毒には成敗を。
@korokmt
1. 幸せの中に潜む違和感
物心がついた5歳。母は正座して泣いていたのを今でも鮮明に覚えている。
母が買ってくれていたであろう沢山のおもちゃ、洋服はなぜか置いたままで家を出た母はただ一言、おばぁちゃんは死んだと言った。
何も分からない5歳の私でも、そんなのは嘘だと分かっていた。
なぜならついさっきまで、目の前に祖母はいたからだ。
だけど可哀想だから。母は泣いていたから。
子供ながらに聞き返すこともなく私もただ一言、分かったと頷いた。
母が向かった先は、古く汚いアパートだったが母の顔は晴ればやかとしていて、とても幸せそうだった。そんな母の顔が私はとっても嬉しかったのだ。
大きな駐車場で走り回る私を見る母の目は、とても優しく温かかった。そして母に抱きついた瞬間、ある男性が近づいてきた。
「こんにちは」
「・・・こんにちは」
おそるおそる挨拶をすると、母はにこりと笑った。
今日から一緒に暮らすのよ、と一言添えて。
一緒に暮らすという、島添こうた という男性は、私の頭を撫でた。
「お名前は?」
「・・・シズク」
「かわいい名前だね。誰がつけてくれたの?」
「・・・ママ」
この人の目に似た人を私は知っている。
この人はきっとママを泣かせるんだと確信した。
毒には成敗を。 @korokmt
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。毒には成敗を。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます