第69話 俺は…… 俺の力で勝ちたい!!
俺は弾丸を受けた瞬間、逆方向に走ってレインと再び距離をとった。
「おいおい、逃げんじゃねぇよ」
「……」
レインは俺が逃げた隙にリロードをして、再び背後から発砲をした。
(……こっちの動きは全て読まれている感じか)
察するにレインはおそらく、俺がタイマンを仕掛けてくるだろうと最初から読んでいたんだろう。
俺との実力の差を埋めるために、YUUというプレイヤーのみを倒す立ち回りを研究。
脳筋タイプと思わせといて、実は緻密に計算している頭脳タイプ。
全てが俺を欺くための行動で、俺は完全に踊らされていた。
(さて、どうする……??)
俺の動きを全て読んでいるんだとすれば、このままジリ貧で負けてしまう。
(彩音や可憐なら、こういう状況でも……)
不意にあの2人のことを考えた。
こんな絶望的状況でも、あの2人ならなんとか勝つと思う。
(……情けないな)
ラリーたち世界大会組には及ばずとも、アジアじゃ俺が最強だと思い込んでいた、あの時の自信は今の俺にはない。
彩音、可憐、グランディネア、あの3人に及ばないと知ってから自分がソロ最強と言われているにも関わらず、心のどこかで弱気になっている。
『いつまで私に負けてるの?? お兄ちゃん……』
「……ッ」
俺が弾丸を避けて逃げ回っていると、不意に彩音との決勝で彩音に言われたことを思い出した。
あの時もそうだった、俺は弱気になって完全に押されていた。
(……そうだよな、このままじゃだめだ)
俺は一旦、情報を整理することにした。
俺の手札のキャラクターコントロール、グレネードや小道具を使った奇襲、中距離の射撃全てが対策されているとなると、別のアクションをしないとならない。
彩音の全てを計算した未来視のような、俺が全くできない動きをすることでレインを欺くことができれば勝てる。
(でも…… そんなの嫌だ…… 俺は、俺の力で勝ちたい……!!)
その時俺の脳内で何か積み上げられてきた本のようなものが、崩れたような気がした。
俺はその脳内空間で、必死に元の形に直そうとする。
(……これは、俺が今までの戦いの中で積み重ねた戦い方の本か?? だとすれば……)
俺はその世界で、違う形に置き換えてみた。
今までの縦積みから、ピラミッド型、円型に本を置いてみる。
不思議なことに、今まで考えもしなかった戦い方が無数に浮かんできた。
(癖というものは、意識しない限り直ることない…… なら俺は自分の常識を崩して、新しい自分を作り出す)
俺は逃げた状態から、振り向いてレインに向かって走り出した。
「やっとその気になったか、チキン野郎」
「……俺が甘かった、これじゃあ世界なんて取れない」
「ああそうだ お前は俺にぶっ倒されて、終わるんだからな!!」
レインは俺に向かって発砲してきた。
ビルの裏路地で、小さな壁やアバターと同じくらいの大きさのゴミ箱やビルの外壁があり、キャラクターコントロールをするにはもってこいの立地だ。
俺は一瞬、レインの近くにあるゴミ箱へ視線を向けた。
「……いくぞ」
俺は弾丸を避けながら、レインに接近した。
ゴミ箱まで数メートル、俺はスライディングをして弾丸を避けてゴミ箱に向かった。
「バカめ、そんなのは読めてるんだよ」
レインはゴミ箱の少し前にエイムを置いて発砲した。
「なに、いない……」
俺はゴミ箱裏からすぐに移動するのではなく、少し隠れることでタイミングをずらした。
「だよな、YUUならそうする!!」
俺はレインのリロードタイミングで接近して、次は壁に向けて視線を向けた。
「ちっ…… 今度こそ……」
俺はレインに向かって、再び走り出した。
レインまでの距離は数メートル。
「いくぞおらあ!!」
レインは俺に向けてライトマシンガンを発砲してきた。
俺はまっすぐ、ただひたすらに真っ直ぐレインに向けて走った。
レインの放つ弾丸は、俺の横や頭上を通り過ぎた。
「なっ なんだと!!」
「なんか考えんの面倒くさくなってさ…… ははっ まさか、俺がキャラコンすると思って構えていた??」
まさかレインも、避けることすらせずに真正面から突っ込んでくるとは思わなくて反応が遅れた。
俺はその隙を逃さず、レインのリロードタイミングでレインの腕目掛けて発砲した。
俺のサブマシンガンの弾丸はレインの右手に全弾当たって、距離減衰がギリギリ入らない距離で大ダメージを与えて、レインの右腕は消滅した。
「ぐはっ…… この野郎……」
レインは反撃のために片腕でライトマシンガンを持ち上げようとしていたが、俺はすでにレインの前にいた。
「おせぇよ」
俺は一気に距離を詰めて、レインの頭に銃口を突きつけた。
「お前のおかげで、俺はまた1歩成長できた…… ありがとう……」
「……クソが、やっぱりお前にはかなわねぇか……」
俺はレインに発砲した。
YOU WINこの文字が俺の画面に表示された。
「……ふう、疲れた……」
正直負けるんじゃないかと思ったが、無事に勝利することができた。
俺は疲れを感じ、ゲーミングチェアを倒して横になった。
※後書き
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