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私の膝下のタイトスカートより遥かに短いそれに、白いブラウスから透けるオレンジ系の下着。わざととしか思えない装いの彼女と、パチリと目が合った。
「今、休憩時間じゃないわよね?」
彼女と、その周りにいた二人の男性社員は途端焦るように目を泳がせる。
「仕事できない人に限ってそうやってサボるのよね。そもそもなに、その格好? 会社に男漁りに来てるわけ?」
「なっ……」
カッと赤くなる顔。やっぱり図星か。
相手にするのもくだらなくなり、さっさとその場を通過する。
遠ざかるまで彼女の泣き真似の音だとか、それを庇う彼らの声なんかが流れてきた。
「あれ完全に嫉妬だって、可愛くて若い女の子が気に入らないんだよ」
「相変わらずキッツいなぁ、課長に昇進したからって調子に乗ってんじゃねえの」
若いって、私と彼女、確か五歳しか変わらないはずだけど。
サボりに注意をしたことが、なぜ調子に乗っていることになるのか。
女が昇進したことがそんなに気に入らない?
――男なんか頼りにしちゃダメ。
――自立した女性になりなさい。
こんな時決まって聞こえる、母の声。
ガラス張りの壁面に映る自分の姿。
靡く漆黒の髪。つり上がった眉。その間にある深い窪み。
いつもと変わらない私。
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