第5話
メイドさんが一代限りの名誉貴族だったという驚愕の事実を知り、王都観光を楽しんだ次の日。
僕は燕尾服でなく、そこそこ高そうな服を身に纏い、王城へとやってきていた。
「馬子にも衣装ね。それなりに上に立つ人間として見れるわよ?」
王城に仕える執事より案内された個室にさも当然のように居座っているララティーナが僕に対して口を開く。
ちなみにアレシア様は何やら会議があるとのことで席を外しておられる。
「ありがと」
僕はからかい交じりに褒めてくれるララティーナに対して肩をすくめながら声を返す。
「それで?一体なんで僕は王城に呼ばれたの?」
「そろそろあなたたちもここに召喚されてそれなりに年月が立つでしょう?いい加減魔王討伐に向けて異世界人を動員しようって話よ」
「……」
僕はララティーナの言葉を聞き、思わず眉をひそめる。
「そんな嫌な顔をしないの……安心して頂戴。別に何も異世界人だけで行動させるわけじゃないわ。基本的には異世界人一人一人が身を寄せる貴族家と共に行動よ。貴方の大好きなアレシアと行動出来るわよ」
「それなら良いや」
「……大好きって部分を当然のように受け入れるのね」
「事実ですから」
「ふーん……執事がご主人様に恋愛感情を向けてて良いの?」
「え?別に恋愛感情ってわけじゃないよ?僕のは忠誠心に近いよ」
「あっ。そう」
僕の言葉に対してララティーナが声を弾ませながら頷く。
「それで?僕はどれくらいここに居れば良いの?」
「どうでしょうか……?そろそろ誰かしらが呼びに来ても良い頃合いだと思うんだけど……」
ララティーナが僕の疑問に対してちょうどそう答えたとき、部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。
「あっ、はい」
僕が扉を開け、外へと出るとそこには執事さんが立っていた。
「和人様。お呼びする準備が出来ました。私についてきてもらってもよろしいでしょうか?」
「大丈夫です……ララティーナも大丈夫だよね?」
「えぇ。もちろん」
ララティーナは僕の言葉に頷く。
「それではよろしくお願いします」
「それは参りますね」
僕は先導する執事さんに従って足を進めた。
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