第76話 ダメだよ……

 彩音、緋奈、美佳、有栖の4人は大浴場の湯船に浸かっていた。


「いや〜 極楽、極楽〜」


 緋奈は大浴場でスイスイと泳いだ。


「こら!! 緋奈、お風呂の中で泳がない」


「え〜 いいじゃん、他にお客さんいないんだし〜」


「そういう問題じゃない、きゃっ……」


 緋奈は美佳が話している途中で、顔に目掛けて手を水鉄砲の形にしてお湯を飛ばして美佳の顔にお湯を飛ばした。

 美佳の顔にお湯が当たって、メガネが曇った。


「あはは〜 メガネが曇った!!」


「……ッ やったわね、待ちなさい!!」


 緋奈は美佳が怒ったのを見た瞬間、浴槽の中を歩いて逃げた。

 その背中を美佳が追い、鬼ごっこが始まった。


「あったかい…… 疲れが取れる……」


「やっぱり銭湯って気持ちいね〜」


 有栖と彩音はそんな2人を見ながら、静かにお湯に浸かっていた。


「そういえば、あやねんはにーちゃんと最近どんな感じ〜??」


 緋奈は彩音の横に逃げてきて、隣に座った。


「けほっ…… げほっ…… え?? い、いや その〜 私とお兄ちゃんはそういうんじゃ……」


 彩音が焦っていると、2人は彩音の元に寄ってきた。

 悠也に対する彩音の反応を見た瞬間、緋奈にやり返すとこなんてどうでもよくなり美佳も彩音の近くに座った。


「練習中、おにーさんのこと…… 何度も見てた気がする…… というより見てた……」


「なんとなく少し前からそんな気はしていたけど、まさか彩音ちゃんが恋なんて意外だわ…… 私たち全員、恋愛とは無縁だったけど、最初が彩音さんとは意外だわ……」


「あやねんはにーちゃんのどこに惚れたの?? 教えて〜!!」


 3人は彩音の前に迫り、質問をしてきた。


「待って、私はそういうんじゃ……」


「嘘つきな あやねんには〜こうだ!!」


 緋奈は彩音の後ろから抱きついて、脇をくすぐった。


「ひゃっ…… あははっ待って、ちゃんと話すから、やめて〜」


 彩音がそういうと、緋奈はくすぐるのをやめた。

 

「えっと…… どこから話せばいいのかな??」


「とりあえず…… キスはした……??」


 キスをしたかという有栖の言葉を聞いて瞬間、彩音は全力で首を振った。


「あれは、違う…… 本番はまだ早いよ……」


 彩音が有栖からの質問に何も言えず、顔を赤くして手で覆い隠していると3人はニヤニヤとした表情で彩音を見た。


「へえ〜 そうなんだ〜 ねえねえ!! にーちゃんと口同士でチュッチュするの??」


「バカ!!緋奈、そういうのはタイミングっていうのがあるじゃない…… 本人たちの!!」


「でもさ〜 気になるじゃん〜!!」


「……ダメだよ」


 彩音が下を向いて恥ずかしそうな表情になった。


「どういう…… こと……??」


「だって、できちゃうもん…… 赤ちゃん……」


 彩音が顔を真っ赤にしながらいうと、3人は顔を合わせた。

 

 その場の空気が凍った。

 暖かい空気で包まれる大浴場だが、この数秒だけは南極大陸にある氷の中にいるような寒さに感じた。


「「「……え??」」」


「……え??」


 3人が何を言っているのかわからない表情をしていると、彩音が顔を真っ赤にしながら口を開いた。

 

「お母さんが昔言ってたもん…… 口と口を合わせキスをしたら、赤ちゃんができるって…… おでことかなら大丈夫だみたいだけど……」

 

 3人は何を言っているかわからず、キョトンとしていた。

 そう言えば、保険の時間はまだやっていない。


 授業日程的に中学1年の後期なので、まだ夏の始まっていない今の時期はある程度それ系の知識がないと知らない。


  (え〜 あやねん知らないの??)

 

 (真っ白……)


 (まさかここまで真っ白だとは…… 逆に心配だわ……)


「ま、まあ そうだよね!! ごめんね〜あやねん、この話はおしまい!!」


 緋奈はそう言って、話を切り替えようとした。

 そう言えば自分が前に言った、悠也の好感度上げの裏技(11話参照)を冗談で言ったが、実は試したのかもしれないと思って顔が真っ青になった。


「どうしたの緋奈??」


「のぼせた……??」


 美佳と有栖の2人は顔色の悪い緋奈を見て心配した。


「いっ、いいや…… 別に、なんでもない〜 す、少しのぼせたかな〜」


((なんのことかわからないけど、嘘隠すの下手……))


 美佳と有栖は緋奈が何かしたことを隠してるのを瞬時に理解した。


「うん、というか私…… 変じゃないかな……??  お兄ちゃんに恋するなんて……」


「いいんじゃない?? 別に血は繋がってないんだし、私たちは応援するわ」


「お兄さん…… 優しいからね…… 応援する……」


「あやねんが恋するなんて今までなかったからね!! にーちゃんを幸せにしてよ!!」


 彩音がそういうと、3人は変だと言わずに応援すると言った。


「でも、彩音ちゃん なるべく早く行動したほうがいいわよ」


「どうして??」


 彩音が不思議そうな表情をした。


「どーしても何も可憐さんや雪奈さん、2人とも美人だわ…… 急がないとお兄さんを取られるかもしれないじゃない」


「確かに…… 恋愛ゲームによくある展開…… でも彩音ちゃんは可愛い……」


「あやねんは魅力的だから、絶対にーちゃんをメロメロにできると思うよ!! がんばれ〜!!」


「も、もう…… からかわないでよ!!」


 


※後書き

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