第3話 初めてのクエスト
今、俺たちはギルドにいる
「お兄ちゃん、冒険者登録終わったよー、E級の冒険者だって」
最初はE級か、アリスなら納得いかない、見る目ないねとか言って文句言いそうなのに
「じゃあ早速クエスト行く?」
冒険者なんて初めてだし、とりあえず経験するべきか
「アリスお腹すいたぁ、ごはん食べたいよぉ」
「そうだな。時間も時間だし」
アリスの一言でクエストに行く前に昼食を済ますことにした
というわけで飲食店に入ったわけだが、知らないメニューが多く頼めそうなものはチキンステーキとサラダくらいだった。
「おいっ!なに酒頼んでんだよ」
「この世界に未成年がお酒飲んじゃいけないなんて法律ないし、アリスまちがってないもん」
今日の昼ごはんはとても騒がしかった
アリスがお酒を頼むたびにスグルはその酒を飲み干す
「お兄ちゃんそんなに飲んで大丈夫なの」
「ああ、ってもう頼むなよっ」
ちなみに俺は大学二年生でぎりぎり二十歳だ。アルコール耐性は最強であると自負している
「おい、なにスカした顔してんだ、あんまり調子に乗んなよお」
昼間っから酒に酔ったおっさんが近くの青年に絡み始めた
俺とアリスは近くで様子を見ていて止めようと思ったが、おじさんが急に泡を吹いて倒れこんだ。青年は何も言わず店を出ていき事件は幕引きとなる。
「あれは飲みすぎだな」
「そう、だね」
アリスは何か考え事をしていたのか、曖昧な返事だった。
「お兄ちゃん、とりあえずお金必要だから簡単なクエスト行くよー」
「はーい」
やや不安である。自分よりも勝っていようが兄として妹を守らなければいけない。それだけは心に誓った
*******************************************
「ということでお兄ちゃんと初めての冒険に来ました!拍手!」
パチパチパチと俺は妹に合わせて手をたたく
ここは人間の住む地域から離れた無法地帯と呼ばれる場所。冒険者は主にこの無法地帯という場所で魔物を討伐したり珍しい植物を採集するようだ
「アリス、クエストの内容は何だっけ?」
「──」
アリスは全く話を聞いていない
「ねえ、聞いてるの──」
「ファイアーボールっ!」
アリスの手から巨大な炎が放たれ、次々とスライムを焼き尽くす
「え」
おいおい妹よ、まさかクエスト終わったとかいうなよ
「スライム10体の討伐だったんだけど、終わっちゃった、てへへ」
そんなかわいいアピールもさっきの見たら意味がないよ。俺必要なの?泣きたくなる~
「魔物の体の中には核ってものがあって、この粒みたいなのをギルドで換金できるんだって。さあ、お兄ちゃんの出番よ!」
さあ行けと言わんばかりのアリスの態度にスグルは泣く泣く核を集めだす
「なぐさめになってねーよー」
まさかの採集担当なの俺
「集め終わったし、今日は帰るか」
「まだだよ」
妹は袖をめくって、微笑んでいる。嫌な予感が
「走り込みするよ!」
「えっ」
妹のストイックさにあきれる。何が起こってもおかしくないこの場所で、本気かよ
「お兄ちゃんの方が昔、軍隊で鍛えていたんだから体力あるでしょ。」
動けるようになったから楽しいのだろう。でもそれだけじゃない。妹がとても努力家であることは昔から知っていた
「ついて来いよ。」
俺はスタートダッシュを切った。妹は少し驚いたようだが後ろを一生懸命についてくる
「オラァァ!」 「ウリャァァ!」
最初はジョギング程度だったのが最後は猛ダッシュになっていた
結局二人は倒れるまで走った
「疲れた~」
「アリス、お前なかなかやるな」
「でしょ!」
俺たち二人は大の字になって夕焼けの空を見上げる
「今こうやってお兄ちゃんと遊べて楽しいな」
「そうだな、こんな日が来るなんてな」
外に出ることすらできなかったアリスがこうして外に出て元気にしていることがとても幸せに感じる。でもこの幸せは俺がちゃんと守ってやらないとな。
「お兄ちゃん私のこと好き?」
「あたりまえだろ、唯一の家族だしな」
「全然わかってないんだからぁ」
小声だったのでアリスが何を言ったか分からなかった
「さすがに帰るか」
「うん」
日が暮れる前に帰ることにした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます