第5話

 ◇ピエール視点 屋敷にて






 「まったく、兄貴ん家の近くにきたから、挨拶でもと思って寄ったら、こんな待たせやがって……」




 屋敷で待たされるピエールはイラついていた。




 前回の世界ではこの屋敷に火を放ち、兄とモーリスを殺した立派な長いヒゲを蓄えた暴君。












 ピエールは敵国に武器の密輸を行っている。




 隣国に根回しし、この国を乗っ取ろうとしているのだ。








 もちろん、バレれば大犯罪だ。








 この時までは仲のいい兄弟と演じなければならない。












 「なんかガキどもがゾロゾロいたが……なんで俺様を待たせるんだ? ったく!」




 ピエールは兄の書斎へ向かう。












 普通、執事は主の書斎へなど簡単には通さない。




 しかし、ピエールは主の弟、世間的は仲の良い兄弟だ。




 執事もさほど心配せずにピエールを通す。












 「けっ! 豪華な屋敷だな……まあこれもいずれは俺様のものよ……」












 ピエールは書斎の扉に手をかける。








 「……ん?」




 中から話し声が聞こえる。








 「武器の……密輸……?」




 ピエールは慌てて扉に耳をくっつける。








 「どういうことだ!? バレているのか!?」








 汗が吹き出すピエール。計画は完璧だったはず。




 最近、兄が資金の流れを怪しんでいるのは知っている。




 しかし、証拠はない。なぜバレた?








 「……タイムリープ? だと……?」








 書斎では信じられない言葉が飛び交う。




 息子のフレデリックがモーリスを刺し殺す、屋敷に火をつける……どれも計画していることだ。




 ピエールは確信する。どうやら本当にマリーという女がタイムリープをしている、と。












 『警備を強化して、念のためお嬢さんたちの護衛もつけさせよう』




 「くそっ……」




 書斎から漏れる兄の言葉を聞き焦るピエール。












 『ちょっとお手洗い借りますね』




 「!!」








 ピエールは扉から離れ身をひそめる。




 マリーが書斎から出てきた。








 トイレに向かうマリー。








 「……いま消すしかない……!!」








 ピエールはマリー後をつける。












 ◇

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