第35話

 僕と花蓮の活躍で魔族の陣営が総崩れにいなりかねないほどの多大な被害を与えたことでようやく人類サイドは魔族の散発的な小規模な攻撃を押し返しながら防衛拠点を硬め、なんとか魔族とぶつかっても守れるだけの強固な戦線を作り出すことに成功した。

 ……ここまでの被害を与えないと防衛の準備も出来ないってどんだけ弱いの?人類。


「ようやく帰ってこれたぁ……」

 

 最前線で大きな功績を作ってしっかりと時間を作り出し、出された命令をなんとかこなすことが出来た僕はアレシア様もいる王都の方へと戻ってくることが出来ていた。


「ぷえー」

 

 王城に戻ってきた僕が通された一室に置かれていた椅子に腰を下ろし、これ以上無いほどに力を抜いてだらける。


「入りますよ」

 

 そんな僕がいた部屋の扉が開き、メイドさんが部屋の中へと入ってくる。


「……」


「……お、お疲れ様でした」


「う、うん……まぁ、大変でした」

 

 ふたりきりとなって何とも言えない雰囲気になりながらも僕達は言葉をかわす。


「ですが、新しい自分の力を使うこなすための練習になったと思えばそんなに悪くもなかったですね」

 

「それなら良かったです……和人様に宿ったその力は魔王と戦う上で必須となる力です。それを使いこなせるようになると良いのですが……」


「うーん。まぁ、一応かなり使えるようになっているとは思いますよ」


「それなら良かったです」

 

 僕の言葉を聞いてメイドさんがほっとしたように一息つく。


「そうですね……どれだけ戦えるかのお試しめも含め、久しぶりに私たちで模擬戦をしてみましょうか」


「あぁ……久しぶりにそれもいいですね。互いの現状を知ること。それもまた、魔王を倒すために必要なことと言える気がしますしね」


「えぇ。そうです……互いに全力で行きましょう。和人様は未だに私の全力を知らないでしょう?」


「おっ?かつての勇者の力を見れるということでしょうか?」


「えぇ……停滞せし遥か古代の勇者たる私の力を、魔王と戦う最低ラインの力を見せてあげましょう」


「ふふふ。楽しみにしてます」

 

 僕はメイドさんの言葉に頷き、ともに部屋から動ける広い広場の方へと向かった。

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