第27話 青白い指

 近くに引越が続く家がある。どんな人が来ても1か月もたないで、直ぐにあわてて引越していく。


 大きな国道に面した駐車場の隣で、場所的には好条件といえるのに・・・・・


 しかしここ数年の間に、何世帯が引越してきて出ていったか、もう数えきれないほどだ。


 『出る』という噂が、近隣に確信的に広がった。夜中部屋に、見知らぬ女性が立っている。二階の窓ガラスに映る佇む青白い女性の姿。


 様々な噂が乱れ飛ぶ。もちろん噂でしかないのだが・・・・・


 朝の散歩道にその家の横を通る。散歩中の犬が怯える。尻尾を股に挟み尻込む。飼い主がひっぱっても、絶対に動かない。


 まるで見えない何かに恐怖してるように・・・・・


 仕事で帰宅が遅くなり、0時を回った夜。例の家の前を通って帰る。まだ蒸し暑い夜、生暖かい風が頬を撫でた。


 先月いつものように引越しがあり、今は無人の家のはずである。施錠された玄関のドアの貼り紙が揺れ、ドアが少し開いた気がした。


 蒼白い細い指先が、ドアの隙間から出ていた。


 誰もいない家の中から・・・・・

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