失恋に泣いていたらビッチ女にお持ち帰りされたのですが、何故かビッチのヤンデレ妹から誘惑されてしまった件
桜祭
1、悪魔のささやき
「私、高嶺君のこと良い人だと思うよ。感情豊かだし、明るいし、話しやすいし。顔だって悪くないなぁってずっと思ってた」
「な、なら!」
「でもごめんなさい。高嶺君は中肉中背なの……。私、もっとマッチョな人が好きなの!筋肉フェチの衝動には抗えないの!」
「…………」
「高嶺君は鍛えてもあんまり筋肉ムキムキになるビジョンないし……。本当にごめんなさい!」
こうして、俺の初恋は筋肉によってラリアットされたようにして散っていった……。
顔とか性格とかがベタ褒めだけに、『何故俺は筋肉を鍛えていなかったのか!』と後悔の中、頭が真っ白になっていった……。
「はぁ……。俺の初恋、筋肉が原因で終わっちまった……」
確かに中肉中背ではあるが、握力はむしろ強い方だと思う。
自分は細マッチョだと思うと反論したが、『細マッチョはマッチョじゃないから』と冷たくされて取り付く島もなく告白は大失敗に終わった。
「恋愛に打ちのめされて、負ける意味を知った──とか言いてぇ……」
負けたらそれまでじゃないか……。
「はぁぁぁぁ」と特大ため息を吐き散らす。
もういっそ死んでしまおうかってくらいに気分は沈んでいた。
「振るならさぁ……、呼び出しにOK出すなよぉぉ……。何回か休日に遊びに誘った時も断れよぉぉぉ……」
俺の好きな心を弄び、その実腹の中では『こいつ筋肉ないなw』と異性として見られていなかったことが堪える……。
そんな酷い話があるのかとベンチに座りながら涙目になっていた。
「あー……。これ、一生引きずるやつだ……。たまに思い出して死にたくなるやつだ……」
笑い話に出来ないタイプの黒歴史だ。
そうやって女々しくぶつぶつぶつぶつと、後悔を口にしていた時だった。
『失恋しちゃった?大丈夫?』
「え?」と、突然声をかけられて地面を向いていた顔を上げる。
そこには大学生ほどの年齢の私服を着た美人な女性が顔を曇らせて立っていた。
「色々聞こえてきちゃったから。筋肉がどうこうって……」
「あ、あははは……。聞こえちゃいましたか……」
「こんなに悩む姿が可愛くて、格好良い顔付きの子が失恋に泣いていたらそりゃあ話しかけたくなるよぉ。私もさ、振られたばっかり。仲間なの、仲間……」
「ふ、振られたんですか!?」
「そうなの……。だから私も凹み中。失恋グループの誕生だね」
「し、失恋グループって……」
裏ではドキドキしていたのを悟られないように自制させる。
こ、こんな美人でも失恋するんだ!って驚愕していたのであった。
腰辺りまで長く伸ばした美しい金髪がまず真っ先に目が入る。
しかも、ゆるふわな雰囲気が美人とのギャップがあってキュンキュンする。
それになにより、胸が大きいし、シャンプーの甘い香りでドキドキしてしまう。
「お隣、座っても良いかな?」
「は、はい。ちょっと端に寄ります」
「大丈夫。同じ失恋グループなんだから近付こうよ」
「え?……は、はい……」
ベンチの端ギリギリに避けようとしたところを左手を掴まれて、『ここに居て』と取れるようなサインを下される。
冷たい手の体温に、くすぐったい気持ちになる。
「あ!そうだ!お名前は?」
「あ……。えっと……。高嶺です。
「総一君!素敵な名前だね!『すべてのナンバーワンは俺だぞ!』みたいに強くて壮大な名前」
「そ、そんな褒め方されたのはじめてですよ……」
しかも、初対面からいきなり名前呼び。
こんなに名前を深読みされた経験もない童貞の俺には、彼女の存在はまさに麻薬だった。
「あ、あなたの名前をお聞きしても良いですか?」
「私は
「あ、明日香さんですね……。可愛らしい名前でぴったりですよ」
「うふふ。ありがと!」
そんな無難な褒め方でも本当に嬉しそうに笑ってくれる。
失恋してすぐに、彼女に恋心が芽生えたなんてことはない。
ただ、少なからず悪い気はしないし興味が尽きないのは確かだ。
『実は俺、狙われてる?』と自惚れるくらいには彼女のことが気になっていた。
「桐原さん、ですか?」
「私の名字がどうかしたの?」
「いえ……。ただ珍しい名字だなぁって」
「総一君の高嶺も充分珍しいよ」
「そうですね」
珍しい名字であるが、ウチのクラスの女子にも桐原って子が居たよなと思い出す。
でも、サバサバしていてこんなゆるふわな人とは性格が違い過ぎて赤の他人だよねと考えるのをやめた。
「総一君の着ている制服は高校だよね?」
「はい。高校生です」
「そうなんだぁ!私、年下の男の子って憧れるなぁ。男兄弟に憧れたけど、ウチは女ばかりでね。へぇ……、年下の男の子かぁ」
「あ、明日香さん……?」
「あはははは。弟がいたらこんな風に甘えさせたくて」
「っ!?」
彼女は手を伸ばして、さわさわと頭を撫でてくる。
高校1年にもなって年上のお姉さんに頭を撫でられる経験も免疫もなくて、反応に困ってしまう。
「顔が赤いよ総一君?」
「え?えへへ?そ、そうですかね?」
「耳も赤いよ」
「えへぇっ!?」
耳まで手を伸ばされて、「やっぱり赤い」と凝視してくる。
な、なんだこれ!?
この距離の詰めかた凄いな!?と驚きと、胸の高まりが同時に出現する。
「お猿さんみたいね」
「さ、猿……」
耳たぶまでじーっと見られて、なんの時間なんだろう?とどぎまぎする。
「ねぇ、総一君」
「は、はひぃ!」
その耳元でいきなり小さい声で名前を呼ばれて、裏返った声で返事をしてしまう。
「ふふふっ」と笑われて、女耐性がないと馬鹿にされたかな?と心を落ち着かせた。
このまま慰めてくれたお礼を言って家に帰ろうと提案しようと口に出そうとした瞬間だった。
「総一君。私の家に来る……?」
悪魔のささやきで、俺を誘惑してきた……。
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