第43話
「クレア様、作戦はどうでしたか?」
「宰相、上手く行ったわ。みな無事に国境を越えた。明後日には到着する。城への襲撃はなかったかしら?」
「今回は襲撃一つ無く落ち着いております」
「では会議を一旦解散して明後日の団員達を迎える準備をしてほしい。情報収集は怠らずに。」
「畏まりました」
私は著しく魔力を消費したので先に自室に戻り、休む事になった。もちろん警備はいつも以上に厳戒態勢を敷いているようだ。
「クレア様、お疲れでしょう。私が抱える事をお許し下さい」
どうやらアーロンには私の体力の限界がきている事がバレていたようだ。すぐに抱っこされて自室へと運ばれていく。その間にうつらうつらと睡魔が襲ってきてベッドに着くころには夢の中に入っていたみたい。
翌日は熱を出し、ロダから静養を言いつけられてしまったわ。昨日はかなりの魔力を消費したからまだ全回復は出来ていない。日頃の疲れと緊張の糸が切れたから熱が出たのね。
「クレア陛下、お加減いかがでしょうか」
マリルが心配そうに声を掛けてきた。
「マリル、大丈夫よ。大分回復してきたわ」
「あまり無理しないでくださいね。そうだ、陛下がお休みになっている間にベイリー公爵子息様から口当たりの良い物を、とフルーツが届いております。召し上がりますか?」
私の体調を心配してくれて急いで買ってきてくれたのかしら?
「そうね、皮を剥いてくれる?冷えている物を食べたいわ。少しだけ果物を冷やせるかしら?」
「畏まりました」
マリルはそう言うと、丁寧に手から冷気をだしながら皮を剥いていく。
「マリル上手ね。練習したのかしら?」
「はい。クレア様のために一生懸命練習しました。こうして役立つととても嬉しいです」
笑顔のマリルに微笑み返す。令嬢だったマリルはナイフなんて持ったこともなかっただろうに、と少し感傷に浸ってしまったのは仕方がない。もちろん解毒魔法も使った後、毒見をして私に差し出してくれる。
「お、美味しいわっ」
「お口に召して良かったです。ベイリー公爵子息様にお伝えしておきます」
それから侍女達を下がらせてゆっくりと部屋で過ごす。影からの報告も馬車は襲撃される事無く、のんびりと城へ向かっている事や、反逆者は一掃されたようで国内は落ち着いてきているようだ。
私の魔力も満タンになり、熱も下がった翌日の午後。
零師団と魔導士団は王都の人達に拍手で迎え入れられて、城へと戻ってきた。謁見の間で零師団と魔導士団を褒める事を忘れてはいない。彼らにゆっくりと休むように伝えると、ベイカーは変わり果てた人形を侍女へと渡し、各自持ち場へと帰っていった。
「ロダ、ようやく終わったわ」
「お疲れ様です。陛下。後は国をもり立てていくだけですね。そのためには早く王配を決めて頂かなければなりません。皆が今か今かと待っているのです」
「グッ。そ、そうねっ」
側近たちもロダの言葉にうんうんと頷いている。
「国内は落ち着いてきましたし、当分隣国も手を出してくる事はないですので執務はイクセル達に任せればよろしいかと。来週からは三回目のお茶会の予定を入れております」
宰相もお茶を飲みながら私に耳の痛い事を言っているわ。助けてと視線を彷徨わせるけれど、誰もが宰相の味方のようだ。シクシク。
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