違う女子たち

卯野ましろ

違う女子たち

 あー、楽しいなぁ。

 深夜の散歩も慣れっこになった。ちなみに、わたしは中学生。もう夜道は全然怖くない。こんな真夜中に、わたしみたいなのが歩いていたらザワザワするだろう。しかし誰もいない今、何だか貸し切り状態のようで楽しい。

 ……まあ他人がどれだけ騒いでも、わたしの親は騒がないのだろうけど。

 淋しさは完全に消えない。忘れることはできない。そんな風に空しくなっていたら、


「えっ?」

「あっ……」


 とある家からクラスメートの女子が出てきた。驚くわたしと、困ってしまったその子。そして二人は……。


「どうして、こんな時間に家を出たの?」

「それは私に限らず、あなたにも言えることじゃ……」


 とりあえず、その家の前で話している。彼女は、わたしとは正反対の女の子。ちゃんと学校へ行き、ちゃんと勉強している。そしてタイプの違うわたしとも仲良くしてくれる子だ。


「まあまあまあ。わたしは今、あなたの話がしたいからさ」

「……」


 明らかに機嫌が悪い顔なんて、この子にしては珍しい。たまに登校してきたわたしを、いつも笑顔で歓迎してくれる子もこんな表情をするのか。


「最近、真面目な自分が嫌になって……」

「ほうほう」


 話してくれた。わたしのことを友達と思ってくれているのが本当に嬉しい。


「だから夜にいけないことでもして、そんな自分を変えたいなぁって思って、まずは夜に出歩いてみようと……そしたら、あなたに会ったの」

 

 きっと色々なことがあり過ぎて、この子は疲れてしまったのだろう。わたしには分かる。それでも、わたしの答えは……。


「いーじゃん、真面目でも」

「え?」


 この子は、わたしに「じゃあ、一緒に遊ぼうか!」と言われることでも期待していたのだろうけど、そうはいかないのだ。


「こういう生き方しかできないわたしは、あなたをカッコいいと思うんだけどな」

「そんな……」

「あなたが、わたしみたいになろうとしているのと同じで」

「っ!」


 顔を赤く染めながら、彼女は下を向く。かわいくて笑いそうになってしまったけれど、それは悩んでいる最中の彼女に悪いから我慢した。


「あなたは、あなたのままで良いんだよ。生き方を変えようとしたって、やっぱり自分ができる生き方をするのが落ち着くんだから」

「……」


 その後、彼女は「ありがとう。もう少し考えてみる」と言い、静かに自分の家へと戻った。わたしたちは手を振って別れた。そして、やはり「学校、ちゃんと来なよ」なんて言ってこなかった。いつもそう。


「……ふう」


 明日は学校、行こっかな。

 わたしも、もう帰ることにした。もちろん家に誰もいないけれど、わたしは全く淋しくなかった。

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