ダイエットおじさんの痩せない理由
すずはな
第1話 ダイエットしないと死ぬかもしれない
夜歩くのは気持ちがいい。
昼間とは違い人も車もいない静かで暗い夜道を黙々と一人で歩く。聞こえるのは自分の呼吸と足音だけ。
リズムよく歩いていると、だんだんと体の中から熱が生まれて脂肪が燃焼しているのがわかるような気がしてきます。
一人でテクテクと黙々と歩く。
ダイエットのために歩く。
そして誰にも会わないで済むから夜歩くのは気軽でいい。
夜歩いていて、周りの風景があまり見えなくても四季は感じられる。
春は暑すぎず寒すぎずで一番歩きやすい季節だけど花粉でしんどい季節でもあり、夏は暑すぎてあっという間に汗が吹き出し、過ぎにばててしまう。
だんだんと寒くなってくる秋は歩きやすい季節でもあります。
そして冬になると今度は寒すぎて散歩に行く元気がなくなり、クリスマスやお正月、部年会や新年会といった行事が次から次へとやってきてまた太る季節になり、といった感じで痩せては太ってをくりかえしてしまっています。
だからこそ飽きずに夜の散歩を続けているのでした。
夜散歩をするようになったきっかけはダイエットのため。
やばいやばいと思いながら、年々増えていく体重。
1㎏くらいならすぐに落ちるからと自分に言い訳して、1㎏痩せたら2㎏リバウンドという悪循環に陥って数年たったある日のこと。
その年の健康診断でついに恐れていたことをお医者さんに言われてしまい、本気でダイエットに取り組もうと思った時には110㎏にまで体重が増えていたのでした。
ここまで太るとお医者さんに言われるまでもなく、自分でも命の危険を感じるようになっていたわけで、そこにお医者さんから糖尿病予備軍というか、もうなりかけているといわれてしまい本当に危機感を覚えたわけです。
このままだと死ぬか薬漬けになる、といってもやっぱりなかなか動き出すことはできなくて、ちょっと筋トレをしてみては膝や腰など体のあちこちが痛くなってやめてしまう日々でした。
ちょっとやっては3日坊主でやめて、でもこのままではまずいと思い再びダイエットをしてという典型的なダメなダイエッターでした。さらに太りそう日々に終止符を打つために、一大決心をして毎日歩くことにしたわけですが、大きな障害がありました。
それはご近所さんです。
もちろん太りすぎた重たい身体が、膝や腰に負担をかけ運動不足ですぐに意気が上がって疲れてしまうという難敵もありましたが、その時は頑張って痩せようとしているのを見られるのが何よりも嫌だったのです。
だから休日の昼間の歩きやすい時間帯ではなく、人の目がない夜にこっそりと歩くようになったのでした。
100㎏オーバーの身体は運動不足で鉛になまっていたので、最初は距離も短く時間も短時間しか歩けませんでしたが、数か月もすると体重も10㎏単位で落ち、歩く距離も時間も大幅に伸ばすことができました。
ご近所さんとはなるべく顔を合わさないようにこっそりと続けていたウォーキングもある程度結果が出てくると、油断した気持ちというか、さぼり癖がだんだんと出てきて、歩きに行くまでの葛藤が生まれて、雨の日など天気が悪くて散歩に行けない日が待ち遠しいといった気持ちが生まれてきました。
ダイエットがうまくいかないすぐリバウンドしてしまう人に共通する部分があると思うのですが、ちょっと痩せたら満足してしまうわけです。そして食べたりせっかく運動の習慣がついたというのになんだかんだと理由をつけてさぼってしまい、あっという間にリバウンドして痩せた以上に体重が増えて、というどんどん太る人特有の悪循環に陥ってしまいそうになります。
ここで負けたら再び100㎏を超えてしまうのは間違いないので、なんとか歩く理由を考えました。
そこで思いついたのが目的地を決めるということです。
夜散歩に出るとちょうどスーパーなどが閉店間際の時間になります。そのスーパーを目的にちょっと買い物に歩いていく、ということが夜の散歩の目的になりました。
歩いて5分のコンビニでも車で行っていた100㎏オーバーの体重を持つおじさんとしては立派な成長です。
ガソリン代の節約にもなって一石二鳥でもあります。
ただただこのスーパーを目的とした夜の散歩には大きな落とし穴がありました。
それは閉店間際のおつとめ品。半額セールの商品たちです。
最初は汗をかいた水分補給にスポーツドリンクなどを買って帰っていたのですが、半額の菓子パンや総菜があると気づいてしまえば、その誘惑には勝てません。
つい半額シールの張ってある甘いものを買って、散歩から帰ってお風呂に入って汗を流したら、テレビを見ながら買ってきた甘いものを食べる幸せ。
その結果は見事にリバウンド。
夜歩いているのになぜか体重が増えていく不思議な出来事が起こるのでした。
ちょっとだけフィクションだけど、ほぼ万年ダイエッターの私の話です。
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