第26話-逢魔が刻

太陽が沈み日が暮れる。


夕暮れどき、黄昏どき、不安が世界を満たしていく。


空気が冷え込む。全身の鳥肌が、ぞわっと粟立つ。背中がなぜか寒い。心臓をぐっと掴まれる。


薄暗い空間が震えて揺れる。闇に潜む妖しき魔物が蠢き始める。


闇が夜の全てを、支配するまでのわずかな時。魔物と出逢う時刻。普段見えないものが見える刻。


人はこう呼ぶ逢魔が刻と。


いまはもういないはずの、懐かしいひとにそっくりな後姿が、夕暮れ刻にふっと浮かんで背中で誘う。


黄昏に不確かに揺れる見えない何かがおいでと手招く。


ひとが生きる昼の世界と、魔物が徘徊する夜の世界を怪しくつなぐ不確かで曖昧な刻。


人外のものが蠢き出し、妖(あやかし)の鼓動が心を震わす。怪(もののけ)の息遣いが背中を凍らす。


今日も逢魔が刻が夜の扉を開く。

妖しきものたちの夜が始まる。

心を凍らす何かが静かに訪れる。


いま恐怖と絶叫を従えて・・・・・

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