8、好きを求める優香との歪な男女の関係

「ねぇ、総一君?」

「えっ!?」

「大丈夫?なんか、ズボンのサイズが急に足りなくなったみたいに苦しそうだけど……」

「あっ!?こ、これは……!?」


上半身裸の優香が赤くなりながら、ズボンのファスナーらへんをじっと見てくる。

「膨らんでる……」と初々しいことをぼそっと呟かれ、息を飲む。

彼女はあんまりそういう知識がないのかな?なんて考えるとビッチのお姉さんとの生活は大変なのかもしれない。


「く、苦しくないんですか?(わたしのためだけに立ってくれてる……。ふふふ、これをわたしだけのモノにしたい)」

「ちょ、ちょっと苦しいかな……」

「なら早く脱いじゃいましょうよ」

「ううう……。結構積極的だね……」

「クラスの憧れの人である総一君の前なんだよ?こんなに好き好きアピールしているのに信じてない?」

「そ、そういうこと言うのは卑怯だって……」


そもそもなんで俺なんかに優香が好意があるのかわからない。

それこそ、つい1時間前までは桐原さんと名字で呼ぶくらいには親しくない相手だったのだから……。

憧れの人が俺って……。

憧れられる側の優香から言われるとくすぐったい。


「じゃあわたしがやってあげるね」

「え?」

「ベルトを開けますねー」

「うわっ!?」


実況しながら優香がベルトを緩めていく。

そこからじっくりギギギギ……とゆっくりとファスナーを下げていく。

アレの形に沿ってファスナーが前に出たり、後ろに戻ったりしながら制服のズボンが脱がされる。

俺の情けないトランクス姿が優香の前で露出する。

「足を上げてください」と促され、ズボンを端に置かれる。

そのままトランクスもゆっくり脱がされた。


「ふふっ。えいっ、です!」

「つ……!?」


ちょんと先端に指を置く。

いきなり触られるとは思わなく、不意打ちをされて変な声が出る。


「格好良いと可愛いが両立してます」

「やめて……」

「切ない顔してますね。わたしも今から同じ格好になりますから」


彼女の着替えがそもそも遅い人なのだろう。

スカートとパンツを下ろすのも、男と違って時間がかかるようだ。

それが優香の着替えのスピードなんだと知らなかった知識を覚えたのだった。


「あわ……。あわわわわ……」

「へへへ。わたしが子供だった時のお父さん以外の男性にはじめて見せた格好です!へ、変じゃないですかね!」

「へ、変なわけないじゃないですか!すて、素敵ですぅぅ!」


女性の裸を素敵と表現するが果たして合っているのかはわからないが、もう神秘的過ぎて眩しい……。

染みも傷もない裸体であり、地下アイドルの水着のグラビア写真なんかよりも100倍以上目が吸い込まれる魔力がある。

着痩せするのかブレザーの時よりも胸は膨らんで見えるし、胸の中心にあるビーチクも丸くてキレイである。

女のって、男よりも先端出るんだ……と自分のと無意味に比べてしまう。

それより下の下半身はモザイクなしではじめて見てしまい目のやり場に困ってしまう。

その下にある脚はしなやかさがあり、踏まれても文句ない輝きがある。


──女の裸体とは宇宙である。

By高嶺総一。




クラスのワーストヒエラルキーにいる俺なんかが、クラスの人気大和撫子な優香が生まれたままの姿なんて……。

興奮するなってのが無理だ。


「わたしも男の人の裸ははじめて見ました。わぁ……、これが皮なんだ。失礼しまーす」

「うっ……」

「ははは。出た出た。こんにちは」


女の人に剥かれるのはなんとも屈辱的だろうか……。

クスクスっと笑いながら俺の下半身と同じ目線の優香。

小さいとか思いながら笑われているのかな?とちょっと被害妄想が走る。


「じゃあシャワー行こうか総一君」

「うん」


それからお互いにシャワーを浴びる。

いつもは安物の風呂椅子に座りながらシャワーを浴びるのだが、2人一緒なのでシャワーを立てて浴びることになる。


「ふーっ。シャワーで学校の疲れが癒えるねぇ……」

「そうだね」

「それに眼福なモノがすぐ側にあって幸せ……」

「ゆ、優香……」


シャワーのお湯を頭から被りながらはじめて同士イチャイチャを経験し合う。

立てているシャワーを立ちながら浴びるのが、ホラー映画で殺されるカップルたちがやっている構図のようで妙に興奮が高まっていく。

ずっとずっとずっとアドレナリンが頭から分泌しまくっている。


「総一君、好きです!総一君がお姉ちゃんに取られないで良かったですぅぅぅ!」

「ゆ、優香……」


そうだな……。

明日香さんはどうしてるだろうか……?

俺がいなくて悲しんでいるのかな……。

悲しまれているとしたら、悪いことをしたなぁ……。

優香には悪いが、明日香さんのことが頭によぎってしまっていた。

本当にあの人はビッチだったのか……。

俺の目に映る清楚な明日香さんは虚像だったのか……。

それを確かめる術はない……。


「ねぇ……、総一君?」

「うん?」


ぎゅっと抱き締められながら、見透かしたような優香が上目遣いだ。

ポタポタとお湯が滴って垂れている。


「わたしを……、優香を好きって言って……。今だけで良い。好きって言って……。今すぐ言って……」

「好きだよ優香……」

「もっともっと!もっとちょうだい!」

「好きだよ!好きだよ、優香!」


お互い生まれた姿のまま、好きを囁きあってキスをする。

俺はただキスのだけだったのだけど、彼女の口から舌が伸びてくる。

前歯に当たったところで、優香の目を見るとポワーンとしている。

その姿を見てしまい、前歯という名のシャッターを解放すると舌と舌が交ざり合う。

お互いに舌と舌で舐め合い、歪な男女の関係がここに出来上がっていた。

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