第30話 中層無双攻略配信

『品川ダンジョン』16層からは砂漠ステージだ。

階層主は『サラマンダー』。

火を吹くオオトカゲである。

推奨討伐レベルは21。


「一閃!」

「KYUUUUUUUUUU!!?」


〈はいワンパン〉

〈一閃強過ぎ問題〉

〈でももう透視も使えへんで〉

〈魔力回復ポーションでも買うか〉

〈魔力回復ポーションって高いのに回復量微妙なんだよなあ〉

〈弱で10回復だっけ?〉

〈サンちゃんなら全回復やんけ〉


ゴーレムをワンパンKOした辺りで思ったが、『一閃』があれば20層くらいまでの敵は全部一撃で倒せそうである。

問題は魔力消費が3なことだけだ。

そろそろレベル上がってくれないかな…。


「レベル上がったよ〜」


美愛さんの方は順調にレベルが上がっている。

2日前は14レベだったのが今や19レベだ。

若干パワーレベリング感はあるが、3レベ差くらいの魔物と戦っているのでギリ見逃してほしい。


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:美愛

レベル:19(+1)

体 力:21

攻撃力:30

防御力:20

素早さ:25

魔 力:55/58

 運 :10

S P :6(+6)

スキル:火弾、連射、魔力回復、チアー

ーーーーーーーーーーーーー


「あ、何か新しいスキルある!」

「え、もう新スキル!?早っ…くもないのか」


一昨日『魔力回復』を覚えたばかりだから早く感じるが、もう19レベだからそろそろ覚えてもおかしくはなかった。


「チアーって何?」

「応援…?」


〈チアーは味方へのバフスキルやね〉

〈最近は応援ばっかりだったからかな?w〉

〈味方1人の体力と攻撃力を+5するスキル〉

〈結構強そう?〉

〈まあ普通くらい〉

〈だけど今はサンの火力不足解消できるから強くね?〉

〈それだ〉

〈もしかして最高のスキル引いた?〉


「美愛さん、それ最高かも!」

「本当?やったー!」

「さっそく次の戦闘から使ってもらっていいですか?」

「任せて!」


私のレベルは一向に上がらないが、火力不足問題は解決の糸口が見えてきた。

やはり仲間がいるって大事なんだなあ。


「SPの割り振りはどうしますか?」

「リスナーのみんな、どうしたらいいと思う?」


〈砂漠は体力上げた方がええで〉

〈暑いからなあ〉

〈体力25の魔力60で見栄え良くなるな〉

〈出たわね見栄え理論〉


「体力25の魔力60ね、オッケー!」


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:美愛

レベル:19

体 力:25(+4)

攻撃力:30

防御力:20

素早さ:25

魔 力:57/60(+2)

 運 :10

S P :0

スキル:火弾、連射、魔力回復、チアー

ーーーーーーーーーーーーー




17層の主は『サンドワーム』。

推奨討伐レベルは変わらず21のままだ。

ただ砂漠ステージは敵よりも環境の方がキツいので、逐一階段で休んで水分補給をしてから探索に向かう形になる。


「わわわ!砂がボコボコ言ってる!」

「サンドワームです!牽制とバフを頼みます!」

「分かった!いくよ、チアー!」


美愛さんからのバフを受けると全身に力がみなぎるのを感じた。

なお、『チアー』によるバフ効果の持続時間も『透視』と同じく1分程度らしい。


(念のため今の時間も確認しておこう)


現在時刻は20時18分25秒だ。


「火弾!火弾!火弾!」


火弾が地面に当たると、サンドワームは砂の下から顔を出した。

全長5mはあるクソ長芋虫だ。


「バウンド!」


全速力で近付きスピードを乗せて斬りつける。

すると、サンドワームの腹に深い斬り傷が入った。


「おお!」


今までより明らかに剣の通りが良い。

サンドワームは痛みに呻いて身体を曲げた。

反撃がくる前に距離をあける。

離れ際、ついでにもう一撃入れておいた。


「GYAPIIIIIIIII!?」


サンドワームは図体がデカい。

倒し切るには何度も何度も斬りつけなくてはならないだろう。

しかし今回はバフがある分、かなり楽できそうな感触がある。


「バウンド!」


再び近付いて更に2度斬りつける。

横に一本線、そして縦に大きく腹を掻っ捌いて十字の傷を付けた。


「GYAPIIIIIIIIIIIIIIIIIII!!!」

「良い声で泣いてらぁ!」


4度の攻撃で敵が泣き声を上げた。

虫系の魔物が高い声で泣くのは追い詰められている証拠だ。

サンドワームは大きく身体を振り回し、決死の反撃をしかけてきた。

だが、既に私は攻撃範囲の外にいる。


「バウンド!!」


5度目の攻撃でサンドワームは塵になって消えた。

バフのおかげで40秒ほどで蹴りがついた。


「ナイスー!」

「美愛さんもバフありがとうございます。めちゃめちゃ感触良かったです」


なお、チアーの効果はやはり1分で切れた。




次は18層だが…スルーして行こうと思う。


〈R18層きたー!!!〉

〈これを待ってた!〉

〈サキュバスちゃんこいこい!〉


18層だけは何故か砂漠が夜になり、フロアボスは『サキュバス』と『インキュバス』の2種類になる。

女淫魔と男淫魔だ。

同性の淫魔なら問題ないが、異性の淫魔と遭遇すると大変なことになる(R18的な意味で)。

よってここはボス戦も無し。

さっさと19層に降りる。


〈おいボス戦やれ〉

〈こっちはもう全裸なんですよ!?〉

〈サキュバス戦で助かる命もあるんですよ!?〉

〈ブーブー!〉

〈豚が大量発生しとるわ〉

〈元から全員キモ豚やで〉


コメ欄のブーイングは無視。

Utubeはセンシティブ判定キツいんだって。




19層は昼の砂漠に戻る。

階層主は『ゴブリンジェネラル』だ。

推奨討伐レベルは22だが、厄介なことにこいつは群れを形成する。

必ず自分の周りに数体の子分ゴブリンをはべらせているので、1対1の勝負が難しい階層主だ。

階段で休憩取りつつ作戦会議をした。


「あたしが火弾でゴブリンの足止めしようか?」

「うーん、相手の数にもよりますね」


〈子分ゴブリンは2〜4体でまちまち〉

〈2体なら先に子分倒せばいいか〉

〈大体3体か4体らしいぞ〉

〈ミアちゃんは近接無理だから撃ち漏らすと大変なことになりかねないな〉

〈ぐへへ展開ありそう?〉

〈ない〉

〈サン君が高速で全部倒せば?〉

〈流石に無茶では?〉


『チアー』のバフ込みなら素早さ120の高速アタックで何とかなるだろうか?

相手もゴブリンだし行けそうか?


「とりあえず行ってみて、敵の数が多いようなら私1人で戦ってみます。美愛さんは近くに身を隠して、数が減ってから援護をお願いします」

「分かった!」


方針が決まったので探索を再開。

消耗が激しいフィールドなので、体力温存のため魔物を避けながら砂漠を歩く。

それから5分ほどで、先に20層行きの階段を見つけた。


「あれ、ゴブリンジェネラルいなかったね?」

「徘徊型なんで会わずに来ちゃいましたね」

「探しに行く?それともこのまま20層行く?」

「探しに行きましょう」


別に『ボスを倒さないと先に進んではいけない』みたいな縛りは無いが、一応ちゃんと倒して進もう。

ただでさえサクサク進行なのにボス戦すらスキップしたら炎上するかもしれないからな。


「でも、先に階段で休憩挟んでもいいですか?もうヘトヘトで…」


私の体力は21で、実は美愛さんよりも低い。

戦闘でも跳び回っていたので、砂漠のキツさに先に音を上げたのは私だった。

階段に入って日陰で休みながら、持参した水とパンを食べて体力回復を待った。




「いました」


休憩を終え、探索を再開してから数分でゴブリンジェネラルは見つかった。


「えー、子分ゴブリンが1、2、3、4、5体…ん?」


〈5体だな〉

〈おい子分5体いるぞ〉

〈誰だよ2〜4って言ったやつ!〉

〈いや本当に2〜4体って攻略サイトに書いてあったんだって!〉

〈俺も上限4体までって聞いてたぞ〉

〈もしかしてレア現象?〉

〈新発見情報かこれ〉

〈まーた未発見イベントですか…〉

〈君、未発見イベ探すの上手いねえ!〉


「ゴブリンが1匹増えるイベントなんか嬉しくも何ともないんですけど…」

「サンさん1人で大丈夫そう?」


〈子分ゴブリン5体って結構キツくね?〉

〈久々に悪い方の運24引いたか〉

〈言うほど久々か?〉

〈深層転移が1週間前だろ?全然久々じゃないぞ〉

〈やっぱ運24ってバッドステータスじゃね?〉


「…何にせよ数が多いので、当初の作戦通り美愛さんは待機。バフだけお願いします」

「分かった!チアー!」


バフによって全身に力が溢れてくる。

効果時間は1分。

できればこの1分で子分ゴブリンを始末し、美愛さんが参戦できる状態にしたい。


「行ってきます」

「危なくなったら助けに行くから!頑張って!」




ゴブリンの群れまではまだ距離がある。

『隠密』を使って慎重に近付く。

バフの効果時間は残り30秒程度。

回り込み、ゴブリンジェネラルの背後を取った状態から、GOだ。


「バウンド!」

「GOBU?」


最高速で一気に間合いを詰め、勢いを乗せたゴブリンダガーでゴブリンの首を刎ねる。


「GOBOBO…!?」


両断まではいけなかったが、まあ致命傷だろう。


「バウンド!」


次の『バウンド』でゴブリン共の前から姿を消す。

秒速66mダッシュだ。

目でも追えまい。


「バウンド!」


私の声にゴブリン達が振り返るが、その時には既に66メートル先へ移動している。


「GOBOBO…」


通り抜けざまに2体目のゴブリンを倒した。

子分ゴブリンは残り3体。

バフの効果時間は残り20秒フラット。


(いける!)


そう思った瞬間、私は足首を誰かに掴まれた。


「GOBOBOBOBO…!!」

「うげっ!?」


それは最初に倒したはずのゴブリンだった。

首筋の怪我は間違いなく致命傷。

だが、完全に死ぬまでにはラグがあったらしい。


「GOBUUUUUUU!!!」


足の止まった私に向かってゴブリンジェネラル共が迫り来る。


「離せ!この!」


『バウンド』からの高速ダッシュはジャンプが起点になる。

足首を掴まれていては使えない。

私は必死になって死にかけのゴブリンを蹴りまくった。


「火弾!」

「GOBU!?」

「美愛さん!」


そこで美愛さんがピンチと見て参戦してきた。


「火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!火弾!」


〈うおおおおおお!!?〉

〈何発撃った!?〉

〈分からん!〉

〈30連射くらいしたなw〉

〈画面が真っ赤で何も分かりません!〉


火弾連射にゴブリンジェネラル共は退がらざるを得なかった。


〈ゴブリン4んでね?〉

〈おお3匹持ってった!〉

〈偉い!〉

〈ミアちゃんが魔物倒してるとこ初めて見たかも〉

〈やるなあ〉


「ミアさん、ナイス!」

「あとボス1体だけ!」

「了解!」


足を掴んでいた子分ゴブリンもようやく力尽きて消えた。


「バウンド!!」

「GOBU!!?」


1対1になれば負ける気はしない。

ヒット&アウェイで削りまくり、動きが鈍ったところで首を斬って倒した。




「おお!レベル上がりました!」


ゴブリンジェネラルを倒すと、ついに私のレベルが上がった。


「あたしも上がったー!」


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:サン

レベル:26(+1)

体 力:21

攻撃力:25

防御力:10

素早さ:120【MAX】

魔 力:0/3

 運 :24

S P :10(+10)

スキル:バウンド、透視、衝撃緩和、隠密、一閃

ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:美愛

レベル:20(+1)

体 力:25

攻撃力:30

防御力:20

素早さ:25

魔 力:18/60

 運 :10

S P :7(+7)

スキル:火弾、連射、魔力回復、チアー

ーーーーーーーーーーーーー


「SP+10いいなー!」

「まあ、ここまでボス何体倒したか分かりませんし、多少はね?」


コメント欄からも意見を募りつつ、以下の通りにSPを割り振った。


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:サン

レベル:26

体 力:22(+1)

攻撃力:30(+5)

防御力:10

素早さ:120【MAX】

魔 力:4/7(+4)

 運 :24

S P :0

スキル:バウンド、透視、衝撃緩和、隠密、一閃

ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:美愛

レベル:20

体 力:25

攻撃力:35(+5)

防御力:20

素早さ:25

魔 力:20/62(+2)

 運 :10

S P :0

スキル:火弾、連射、魔力回復、チアー

ーーーーーーーーーーーーー




20層は砂漠のオアシス。

階層主はオアシス付近固定で現れる『サンドタートル』だ。

討伐推奨レベルは23。

頑丈さが売りの魔物だが、


「一閃!」


の1発で真っ二つになった。

美愛さんはレベルが21に上がり、SP+6を全て魔力に突っ込んだ。

そして私達は21層に降りていった。


「久々にきたね!」

「前は転移罠で酷い目に遭いましたね…」

「21層のボスモンスターって何だっけ?」

「オーガですね。討伐推奨レベル25」

「いけそう?」

「多分いけます」

「よーし、じゃあ行こう!」



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