第7話


〜〜イルエマ視点〜〜


 ギルドマスターであるナナハさんの昼食はとても美味しいです。

 特にニンニクソースのビフテキは最高。

 ニンニクの旨みがガツンと舌に乗っかります。

 同時にパンを運ぶ手が止まりません。

 モグモグ。

 お肉とパン! もう最高!


「ごちそうさまでした……」


 うう、満腹。もうこれ以上入りません。幸せすぎる……。


「どうだった?」


「ええ、とても美味しかったです。ナナハさんって料理が美味いんですね!」


「あはは。ありがと。今、お茶を入れるわね」


「あ、おかまいなく! そろそろおいとましようかと思います」


「まだ、いいじゃないゆっくりしていきなさいよ」


「いえいえ。みなさんの仕事の邪魔をしてはいけませんから」


 戦士のバーバダさんが私を抱きしめます。


「イルエマ。ゆっくりする。俺。嬉しい」


「んもぉ〜〜」


「ははは。バーバダに随分好かれちゃったわね」


「イルエマ。小さい。可愛い♡」


 こんなに好かれてしまうと、なんだか、妹のチョコとダブりますね。


 ナナハさんは美味しいお茶を入れてくれました。

 甘いクッキーを用意してくれるのは嬉しすぎる。

 完全に別腹です。いくらでも入りそう。


「ねぇ。……うちのギルドに入らない?」


「え? 急ですね」


「あなたがいてくれると随分と助かるのよ。それにメンバーがここまで懐く人なんて初めてだしね」

 

 懐かれてるのかな?


「イルエマと。一緒。俺。嬉しい」


 まぁ、この人は特別な気がしますが。


「し、しかし。私みたいな地味な女が仲間になったらみなさんの迷惑では?」


「そんなことないわよ! 大助かりだって! ねぇエジィナもそう思うでしょ?」


「……ま、まぁ、そうかもね。別に僕はなんとも思わないけどね」


 ほらぁ。

 あんまり乗り気じゃなさそうです。


「でもさ。バーバダはあなたにぞっこんじゃない」


「イルエマ♡」


 彼女だけのような気が……。


「レギはどう思う?」


あたしはどっちでもって感じだね。嬢ちゃんは博識だけどさ。そういうのは個人で決めるもんよね」


 うーーん。

 私を仲間にしたいのがナナハさんとバーバダさん。

 微妙な感じがエジィナちゃんとレギさんですか。

 2対2って感じですね。


「決まりじゃない!」


「いやいや。みなさん、本当によろしいんですか?」


 エジィナちゃんとレギさんは目を逸らした。


「ほらぁ。ナナハさん。やっぱり微妙ですよ」


「あはは。この子らは素直じゃないだけよ。もう反応でバレバレなんだから」


「そうなんですか?」


「そうそう。長い付き合いだもん。私にはわかるのよ。あなたは歓迎されているわ!」


 うーーん。そういうのなら……。

 まぁ、居心地はいいですし……。


「ね! お願い! 報酬は弾むからさ。ダメ?」


 ギルドマスターのナナハさんは聖女ギルドのキアーラさんとは全くタイプが違いますね。

 マスターなのにまったく威張らないし。強制もしません。

 こんな方なら相談も気軽にできそうですね。

 冒険者ギルドではたくさんのパーティーからお誘いを受けましたが、断りましょうか。


「わかりました。こんな私ですが、みなさんのために精一杯やらせていただきます」


 そう言った途端。

 みんなが立ち上がった。


「「「 やったーー! 」」」


 え?


「イルエマくん。魔力耐性理論についてどう思う?」

「嬢ちゃんの歓迎会をしなくちゃね♪ 今日はみんなで騒ぎましょうよ」


 なんでしょう?

 さきほどの態度が嘘のようです。


「ふふふ。こういう子たちなのよ。ちょっと癖があるんだけどね。根はいい子だからさ。慣れてくれると助かるわ」


「ははは……」


むぎゅぅうう!


「イルエマ。仲間。嬉しい♡」


「バーバダさん。苦しいです」


 あと、おっぱいがすごいですって!


「じゃあ、イルエマの歓迎会は夜にしましょうか!」


「あの……。実は妹と2人暮らしでして、あんまり遅くなるのは困るんです」


「へぇ。じゃあ妹さんも呼べばいいじゃない」


「い、いいんですか?」


「勿論よ。ねぇ、みんな?」


 一同はコクンと頷く。


 ええーー。

 なんかすごく良いギルドに入ってしまったのかも知れません。


「じゃあ、仕事をちゃちゃっと熟して、夕方は歓迎会よ!」


「「「 おーー! 」」」


 仕事って何をするのでしょうか?


 ナナハさんは小瓶をたくさん用意します。

 そこには彼女と初めて会った時に買った魔法草が入る。

 そして聖水が注がれました。

 もうこれしかありませんね。


「ポーションを作るのですね」


「そういうこと! エジィナ。魔力計算式お願いね」


「うむ。任せておけ」


「レギ。準備はいい?」


「いつでもいいわ」


 エジィナちゃんはコンパスを片手にソロ盤を弾きます。


「出たぞ。風の精霊に120。大地の精霊に340。天の精霊に260だ」


 ほぉ。 

 的確ですね。


 レギさんはエジィナちゃんの指示通りに魔力を解放します。


魔法薬生成ポーションクリエイト!」


 小瓶が光に包まれます。

 出来上がったのはA級ポーションです。


「イルエナのおかげで高級ポーションの誕生だわ。じゃあバーバダ、馬車に運んで」


「わかった」


 ポーションが入った木箱は重いですからね。

 力仕事は彼女が適任です。

 うーーむ。

 みなさんのチームワークに無駄がない。


「んじゃ、王城に売ってくるから待っててね」


「では、私は妹を連れてきます」


 と、いうわけでチョコを連れてくることにします。

 道中に聖女ギルドを辞めたことを伝えると驚いていました。

 それでも姉想いのいい子ですからね。理解は早かったです。


「チョコ・ジミィーナです。うちの姉がいつもお世話になっております」


 ふふふ。

 チョコが畏まっているのはなんだか新鮮で可愛いですね。


「チョコ。と。イルミナ。そっくり。どっちも。可愛い」


むぎゅううう。


「は? ちょ、やめ! 姉さまぁああ!」


 ははは。

 チョコ。観念しておっぱいに揉まれなさい。


 そうこうしているうちにナナハさんが帰ってきました。


「100万コズンになったわ! 大儲けよ♪」


 ふふふ。

 上機嫌ですね。


「はい。これはイルエマの取り分ね」


 え? 金貨10枚!?


「10万コズンも!? 貰いすぎです!!」


「だってぇ。 素材進化マテリアルハイが無ければ品質は最低だったんだもん。当然でしょ?」


「し、しかしぃ。みなさんの報酬の分配もあるわけですしぃ」


「ははは。大丈夫大丈夫。ギルドは半分の50万コズンは貰ったからね。残りの50万コズンをみんなで分けただけだから」


「はぁーー」


 良心的ぃ〜〜。

 聖女ギルドなら、貰えて千コズン程度でしたね。

 この調子なら貯金ができるかもしれません。


「んじゃあ、食材はたっぷりと買ってきたし、歓迎会の準備に取りかかりましょうか!」


「あ! 私、手伝います!」

「チョコも!」

「ナナハ。酒はたんまり買い込んだんだろうね?」

「はいはい。抜かりはないわよ」

「レギくんは酒が好きだなぁ。飲み過ぎは男にモテないぞ」

「レギ。いつも。酒臭い」

「臭くないわよ!」

「「「 ははは 」」」


 こうして、私は萬ギルド【狸の 腹鼓はらづつみ】に入ったのでした。

 みなさん、とてもいい人で、私の歓迎会が楽しかったのは言うまでもありません。



 ────


 次回はキアーラ回です。

 一体、どんな仕事をするのでしょうか?

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