雪降る深夜のコタツムリは楽園追放を回避したい!
弥生ちえ
コタツムリは散歩する
午前0時。
君はあるだろうか?
深夜ふと腹が減り、それに気付けば抗いきれない衝動に襲われる……そんな経験が。
私は今、まさしくその状態だ。
季節は冬。
コタツに胸まで浸かったまま、腕だけを目一杯伸ばして目当ての布を引っ張る。
冷える部位は最小限に留めるのだ。
電気代の高騰で、独り暮らしの私が採った節電手段……それは、職場から帰宅後の自宅時間は唯一の暖房器具であるコタツ世界に引き籠ることだった。
首尾よく僅かに開けたカーテン。その隙間から窓の外を覗けば、空から雪が舞い落ちている。
カーテンをずらしたことで、室内に流れ込んできた、キンと冷えた空気に更に目が冴え、空腹に追従する食欲の猛威は増すばかりだ!
どうする!?
冬のコタツはこの世の
私も苦難を覚悟の上で、極寒の外界へ旅立つのか!?追放もされていないのに!
ぐぅぅ
コタツからの旅立をテーマに、深夜テンションで妙な盛り上がりをみせていた私の思考回路が、間の抜けた腹の虫の一声でとたんにシュンっと現実に引き戻された。
そうだ、腹が減ってたんだった。
「仕方がないなぁ……」
言いながら、よいしょっと身体を回転させて、四つん這いになり、背中でコタツを押し上げる。
そのまま一歩二歩と手足を動かし、カップラーメンを仕舞ってある棚へ、のそのそと移動した。順調な旅だった。
だがそこで大問題が発生した。30秒で湯を沸かす電気ケトルに、立ち上がって水を入れなければならない……。それすなわち、この楽園からの追放を意味する!
仕方がない。
今回は、コイツとは縁がなかったーーそう云うことだ。
驚くほど突然に、コタツムリの冒険はここで終わりを告げた。
冷蔵庫前だ。
「うん、暖かいコタツでひんやりアイスも最高~!」
雪降る深夜のコタツムリは楽園追放を回避したい! 弥生ちえ @YayoiChie
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます