それは、真夜中に私が散歩していた時の話でした。
鬼影スパナ
「ち、痴女だーーーー!」
深夜の散歩中、私のことを痴女呼ばわりする変態が現れたのです。
しかしそいつは、そいつこそ服を着ていませんでした。
「な、な、へ、変態! あなたの方が変態じゃないですか!?」
「は? 俺のどこが変態だってんだ。お前頭おかしいぞ……!?」
「だ、だって服を着てないじゃないですか!」
「いや、深夜には服を着ないのがマナーだろ!?」
変態はさも当然とそう言い切りました。
「そんなマナーあるわけないでしょう!?」
「いや、お前、うわエロっ、やめ、ちゃんと服を脱げよ! この変態が!」
変態に変態と言われ、私は怒りを感じました。
「素っ裸の方が変態に決まってるじゃないですか!」
「は? パンツ履いてるだろうがよ! そんな着衣してるやつに変態よばわりされたくねぇよ!」
「何を言ってるんですか! 誰か、誰か男の人呼んでー!」
と、そこに懐中電灯を持った二人組が現れました。
「警察です、どうされましたか」
警察。その言葉に安堵する私。
「ああ、すみません変態が現れて――」
しかし、直後に私は絶句しました。
「何……うわっ! ふ、服を着ている! 痴女だ!」
「本当だ、まぁこの季節増えるよなぁ……」
「な、なんであなたたちも服を着てないんですか!?」
その二人組は、警察の帽子と下着しか身につけていませんでした……
「なんでって。いや、あなたこそなんで着衣してるんですか」
「そうですよ。深夜の外出では服を着ないのが常識じゃないですか。ねぇ」
「そーだそーだ!」
3人が、ほぼ素っ裸という格好で同意しています。
どういうことか、と私ははっと気づきました。
……私は、いつの間に服を着ている方が変態な異世界に迷い込んだのか。
郷に入っては郷に従え。私は、着ているものを一枚一枚脱いでいきます。
肌に冷たい夜風が当たったところで、男達は満足げに頷きました。
「お、お騒がせしました」
「……ふぅ、最初に服を着ているときはとんだ変態だと思ったが」
「まったく、人騒がせな。お姉さん、酔うのも程々にね」
「なぁに、まぁその、美女の着衣姿とか眼福だったしな、うん」
服を抱えて頭を下げる私。
事務的に、気まずそうに、照れくさそうにそう言って、男達は去っていきました。
そしてその後。
「あー、お姉さん? ちょっといいかな。なんで服着てないの?」
「えっ、なんで服、着てるんですか……?」
本物の警察の方に、3人組の変質者の話を聞いたのでした……
それは、真夜中に私が散歩していた時の話でした。 鬼影スパナ @supana77
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