第34話 仲直り
筋肉痛だ。昨日の戦いで普段慣れない動きをしたからな
朝食で使い終えた食器をもって洗い場に向かう。そこではいつものようにせっせとレオが皆の食器を洗っていた
「兄貴、これが終わったら自主練するんですけどどうですか」
昨日の戦いではレオも大きく活躍した。本当なら疲れていてもいい筈だがストイックに練習するようだ
「ごめんレオ、俺はパスで」
レオは分かりましたとだけ言い残し、訓練場に向かって走って行く
「あ~疲れた」
今日は無気力で何をする気にもなれない。残された選択はベッドで寝ることくらいだろう
「昨日から少しアリスと気まずいな」
自室に戻ると昨日のことを思い出して考え込んだ
昨日の戦いの中、アリスが良くない方向へ進んでしまうのではないかと思った。しかし、殺すか殺されるかの状況で相手の命がどうとか、そんなことをアリスに説こうとしたのはただの押し付けに過ぎない
「何か言った、お兄ちゃん」
っ!どっから湧いてきたんだ
「居たなら声かけろよ。びっくりしたじゃん。それに俺の部屋にはノックなしかよ」
いや、いつから俺の後ろにいたのか。気配を全く感じ取れなかった
「お兄ちゃんがアリスに構ってくれないからだよー」
「ちょ・・ギブ、ギブギブ」
いきなりアリスはチョークスリーパーをかましてきた
変な距離を作っていたのは俺かもしれないな
「なぁ、アリスのしたいことってなんだ」
「急にどうしたの」
「いいから教えろって」
アリスとはもっと話し合った方がいい。アリスの考えていることを勝手に俺が決めつけることは良くない
「分からない、ただその時その時にしたいことをしてるのかな」
「そうか、俺はアリスが幸せに暮らせるよう支えたい」
「・・・」
あっ、やばい。俺何言ってんだろう。ちょ、マジ、恥ずかしい。兄弟史上一番キモいことを言っているという自覚だけはある
「ちがっ・・その・あの」
「アリスはずっとお兄ちゃんと一緒にいたいな」
「あ、うん」
なぜか少し気まずい・・・
「何その反応、実の妹に恥ずかしいこと言わせておいて」
「ちょ・・待て・・本当に死んじゃう・・・」
アリスはふふ、と笑いながら二度目のチョークスリーパーをきめてきた。こんな華奢な体のわりに力が強い
「アリス、スグルー、二人とも昼食にするよーってなにイチャイチャしてるの」
「ルミナ・・・早くたす・・け・・」
「けーおー」
アリスは手を上に突き上げ勝利のポーズを決める。状況が呑み込めていないルミナはとりあえず拍手を送った
「兄者よ次はもっと練習してくるんだな」
「ああ、アリス覚えとけよ」
「そんなことどうでもいいから早くご飯食べるよ」
ルミナの空腹は限界に近かったようだ
今日の昼食は師匠の作った豪華な振る舞いだ。食事はなるべく六人全員で食べるようにしている。まるで家族のように
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ここはライン王国国境付近にある無法地帯。双子の殺し屋はまるで遊びに行くかのように任務を遂行する
「レナ、右に展開」
二人は前方に標的の残兵を発見する。確実に仕留める為、妹のレナと挟む
「わかった」
私たちは元王国裏社会御用達の双子の殺し屋。今は30名程度の王国兵士暗殺が任務だ
「誰だ貴様は。動くn―」
敵の首が宙を舞う。この芸当はそう簡単にできるものではない
「わりい、早く帰りたいから命乞いは聞けねーよ」
次々と敵が倒れていく。暗闇の中、血の色など見えず悲鳴と同時に水しぶきを他の兵士が感じている
「「「うわああああああああああ」」」
「逃げるなんてつれねーな」
まあ、そっち側は
「ばあ!」
「「「「いやあああああああああああ」」」」
楽しむかのようにレナは敵を驚かした
これにより敵も相手が一人ではないことに気づいた。がもう手遅れだ・・・
「レナの顔見てそのリアクションは酷いよお」
そう言い残し、敵の頸動脈を狙ってナイフを振り回した
一分も立たないうちに動いている王国兵士はいなくなった
「やっと終わったか。レナ、早くかえ──」
「お姉ちゃんもう動けないよー」
あー、またレナのわがままが出たよ。いつものことである
「今日は無理」
「背負ってよー」
駄々をこねるレナを背に、姉のマリは自分の家へと帰る。この森からは少し遠いが、自分の家などなかった昔に比べれば十分幸せだ
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