若き文官の悩み
@mia
第1話
「もう疲れた。文官やめたい」
彼は魔法がまあまあ使える方だったので、それを活かした職を望んでいた。
深夜の散歩中に、彼は幾度となく「疲れた」「やめたい」と呟き、ため息をついた。
疲れてるなら散歩などせずに寝なよと、ツッコミが入りそうだが彼は眠れなくなっていた。
もともと二、三時間の残業は当たり前の部署だったが、部屋に帰って晩御飯を作り食べるくらいの時間はあったし、夜も眠れた。だが、この数ヶ月は部屋に帰るどころか寝る間もないほど忙しかった。
大規模な文官の入れ替えで、残って仕事をしていた彼らに負担がかかっていたのだ。
それもやっと落ち着きまとまった休みをもらえたが、徹夜になれた彼は休みになっても夜眠れなかった。
ベッドの上でごろごろしていても眠れないので、体を動かせば少しは眠れるかもしれないと思い散歩をしているのだった。
深夜になると貴族の屋敷が立ち並ぶこの辺りは人影がない。
平民の多い地区の酒場は明け方近くまでやっているという話を思い出し、そこに向かって歩いていた。
散歩の途中、ある屋敷の近くで二人組の怪しい人影を見た。
彼は散歩を中断し、自分の気配を殺して二人組を観察した。
良からぬ話をしている二人の後をつけていき、平民地区まで行った。
彼らが入った家の中の気配を探ると十数人いて、さっき見ていた屋敷を襲う計画を立てていた。
彼は警備の役人にそれを訴えた。最初は信じてもらえなかったが彼の上司達の口添えもあり捜査が始まった。
翌日の真夜中に、屋敷を襲おうとした賊達が捕まった。
だが、その後が大事になった。
賊達のバックに貴族がいたのだ。
そして襲おうとした屋敷の持ち主である貴族も、違法な取引で金銭を得ていたことが分かった。
貴族が捕まった余波で関係していた多数の文官も捕まることになった。
また寝る間もない忙しさになってしまうなどと分かっていたら、彼は通報したのだろうか 。
若き文官の悩み @mia
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