第70話 答え合わせ③
「失礼しますアリウス様」
剣聖アリウス・クラリスは自室で以前の襲撃の資料を読み漁っていた。すると、突然一人の兵士がある報告しにやってきた
「どうした」
「王国で冒険者たちを中心とした反乱が・・・」
アリウスにとっては想定内のことだった。王国の手違いで冒険者の信頼を失ってしまったのは紛れもない事実である。謝罪と賠償をおこなったが納得いかない者もいるのだろう
「首謀者は?」
「銀の翼というA級冒険者のマルコス・ラボという男です。王様に直訴し国民に王国の闇を暴いてやるとのことで・・・」
王国が冒険者を陥れるために例のクエストを発注したわけではないが、証拠を見せるのが難しい以上、陰謀論が出ても仕方のない事である
「先導者だけを応じると伝えてください」
とりあえず頭を説得しなければ事は収まらない
アリウスは話し合いの場所を確保しに動き出した
「銀の翼のマルコス・ラボだ。なぜ国王は顔を見せない」
「国王は今忙しくあるのでこの剣聖が誤解を解きましょう」
アリウスはマルコスという男と相対した。外ではおよそ100人の冒険者たちが真実を待っている
「王国は人間を裏切ったのだ」
マルコスは強い意志で主張する
「その証拠はなにかな」
「俺はあのクエストを受けて唯一生き残ったものだ」
彼が冒険者の生き残りだったのか・・
「それについては深く謝罪いたします」
剣聖はマルコスに向けて深々と謝罪をする
「謝って済むなら死んだ仲間たちを生き返らせてくれ」
その言葉に剣聖は何も返す言葉が見つからない
「俺には証拠がある」
マルコスという男がポケットから何かを取り出す
「これが証拠だ。この手記には王国が裏で魔族とつながっていたと書かれている」
「一度見せてくれないか」
アリウスは手記を受け取り中身を見る
「これは・・・」
ナバルの手記だ。ということは、ナバルはもう・・・
「これで分かったか・・お前たち王国は──」
「いや、僕が今からそうではないと証明しよう」
マルコスを外で待つ冒険者達の前に立たせた
「聞いてくれ、今から王国の疑惑を晴らして見せましょう」
アリウスはマルコスに向けて剣を抜く
──
「なっ」
アリウスはマルコスの首元に剣を当てた。すると──
「これが真実だ。おそらくこの男は契約によって嘘を強要されていたのだろう」
そもそも、魔王相手に生きて帰ってくるなどA級冒険者では不可能だ。だからこそ操られている可能性が高かった
契約の紋章が浮かび、そして割れていくかのように消える。それを見ていた冒険者たちは状況を何となく理解した
「マルコス、もう君を縛るものはないよ」
剣聖の力はスキルや魔法の無効化である。そして自身に有害なものは自動で無効化している
「あっ・・・」
マルコスは悪夢から解放されたかのように話し始める
「実は、脅されていたんだ」
「いったい誰に」
「魔王カザリス、不死者の大王に・・・」
どういうことだ?吸血鬼の女王ではないのか・・・
さらにマルコスはそこでの出来事を話していく。冒険者たちの最後や自分のかけられた契約の内容まで洗いざらい話した
「奴はカミヤという国を作ったが、そこは対王国用の罠が張り巡らされた場所なんだ」
ってことはカミヤ国、いいや吸血鬼の女王自体は本当に死んでいて・・・
「そこに誘い出して王国を滅亡させようとしている」
やっと状況の整理ができた。カミヤ国など存在せず王国を孤立させるための罠だったのか。余裕のなくなった王国は戦争という形で自分たちの身の潔白を証明しなければならない
「マルコス。今の発言を国王の前で話してほしい」
「分かりました。ぜひ協力させてほしい」
契約魔法が解除された途端、マルコスは協力的になった
「ナバルの仇を絶対に討つ・・・」
契約魔法が解除できる存在などこの世界で僕しかいないだろう。残念だったな・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます