第19話

【リベンジ】収益化記念!【デュラハン料理】


"いや、枠名だけで面白いの草"

"デュラハンくん「!?」"

"深層のフロアボスだよね。レイナちゃん本気なのかな?"

"レイナちゃんならやりかねない・・・"


"前の配信では喰えなかったって言ってたね"

"マジで倒したことあったの!?"

"謎。さすがに冗談だと思いたいけど・・・・・・"




※※※


 ついにその日がやってきた。

 私、彩音レイナ――ついに収益化の申請が通ったのである!


「今日も食卓から、癒やしをお届け。食材のみなさん、こんにちは~!」


"収益化おめでとう!"

"チャンネルの規模にしては遅すぎた"

"成長速度早すぎてスパム疑われてたのは草なのよ"


「ありがとうございます! ありがとうございます!」


 収益化は、私の目標の1つだった。

 素直に喜び、私はスマホに向かってぺこぺこと頭を下げる。



"配信内容おかしくない!?"

"デュラハンってどういうこと!?"

"もう何から突っ込めば・・・w"


「ふっふっふ、今日はにっくい鎧野郎にリベンジしようと思ってます!」


 とっておきの企画――それは、以前は失敗したデュラハンを使ったダンジョン料理を作ることだ。



 私は今、深層の入り口に立っている。

 いくつかの"秘策"も千佳に借りてきたし、準備は万全。

 デュラハンを狩って喰らってみせる、と並々ならぬ決意を固めていた。


"背景、ほんとに深層っぽいんだが……"

"正気か!?"

"¥300: レイナちゃん、深層は本当にヤバいと思う。考え直して!"


「ほわっ!?!? スーパーチャット、ありがとうございます!!」


"内容読んで~~!?"


 スパチャだ!?

 まだ、始まったばっかりなのに!


「とっても嬉しいです、大切に使いますね!」


"目をまんまるにするレイナちゃん可愛いw"

"初スパチャの内容がガチアドバイスなのはレイナちゃん配信だけ!"

"¥10000: はい、今日の夕飯代"

"¥20000: はい、今日のおやつ代"

"¥50000: レイナちゃん、可愛いねえ。おじさんが、お小遣いあげようか"

"↑↑通報しました"


「へ? ひぇぇぇええ…………!?」


 0の個数が、1、2、3、4。

 ぽかーんと口を開いたまま、私はすっとんきょうな悲鳴をあげそうになる。

 否、普通に悲鳴を上げてしまった。



「しょ、食材のみなさん!? 冷静になってください! それだけの大金があったら、焼き肉に10回は行けますよ!?」


"テンパるレイナちゃん可愛い"

"お、恒例行事始まる?"

"¥10000: はい、焼き肉代"

"¥7777: この日を待ってたんだ!"

"¥3000: いつも元気な配信、楽しみにしてます! これからも応援してます!"

"¥50000: 今日から1ヶ月もやし生活です"


「ちゃんと食べて!?」


(あわわわわ)

(これ、完全にヤバイ流れ~!?)


 赤スパ祭りと呼ばれる現象。

 見てる分には楽しそうだったけど、渦中になると胃がキリキリと痛いと学ぶ私であった。

 リスナーさんたち、悪ノリし過ぎなのである。



「みなさんお金は大事ですよ!? そのお金で焼き肉食べてきて下さい!?」


"¥8000: 焼肉会場はここですか?"

"¥5000: 食卓はここですよね?"

"¥20000: わいが食材や!!!"


 駄目だ、収益化のテンションでリスナーさんどうにかしてしまってる。



(う~ん、この流れを止めるため)

(こうなったら、背に腹は代えられない!)


「この、喰えもしないゴミムシどもが! スパチャ、しょっぱいよ!」


 こんなことを言う駄目駄目な配信者に、まさかスパチャ投げるリスナーなんて……、


"¥20000: ( ゚∀゚)/あっはっはっはっは!"

"¥50000: ぶひぃぃぃ!"

"¥30000: ありがとうございます、ありがとうございます!"

"¥50000: すみませんでした!!!! もっと投げます!!!!"

"¥50000:《望月雪乃》 最高、最高です・・・!"


「いやぁぁぁぁぁ!? 違うんです。待って。待って~!?」

 

 加速するコメ欄。

 ドツボに嵌るは私。

 それと、ゆきのんまで何してるの!?


 カモーン、千佳。

 颯爽と降臨して、この流れを止めて――


"¥50000:《鈴木千佳》 レイナ、収益化おめでとう!"

"¥50000:《鈴木千佳》 はい、おやつ代"

"マネちゃんw ナイスパw"

"餌付け成功"

"この子、おやつに何食べるつもりなんですかね……"


「千佳まで~!?」


 私は、そう素っ頓狂な悲鳴をあげて――



"いつも良いもの見せてもらってるお礼だからね"

"今までタダだったのがおかしい"

"100万出しても悔いはない"

"素直に受け取って欲しいな"


 ふと、そんな書き込みに気がつく。



(そうか、私にできることは――)


 今日の配信を成功させること。

 見ていて良かったと思ってもらえるように、配信を全力でやること。



「みなさんの気持ちは分かりました! 私、何がなんでもデュラハンを美味しく食べてみせますね!!」


"違いますが!?"

"いや草"

"コメントとは正反対の方に走り出すバーサーカー"

"平・常・運・転w"

"レイナちゃんは可愛いなあ(諦観)"



「私、無事に帰ったら、お腹いっぱい焼肉食べるんだ!」


"頼むから死亡フラグ立てないでw"

"願いがすごいささやか!"

"本当に大丈夫なの……?"


 心配するコメントもある。

 それでも私は、食材のみなさんの期待に応えようとかつてないほどに燃えていた。



「バッチリです、任せて下さい!」


 力強くそう宣言。

 私は、深層に足を踏み入れるのだった。

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