第6話 電話

慌てて携帯を取り出して名前を見て固まってしまった。相手の名前が郁さんだった。とりあえずスタッフを背に部屋の隅に移動した。電話に出ようと画面を触る指が少し震えていた

「もしもし」

「もしもし、おつかれさまです。渡辺です。今日、収録ですけどブッコローさん、今どこに居るんですか?」

「え・・、本店だけど」

「え?本店?」

そう言って郁さんは驚いていた。相手の声は確かに郁さんだ。ブッコローは状況がわからず混乱している頭を冷静になろうとした

「何階にいますか?」

「6階のスタジオだけど」

「え?…私、今スタジオに居るんですけど」

電話の向こうには心配そうに声をかけるpの声が聞こえた。ますます訳が分からなくなったその時、ふと自分の言葉を思い出した


「こんなことして本店のお化けが怒って出てきませんか?」


何でこんな時にこんなことを思い出したんだろう?ブッコローは“落ち着け、冷静になれ“と自分に言い聞かせるがだんだん自分の言葉の方が辻褄が合うように感じた。背中に嫌な汗と共に沢山の視線を感じた。

「あ、あの、後でかけ直しますんで・・・すいません」

そう言って携帯を切った後、一呼吸置いてから意を決して振り向いた。するとスタッフ全員がずらっと並んでこちらを見ていた。自然に振る舞おうと思っていたがその光景に怯んでしまった

「あ・・・・えー・・なんだ、みんな来てたんだ」

ぎこちなく声をかけたが、誰も反応していない。聞いているかどうかわからないほど無表情で異様な光景が広がっていた。あまりに不気味だった為ブッコローも黙ってしまった。

すると郁さんの顔がひび割れた。郁さんを筆頭にスタッフの顔が次々にひび割れが起こった。ひびが大きくなり、まるで卵から出てくる雛のように中からブッコローのぬいぐるみが現れた。信じられない光景にブッコローは体が固まって動けなくなってしまった。すると中から出て来たぬいぐるみは顔を食い破りながら姿を現した。1匹のぬいぐるみがブッコローに襲いかかってきた。後を追うように次々とぬいぐるみの大群がいっせいに襲い出した

その時、後ろから黒子の手がにゅっと現れ固まって動けないブッコローを抱えてダッシュした。逃げる黒子とスズメバチのように追いかけるぬいぐるみの軍団。どこをどう走り回ったのかわからないくらい本店中グルグルと逃げ回る黒子。逃げた末、トイレのような小さな部屋に駆け込んだ。ブッコローはどこに入ったのかしばらくわからなかったが部屋が動いたとたん自分がエレベーターの中に入っているとわかった。

ガコンという音と共に下の階降りるエレベーター。“助かった“と安心し、ようやく頭が冷静になれた。考えても考えても状況が整理できない。自分ははめられたのか?と思った時にまたしても違和感を感じた。

エレベーターが異様に長い。どんどん下に降りていき止まる様子がない。“え?“と思い慌ててボタンを押すがどのボタンも光らず反応しない。ブッコローは奈落へ急降下するような感覚に襲われ声を上げた

「うわ!うわ!うわぁぁぁぁ!!」

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