサンさんもミアさんもいるから大丈夫だよね?」

「任せて!」

「ちょっと保証できないですね…」

「えーーー!?」


私も無事に終わったら良いなとは思っている。

けど、この1ヶ月で未発見転移2回とスタンピード1回を経験した私には、とてもじゃないが「絶対大丈夫!」とは言えないんだよね…。




オープニングトークもほどほどに私達は探索を始めた。

しかし見える範囲に魔物の姿はない。

26層は山フィールドで、元々見通しがよくないから仕方ないのだが、こうなるとまたトークで時間を潰すことになる。


「サンさんって女性ですか?ってコメントが山ほど来ています」

「あー…」


まあ、この質問は当然あるだろうなと思っていた。


「いつもは性別不詳でやっていますが、今日は女性で大丈夫です」


〈今日は??〉

〈何それw〉

〈どういうこと?w〉


「いややっぱ女性アイドルが男性とコラボってなると炎上しそうじゃないですか?特に私のXwitterが」

「炎上対策で性別変わるの!?」

「性別が可変式の人間初めて見たわ〜」


今日は人気女性アイドルグループとのコラボだから、特に炎上対策は入念にやってきた。

髪の毛も長めの状態をキープしてあり、今は中性的というより女子っぽい感じに見えているはずだ。


「どうですか?」


〈女の子にしか見えないです!〉

〈可愛い!〉

〈こんなに可愛い子が男の子なわけがない〉

〈男性アイドルとコラボする時は髪短くするの?〉


「そうですね。もし男性アイドルとコラボする場合は髪も短くするし、性別も男だって言い張ります」

「言い切った!」

「すご〜!ほんとに可変式や〜ん!」

「炎上対策で性別非公開にしてるんですか?」

「いや別に…割とノリで…」


〈そこはノリなんだw〉

〈思ったよりテキトーなんですねw〉

〈サンさんとミアさんは付き合ってるんですか?〉


「あ、この質問も沢山来てます」

「えー、あたし達付き合ってるように見えちゃう!?きゃー!!」

「付き合ってないです」


〈バッサリで草〉

〈テンションの差が凄いw〉


「確か、魔物に襲われてるミアさんをサンさんが助けたんですよね?」

「うわ〜白馬の王子様じゃ〜ん!」

「あ、めちゃめちゃ遠くに魔物がいますよ。倒しに行きましょう」

「えー、どこ…?」


〈すっごい強引な話題転換で草〉

〈遠過ぎて魔物どこか分かんないんだけど…〉

〈カメラさんもっと寄せて!〉

〈もしかして上の方で動いてる黒い点のこと言ってる?〉

〈あれかあ〉




本日初遭遇の魔物は『山ゴブリン』だった。

手足だけが異様にムキムキになったゴブリンだが、身長は変わらず130cmくらいなのでバランスの悪さが凄い。

草木の生い茂る山の中を1体だけでフラフラしている。


「どうします?最初だし全員でやりますか?」

「あ、出来れば譲ってもらっていい?一応これ復帰して初めてのバトルだからさ」


ということで、初戦は『モーニング☆スター』の3人に任せることになった。


「なーみん、サヤサヤ、行くよ!」

「お〜!」

「ゲストのお2人にかっこいいところを見せないとですね!」


3人は一斉に山ゴブリンに向かって走り出した。


「いっけえ!」

「雷撃!」


まず弓使いのフーちゃんさんと魔法も使えるサヤサヤさんが先制攻撃。

不意打ちだったが、山ゴブリンはギリギリでこれを回避した。


「隙あり!」


弓と魔法を避けて体勢の崩れた山ゴブリンに、なーみんさんが日本刀で斬りかかる。


「GOBUUUU…!!」


山ゴブリンは太い右腕を盾にして刀を受けた。

結果、山ゴブリンの右腕は千切れ飛んだが、命にまでは刃は届かず。


「GOBUUUUUUU!!!」

「くうっ…!」


反撃の左パンチをなーみんさんは日本刀の腹で受けた。

しかし山ゴブリンのパワーは凄まじく、刀ごとなーみんさんも吹き飛ばされて地面を転がった。


「GOBUUUUUUU!!!」

「させないよ!」


追撃に出んとする山ゴブリンの足元にフーちゃんさんの矢が降り注ぐ。

回避のために後退したところへ、サヤサヤさんが槍を構えて突っ込んだ。


「魔装!雷神斬り!」


スキルの重ね掛けで強化された槍が山ゴブリンの左肩を貫く。

これで両腕が使用不能。


「いっけえ!ブレイクアロー!!」


無防備になった山ゴブリンの土手っ腹に、フーちゃんさんの矢が突き抜けていった。




「ふう…どうだった!」

「お見事でした」

「めっちゃ凄かった!何て言うか、バランスが良い感じ!」

「確かに、連携凄かったですね」


私達が割と特化ステータスでゴリ押すタイプだから、まともな連携攻撃は新鮮だった。

危なそうなら加勢に出ようと思っていたが、互いのフォローも早かったので私達の出番は無かった。


「ありがと〜!」


〈推しが褒められてて俺も嬉しい〉

〈分かる〉

〈ナイファイ!〉

〈不安だったけど全然大丈夫そうだな!〉


「なーみん大丈夫だった?」

「かすり傷だから大丈夫」

「一応ポーション使っとく?」

「私、天恵のスキルあるので、擦り傷程度なら2メートル以内にいればそのうち治ると思いますよ」

「近くにいるだけで良いんですか?便利…」

「いいなー回復スキル!」

「うちら誰も持ってないんだよね〜」


ちなみに3人のステータスは以下の通りだ。


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:フーちゃん@モーニング☆スター

レベル:31

体 力:53

攻撃力:53

防御力:53

素早さ:53

魔 力:25

 運 :10

S P :0

スキル:弓術、速射、魅了、ブレイクアロー、鷹の目、体術

ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:サヤサヤ@モーニング☆スター

レベル:31

体 力:51

攻撃力:52

防御力:51

素早さ:51

魔 力:40

 運 :10

S P :0

スキル:槍術、雷撃、魔装、雷神斬り、挑発、魔力回復

ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:なーみん@モーニング☆スター

レベル:31

体 力:55

攻撃力:55

防御力:55

素早さ:55

魔 力:20

 運 :10

S P :0

スキル:剣術、身体強化、拳術、水の拳、縛法

ーーーーーーーーーーーーー


3人とも基本に忠実なバランス型のステータス。

装備も全員軽めで、弓使いのフーちゃんさんでも機敏に動けそうな感じだ。


「次はサンさんとミアさんの実力を見せてもらう番だよ!」

「任せて!」




そこから少し歩き、山の真ん中より少し下くらいの位置で階層主の『オークジェネラル』を見つけた。

推奨討伐レベルは30。


「じゃあ、あたしから行ってくる!」

「え、ミアちゃん1人で行くの!?」

「ボスですよ!?」

「私達は両方特化型なので、連携とかほぼ無いんですよね」

「そ、そうなの…?」


〈え、大丈夫か?〉

〈サンちゃんが走ってる動画は見たことあるけどミアって子の戦闘見るの初めてだ〉

〈オークジェネラルはかなり強いぞ〉

〈下層のボスをあまり舐めない方が…〉


杞憂コメントには目もくれず、美愛さんはオークジェネラルに向かっていった。


「いっくよー!」


そして魔法の射程内に入ると足を止めて、


「火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!」


火弾20連射がオークジェネラルを吹き飛ばした。


「えええ!?」

「な、何これ〜…」

「これって…魔力持つんですか?」

「美愛さんは魔力100だから今ので1/5くらいですね」


〈やっば〉

〈今何連射したんだ?〉

〈いつも見てる戦闘と違う…〉

〈オークジェネラルが一瞬で焼肉に…〉


ざわざわしている『モーニング☆スター』の3人とコメント欄をよそに、美愛さんはニッコニコで帰ってきた。


「どうだった!」

「すっごかったけど…」

「凄過ぎてちょっと引いてるかも…」

「これがサンさんの相方の実力…」

「あれ!?もっと褒めてもらえると思ってたのに!?」

「美愛さん、お疲れ様でした」


よし、次は私の番だな!


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:美愛

レベル:30

体 力:35

攻撃力:54

防御力:20

素早さ:25

魔 力:80/100

 運 :10

S P :0

スキル:火弾、連射、魔力回復、チアー、大炎上、暗視

ーーーーーーーーーーーーー

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