第3話 異世界合コン、デビュー戦②
そして、合コンはマッス先輩の自己紹介の番になる。その次は、俺の番だ。また、緊張が俺の身体を支配する。
「えー、戦士をやっている、マッスと言います。見ての通り、パワーファイター型の戦士です。武器は色々扱うのですが、最近ではこの大斧を装備しています」
マッス先輩は、自慢のバトルアクスをみんなに見せる。鍛え抜かれた筋肉をアピールする為に、袖無しのピッチリとしたシャツを着ている。
そして、先輩は俺の方をチラリと見る。俺の自己紹介の時間が訪れる。
「は、は、は、初めまし、て、サークと言います、はい。ぼ、僕は剣士をやっています。剣はこれです。よ、よ、よろしく、お願いし、します」
上手く言葉が出て来ない。俺は、震えた手でヒヨコのマークの愛剣を取り出し、それを皆に見せる。女性陣からカワイイと言う声が聞こえる。俺は、ひきつった笑顔を浮かべる。
マッス先輩が、俺の方を見ている。まずまず合格点だと、そんな感じの表情をしている。俺は自分の役回りが終わった事で、少し安心する。
次はいよいよ、女性陣の自己紹介が始まる。俺は一言も聞き逃さない様に、深呼吸をする。
「私の名前はマーキと言います。回復士をしています。中級位の回復魔法と補助魔法が使えます。よろしくお願いします」
俺の正面の優しそうな子が話し出す。俺の心と身体も癒して欲しいと、俺は再び妄想モードに入る。
「私は魔法使いをしている、ターヤと
言います。得意魔法は氷系の魔法です。よろしくお願いします」
俺の左斜め前の魔法使いの子の番だ。クールそうな子だ。あんな子に叱られたい。俺の妄想は止まらない。
「アーチャーやってます。トモリと言います。少しドジな所があるので、皆さんにご迷惑掛けるかもしれませんが、仲良くして下さい」
やはり、弓矢の名手、アーチャーの様だ。俺のハートは、君の愛と言う名の矢に撃ち抜かれたよ、俺は叫びたい衝動を必死で抑える。
「剣士をやってる、チリーだ。私は、タイプ的にパワー型ではなく、スピード型の剣士だ。よろしく」
俺と同じタイプの剣士だ。しかも、こういう場に慣れていない、ぶっきらぼうな感じが素敵だ。俺が剣の手ほどきをしたい、また俺は妄想モードに入る。
「それでは、自己紹介も全員終わって、料理もお酒も来たので、乾杯をしましょう」
また、魔法使い風のパッとしない男が、場を仕切る。皆、グラスを持ち、目の前の異性を各々見る。そして、俺は正面のマーキちゃんと乾杯をする。
マーキちゃんと、目が合う。彼女は俺にニコッと微笑む。俺の心臓の鼓動が、いっそう早くなる。
ひょっとしたら、これは俺に気があるサインなのですかと、俺は興奮する。いかん、彼女の顔が恥ずかしくて見れない。俺は、うつむいてしまう。
「サークさんとマッスさんは、お友達なのですか?」
マーキちゃんが、俺に質問して来る。俺はガバッと彼女の方を向き、目を見開く。
「へ・・・、へい、そうです」
俺は緊張の余り、声が裏返る。
「こいつとは、ガキの頃からの付き合いだ。昔、俺がこいつに剣を教えていたんだ」
マッス先輩が俺のフォローをして、代わりに答えてくれる。ホントに頼もしい先輩だ。
「そうなんですか?じゃ、マッスさんは、サークさんの師匠なんですね。お二人は同じパーティーなんですか?すごく仲が良さそう」
マッス先輩は俺の方を見て、根性入れて、お前が答えろと言う様な表情をする。
「いえ、ち、ち、ち、違いますよ。今は、ち、ち、ち、違います」
俺は、震えた声で答える。マーキちゃんはこちらを優しく微笑んでくれている。
俺は喉の渇きを潤す為に、酒の入ったグラスを手に取ろうとする。が、手の震えが止まらない。
バカな、大魔王をたった一人で倒した勇敢なこの俺が、何に怯えているのだ。俺は冷静に自分を分析しようとする。
そうだ。俺はこの合コンに来ているカワイイ女の子達に、嫌われる事を恐れているのだ。だから、言動に怯えているのだ。
そうだ、酒が入れば緊張は解ける。 俺は、グラスに入っている酒を飲み干す。しかし、一杯くらい飲んでも緊張は解けない。
俺は、マスターを呼び、何杯もお代わりを頼み、飲みまくる。
俺は、いい感じに気持ち良くなっていった・・・。
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