KAC第4回『深夜の散歩で起きた出来事』
綾野祐介
第4話 深夜の散歩で起きた出来事
夕方からバイトに行った帰りはもう1時を回っていた。バイトを終えて僕はいつもの場所で佇んでいた。
「あっ。」
今日は見つけた。昨日は来なかったから今日はどうかなと思っていた。ラッキーだ。
いつものように後を付ける。今日は何処に行くのだろう。彼氏の部屋だろうか。その時は朝まで部屋からは出てこない。
確か月曜日はお泊りコースだった。火曜日が休みではない筈なので相手の都合なのかも知れない。
僕は彼女の後を付けることを日課にしていた。声を掛けたりはしない。勿論危害なんて加えたりしない。ただ付いて行くだけだ。だからストーカーなんかじゃない。
最初に彼女を深夜の公園で見た時、とても深刻な顔をしていた。僕の深夜の散歩はただの生存確認だったのかも知れない。最初に見た時以来、深刻な彼女は見ていなかったので少し安心していた。
今日は少し速足で歩いている彼女を見て僕は不安な気持ちになった。何か思いつめているかのようだ。部屋は判っていたがオートロックなので付いては入れなかった。
気になって様子を伺っていると彼氏が茶色いぬいぐるみを抱えて降りて来た。一旦出て、また直ぐに戻った。様子が明らかに変だ。
直ぐに後を追いかけた。男の部屋に着くとドアを恐る恐る開けてみた。鍵は掛かっていなかった。
「大丈夫ですか?」
「ええ。でもあなたは誰ですか?」
僕はそれに応えず部屋を見渡した。彼女は見当たらない。良かった、何事もなかったのだ。
「いや様子が変だったので気になって。何もなければよかったです。」
僕はそれだけ言うと慌てて部屋を出た。
部屋は見渡せるしカーテンも開いていた。風呂やトイレにも人の気配は無かった。でも彼女の靴が無かったか?
何かがおかしい。彼氏は何故ぬいぐるみを持っていた?そう言えばもう一体部屋に同じものがあったよな。ぬいぐるみ好きには見えなかったが。
結局僕はその日以来彼女を見ていない。
KAC第4回『深夜の散歩で起きた出来事』 綾野祐介 @yusuke_ayano
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます