転生した異世界で怠惰なダメ貴族を目指す
ニスリア
第1話 最後の記憶
その日は大学に入学して間もない頃だった。
今日の夕飯はコンビニで済ますと決めた俺はマンションの自室を出てエレベーターに乗った。
大学の入学を機に始めた一人暮らしはひとりで気楽なのだが、毎日の食事の用意はやはり面倒に感じてしまう。
1階に着き外に出るとくらい視界の中で誰かが車で出かけようとしているのが目に入った。
引越してからこの時間に出ると毎回同じ人を見かけている。
目が合ってしまうと少し気まずいので時間帯をずらそうと前に考えた気がするが結局今日まで時間帯を変えることはなかった。
俺はそのままコンビニへ向かいながら、明日には時間帯を変えようという気持ちと、別に気にしなくていいのではという気持ちに挟まれていた。
そんなどうでもいい事を考えながら歩いていると目的のコンビニにたどり着いた。
いつものように大きめのカップ焼きそばと、適当に目に止まったおにぎり2つをその容器の上に乗せた。
いつもはそれで終わりなのだが、今日はもう少し食べたい気分だったのでスイーツが売っているエリアに向かった。
そこでひとつの商品に目が行きそれを手に取った。
それはエクレアだった。
チョコの甘さがちょうど良くてコンビニスイーツの中では1番のお気に入りだ。
最近普及してきたセルフレジで会計を済ませて家に帰るため歩いていると何故か人気のない道の方へ入っていきたい気持ちになったがお腹が空いていたので早く帰ろうと思いそのまま、まっすぐ歩いた。
しかし、しばらく歩いていると再び人気のない道に入って行きたい欲求が出てきたがそれを何とか抑え込み前へと歩き続けた。
まるで何かに誘われているような感覚がして不気味に思った俺は早く帰ろうと思い、歩く速度を早めた。
マンションまであと少しというタイミングで今までの比ではないくらい強く惹きつけられる感覚がした。
霊感があるタイプではないのだがその曲がり角の辺りからは何か禍々しいオーラのようなものが見える気がした。
心臓が痛みを感じるくらいバクバクと脈打っているのが分かった。
呼吸が短くなり滝のように汗が流れ出ていた。
今にも倒れそうになりながらその曲がり角を曲がるとその奥にまねき猫のようなものがあるのが見えた。
ようなものと表現したのは、そのまねき猫が可愛らしい姿に反してドス黒いオーラを放っていたからだ。
それが危険なものなのはどんな馬鹿でも理解出来るだろう。俺は本能からこのまねき猫もどきに対して恐怖を覚えていた。
だが、その恐怖の感情とは裏腹にガクガクと震えている俺の体はそれでもそれのもとへ進もうとしていた。
自分の意思から離れて動く体の挙動に対してさらなる恐怖を抱いていると、それのところまであと一歩というとこまで近づいてきていた。
そして、勝手に動く俺の体はそれに手を伸ばし始めた。
それに触れてしまったら一体どんな厄災が襲いかかってしまうのか想像もつかない。
もし何か起こるのだとしたら、せめて痛いことではないことを祈るばかりだ。
そんな考えを巡らしているうちにとうとうそれの頭の上に手を乗せてしまった。
すると今まで感じていた恐怖や緊張が嘘のように吹き飛んでしまった。
あまりに唐突に訪れた虚脱感に固まっていると、背中から勢いよく針のようなものが刺さる感覚がした。
全身の感覚が無くなってしまったので確証は無いが、恐らくは倒れ込んでしまったのだと思う。
薄れゆく意識の中誰かの喋り声が聞こえた気がした。
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