KAC2023 第4回お題「深夜の散歩で起きた出来事」

水曜

第1話

 それは刑事の勘みたいなものだったのかもしれない。

 どうも目が冴えて眠れない私は、パトロールがてらちょっと散歩でもして時間を潰すことにした。

 最近は世の中何かと物騒だ。

 以前も何となく眠れずに深夜の外回りをしていたところ、女性を襲う不審者と出くわして現行犯で捕まえたこともある。

「困っている人を助けてやれる男になれ」

 というのが警察官だった亡父の口癖だった。街を守るその姿に子供の頃から憧れていた私も自然と同じ道を歩んでいる。

 子供を起こさぬように防寒用の上着を羽織り、父の遺影に敬礼して外に出る。

 かなり冷えるなと思っていたら、深夜の空からは雪が降り注いでいた。世界は徐々に黒から白へと染まっていく。

 手をこすり合わせながら、私は夜の街を巡回する。


 よく吠える優秀な番犬を不思議な餌で手懐けて、他人の敷地内に入っていく男を見かける。大きな袋を担いでいるのが特徴的なシルエットだ。

「異常なし」

 と私は見て見ぬふりをして、その場を後にする。


 神がかった手際で、最新鋭の警報装置を次々と解除している男を見かける。大きな袋を担いでいるのが特徴的なシルエットだ。

「異常なし」

 と私は見て見ぬふりをして、その場を後にする。


 煙突のある大きな古い家の屋根にのぼっている男を見かける。大きな袋を担いでいるのが特徴的なシルエットだ。

「異常なし」

 と私は見て見ぬふりをして、その場を後に……しようとして男が足を滑らせる。

 

 慌てて私は走り出し、地面に激突する寸前で男を受け止める。

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう。助かったよ」

「いえ、困っている人を助けるのが本職の責務ですので。お気を付けて」

 相手に怪我がないことを確認して、私はその場を後にした。

 刑事の勘は間違っていなかった。無事多くの人の幸せを守ることができた。散歩兼警邏を終え、自分の家へと戻る。

 眠る我が子の枕元には聖夜のプレゼントが置かれていた。

 

 

 

 

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KAC2023 第4回お題「深夜の散歩で起きた出来事」 水曜 @MARUDOKA

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