第13話 きっかけ

異世界に来て慌ただしい日が続いた。疲れが溜まり昼に寝てしまったせいで今夜は眠れそうもない。横では、アリスとルミナがぐっすり寝てる。夜風にでもあたろうかな。


「―おにいちゃん・・ゴブリンはさすがにたべれないよ・・」


いや、どんな寝言だよ。アリスの夢の中で俺は一体何をしているのやら


「ルミナは結構静かに寝てるな」


ああ、そろそろ自分の部屋が恋しくなってきたよ・・


金銭的な理由で宿を一部屋しか借りることができない


宿をこっそり抜けると空にはきれいな夜景が広がっている


「夜の街は静かだな・・飲み屋は何件かまだ明るいけど」


思ったよりも涼しい。案外、俺にはこういう一人の時間も大切なのかもしれない。朝には宿に着ければいいか


「あっ、見たくないものを・・・」


歩く途中、裏路地にむかっていくカップルがイチャイチャしている。少し羨ましい


「出会いが少ないなあ」


ルミナ・・はさすがに妹と同い年に見える時点で少し厳しいな。それにアリスに、ロリコン?お兄ちゃん見損なったよ、なんて言われそう。俺に彼女できるのは当分先のことかな


夜道をさらに進むと路地裏から騒がしい音が聞こえた


「―離せよ、クソッ、ぜってえ許さねえからな」


こんな時間に揉め事だろうか・・暇だし見に行ってみよう


「妹を返せ、カレンを返せ」


妹、その言葉は俺にとって1番無視できないことだった





スグルが騒ぎを聞きつける10分前のこと


―やっと見つけた。これであの方の信頼を勝ち取ることができる。そしたらこんな面倒な仕事ともおさらばだ。



「君には騎士団の兵士殺害容疑がかかっている、取り押さえろ」


部下が2人がかりで少年を確保した。


「はっ、離せよ。クソやろう」


よし、取り押さた。あとはコイツを連れて帰ればいいか。


「なんでだよ、妹は、カレンは何もしていない」


「よくもまあ、あんな力を持っているのに。奴を野放しにするわけないだろ、連れてけ」


ああ、やっと終わった。これで私の地位も―


「ちょっと止まれよ」


表道から一歩ずつ、ゆっくりと謎の影が近づいている。暗くてよく顔が見えない


「貴様は誰だ、この私がライン王国の騎士団少尉と知ってのことか」


いったい何者だ。それにしてもなんだ、この寒気は・・


「奴はこの場で殺して構わん、やれっ」


二人いるうちのもう一人の部下を向かわせた。しかし、抱いていた悪い予感は当たってしまった。


「────」


バタっと向かっていった兵士は不自然に倒れる


「なっ―」


一瞬でやられた?王国騎士団の兵士だぞ。この平民街に住むやつにこんなことできるはずがない。よそ者か・・


「その子を開放しろ、逃げるなら追わない」


くそっ、命あっての人生だ。相手の素性が分からないならここは逃げるしかないか―


「ここは引くぞ」


「はい」


畜生、なんなんだ。俺の邪魔をしやがって


パンっ


「えっ、足が・・」


「お前は残れ」


ぐわああああああ


「なんでだよ、見逃してくれるんじゃ―」


何が起きた?あんな魔法見たことない。いや、あれは魔道具なのか。


「この子の妹は今どこにいる」



「俺は知らない、本当知らないんだよ、第三王子のマルクス様しか知らないんだ。信じてくれっ」


「分かった、さっさとどっかいけ」


コイツ、俺に背を向けたな。残念だったな。死にやがr───


「えっ・・」


地面に落ちていく?いや頭が―


「ああ、勝手に手が・・ってかもう死んでるか」


スグルは殺した兵士の剣で首をはねる


「俺、めんどくさいことに手を出しちゃったなぁ、アリスになんて言おう」


そして今朝、三人の兵士の遺体が無残な状態で見つかった


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