第34話

大事な箇所が1話抜けておりました。

すみません。゚(゚´ω`゚)゚。

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 奴隷取引日までの間、本当に不安で一杯だった。襲撃の恐怖、誰が裏切るのかという不安。私を害そうとする者が動けなくなる結界があるとしても完全ではない。情報が洩れてしまうのではないか、もたらされた情報は全て合っているのか。全てが不安になってくる。


魔法で連絡のやりとりをしているフェルトが現場の状況を細かく報告してくれる。どうやら事前に掴んだ情報である五カ所は合っていたようだ。そして取引人数も。一緒に報告を聞いている騎士団長達も固唾をのんで見守っている。


―コンコンコンコン―


 けたたましく叩かれた扉から一人の騎士が入ってくる。


「王都の平民街で暴動が起きました!暴動は広がりながら中央広場へと向かっている様子。ご指示を!」


どうやら事前に得ていた情報とは少し場所が違ったが、暴動が起きた様子。


「第五騎士団は何をしている?」


第五騎士団の団長が緊張した面持ちで答える。


「現在団員全て対処に当たっているのですが、扇動者と共にスラムの者達が暴徒化しはじめており、手が足りておりません」


第五騎士団の人数は約三百人。それで手が足りないとはどういう事かしら?


――裏切者がいるのだろう。ここは非情にならねばならん。武力で制圧するべきだな。  

 民の信頼低下は免れません。


――王自ら動くのは得策ではない。王配がいれば良かったのだがな。

 否定出来ませんね。ではあの魔法を使用するしかないですね。


――あぁ。大げさに、盛大にやれば効果はあるだろう。


ベイカーに改造してもらっていて良かったわ。


「マヤ、急いでグレイシア人形を持ってきて頂戴」


 私は指示を出すと、マヤは頷く。すると部屋で待機していたマリルが息を切らしながら持ってきた。私はグレイシア人形に魔力を込めて報告に来ていた団員に人形を持たせる。


「これを扇動者の近くまで持っていきなさい」


「承知致しました!」


団員は大事そうに人形を抱えて走って部屋を出て行った。


「第五騎士団団長、団員三百と聞いていましたが、何名現場に当たっているのかしら?」


「三百名全員です」


「それで暴動が治まらないのは何故かしら?無能なのかしら?それとも扇動者の中に団員が大勢いるのかしら?」


「……も、申し訳ありません。至急確認させます」


 他の団長達も同じように考えていたのだろう。各団は持ち場を守る事に全力を尽くしているためホイホイと他の団の応援に行けるほどの余裕は今はない。人形で抑えられなければ零を動かすしかないだろう。


 人形が扇動者に向かっている間、どうやらどこの場所も売買契約にサインをしたようだ。


「クレア陛下、ご指示を!」


宰相の言葉に私が頷き応える。


「取引に関わる全ての者を捕らえよ!」


 その言葉に団長やフェルトが部下達に指示を出した。取引の方は今のところ問題ないようだ。 


<パチッ>


――クレア。

 グラン様、来ましたね。


「第一騎士団、食堂へ向かえ!襲撃者だ」


その言葉に団長達は動きを止めて視線を向けた。


「モラン、結界を破る輩が現れた。すぐに対処を。チュイン、頼む」


「ようやく出番ですね。命だけは残しておきますが、後はどうなるか……」


「構わない。あぁ、証言だけはさせられるように」


 チュインは零師団に指示を出した。待っていましたとばかりに零師団の詰所から魔力が膨れ上がるのが分かった。食堂を吹き飛ばされそうだわ。


「アーロン、私の側に。これから魔法を使う。その間私の防御が弱くなるからね」


団長達の目の前でそう話す。


「中央広場に到着した。これより魔法を展開する」


 私はそう言うと、魔力を放出し人形に向けて魔力を送り込む。遠隔操作だ。


「静まれ!皆のもの!落ち着くのだ。私はクレア・ラグノア。王都に住む我が民よ、扇動者に騙されるな。扇動者の目的はこの地の安定を壊し、平民を奴隷にするための作戦だ。これより暴動の扇動者を捕らえる」


 グレイシア人形は中央広場の前でふわりと浮かび拡声器を使ったような大きな音で知らせる。突然の大きな声に暴動化していた民の手が止まる。そして浮かんでいるグレイシア人形に視線を向けた。


グレイシア人形の手から蔦のような物がシュルシュルと伸びていき扇動者五名を巻きつけ、人形の前に持ち上げる。そしてリーダーと思われる人物に自白魔法を掛けた。その異様な様子に集まっている人々は口を閉じる。


「何故、暴動を起こした?」


「……っ!暴動を起こし平民の意識を暴動に向けるためだ」


「それは何故だ?」


「その隙にこの国の民を攫うためだ」


「攫ってどうする?」


「奴隷にするためだ」


奴隷という言葉を聞いて人々は騒めき始めた。


「民よ、静まれ!」


私の声でまた広場は静まり返る。


「誰が指示をしている?」


「マルタナヤール国ヤワン王子殿下だ」


 扇動者の男が苦し気な顔で答える。その言葉を聞いた人々は騒ぎ出す。どういう事だ?我々は騙されたのではないかと。


これ以上は民に聞かせる物ではないと判断した。


「皆のもの、静粛に!扇動者の言葉を聞いただろう?すぐにこの場を去り、自分の家族の安否を確認せよ!安否不明者が出た場合、不審な者がいた場合はすぐに衛兵へ報告せよ。敵は自分達を奴隷にしようとしている。緊急事態だ」


 私の声に応えるように人々は蜘蛛の子を散らすようにこの場を去っていく。中には不安で泣き出す者も出ているようだ。拘束している扇動者達を騎士団に渡してグレイシア人形の遠隔操作を止める。 


厄介な事になったわ。


 隣国の貴族が関わっていると思っていたけれど、第四王子が犯罪に手を染めていたのね。ただ、証拠はない。この件は扇動者から聞き出してからになるだろう。

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