第89話 これが私の全力だ!!

「あたしが弱い??」


「うん!! だって、あやねんが弱るまで待っていたって自分で言ってたじゃん、それってつまりは全力の時のあやねんには勝てないって言ってるよーなもんじゃん」

 

「あいつらにここまでボコられてるお前はあたし以下じゃねぇか…… いいからそこでリーダーが倒されるのを見届けな」


「確かに私はあなたよりは弱いかもしれない…… でもあやねんは、あなたの何倍も、何百倍も強いんだから!!」


「生意気なガキが…… いいぜ、お前から先に消してやる」


 マリベルは緋奈に一気に距離を詰め、銃口を構えた。

 その瞬間、緋奈の後ろから美佳が現れて緋奈を突き飛ばしてた。

 

 突き飛ばされた緋奈は、私の近くまで飛んできた。


 マリベルは突然現れた美佳に驚き、一度距離を取った。


「あんたね、無茶しないで寝てなさいよ!!」


「だって〜 あやねんが言われっぱなしなの見てられないんだもん!!」


「それはわかるけど…… まあ、あんたは大人しくしてなさい!!」


「次から次へと…… 誰から先に来るんだよけっきょ…… くっ……」


 マリベルがゆっくりとキレ気味で立ち上がる瞬間、スナイパーライフルの弾丸がマリベルの脳天ギリギリを通りすぎた。


「ごめん…… 外した…… 次は外さない……」


「みんな……」

 

 私はゆっくりと立ち上がった。


「あのさ、うーちゃん…… うーちゃんは、どうしてこのゲームをやってるの??」


 私が緋奈にどうしてと質問すると、緋奈はきょとんとした顔をしたのちにくすっと笑った。


「たのしーから!! それだけで十分だよ、ゲームを楽しむのに理由なんていらないよ!!」


 私は緋奈の答えを聞いた瞬間、自分の心に抱えていた疑問が、吹き飛んだ感じがした。

 ふと試合前にお兄ちゃんから『全力で楽しんで来い』というメッセージが送られてきたこと思い出した。


(なんだ…… それだけでよかったんだ……)


 機械だ、感情がない。

 そう言われる原因を結局解消できなかったのは、自分にも責任があった。


 その責任から逃げ続けていた。

 

 でも私は、ようやく気がつけた。


「あやねんはどうしてやってるの??」


「そういえば聞いたことなかったわね」


「教えて……」


 3人は私のことをじっと見ながら質問をした。


「私も楽しいからやってるよ!!」


 私が満面の笑みでそう言うと、3人ともニコッと笑った。


「そっか〜 んじゃあ、さっさとやっつけちゃお!! 世界大会はもっと楽しいと思うよ!!」


「作戦会議は、おしまいか??」


 マリベルはそう言って、銃をリロードした。

 なんだかんだみんなで話している時に襲ってこないあたり、根はいい人な気がしてきた。


「うん!! なんというか、ありがとうございます!!」


「へっ??」


「今まで悩んでいたことは些細なことでした、悩みが消えたのはあなたのおかげでもあります…… ありがとうございます、おかげであなたに勝てそうです!!」

 

 私はマリベルに頭を下げた。

 

 確かにひどいことを言われた。

 でもお兄ちゃんが言っていた通り、乗り越えないといけない。

 そのきっかけを作ってくれたマリベルに、私は感謝を伝えた。


「よくわかんねぇけど…… あんたが本気になってくれて、あたしは嬉しいよ 見せてみろ、新時代の天才てやつを!!」


 私はマリベルに向かって一気に距離を詰めた。

 マリベルは意外な表情をした。


「近距離戦…… 未来視は捨てるか」


「最近、コーチに教えてもらったんです!!」


「へぇ〜 そりゃあ、楽しみだ」


 マイベルは私に向かって、サブマシンガンを放った。

 放った弾丸をしゃがんで回避し、私もサブマシンガンの球を放ちマリベルの胴体に当てて体力を半分ほど削った。


「私たちの援護はいらなそうね」


「あやねん!! がんばれ〜」


「頼んだ……」

 

 緋奈たち3人は、同じ場所にまとまって座りながら私を応援してくれていた。


「やるな……」


「まだまだこれからです!!」













「え、俺のパルクールをやりたいの??」


「うん!! コーチ、教えてください」


「しょ、しょうがないな〜」


 私がお願いすると、お兄ちゃんは私のできないパルクールの動きを目の前でやってくれた。


「何その動き、お兄ちゃん すごいよ!!」


 前にみんなで合宿した時、私はお兄ちゃんにキャラクターコントロールを教えてもらっていた。


「これは俺のオリジナルっていうか、わざわざやる必要ないんだけどね」


「でもすごいよ〜 そんなの思いつかなかったし……」


「これするためにキー設定の割り当てを瞬時に変える、ちなみにこの後の攻撃を失敗すれば操作がしずらくなる いわば捨て身の一撃って感じだけど…… それでもやる??」


「うん!! 手札は多い方がいいもんね、私の技を教えたから今度はお兄ちゃんのを教えて!!」


「まあそうだな…… いいよ、教えるね まずは……」










 マリベルの弾丸を避けた瞬間、設定画面を即座に開いて操作キーを反転させた。

 キーが反転することで、移動用のキーとジャンプを入力するキーの位置が近くなって、パルクールが出来る。


 ただし、グレネード等の小道具やリロードといった攻撃関連のキーの配置が遠くなって、反撃までの時間にラグが発生するというデメリットも存在する。


 私はパルクールで弾丸を避けながら、距離を詰めてサブマシンガンを放った。


「あと一歩、足りなかったな」


 マリベルは私の来る位置を予測して予め距離をとり、私の到着した位置にエイムを置いていた。


「残念だったな、これで終わ…… 何っ……」


 私はその位置で待っていると思い、即座に着ている胴体の装備をマリベルに投げ付けて、マリベルの放った弾丸を防いだ。

 視野を奪った隙に、マリベルの方向に銃を構えた。


「これが私の!! 全力だ!!」


 私の放つ弾丸は、投げ捨てた装備ごとマリベルを貫き、私たち4人の画面にはYOU WINの文字が表示された。


 

※後書き

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