第64話 不可抗力だ!!

「これでよし…… んじゃあ、投稿するぞ」


 俺は確認したのち、SNSに仲間募集の投稿をした。


「確認だけど、明日の昼に締切で夜に面接で大丈夫だよね??」


「うん〜」


「私は大丈夫です!!」


 俺たちが話をしていると、可憐の病室のドアが開いて看護師の斉藤先生が病室に入ってきた。


「こんにちはお久しぶりです悠也さん、それにそちらの方は……」


「可憐ちゃんの友達の雪奈っていいます!!」


「そうですか、初めまして看護師をしている斉藤です よろしくお願いします」


 斉藤先生と雪奈はお互いお辞儀をした。


「そういえば、もうこんな時間か〜」


「はい、可憐さん 今日の散歩の時間です」


「散歩??」


「うん、1日中寝たきりだから少しでも動かないと筋肉が衰えちゃうからね〜」


 可憐はそう言って、体を起こした。

 

 俺たちが話していると、斉藤先生の胸元についていたマイクのような機械から音がなった。

 

「あ、すみません…… ちょっと他の患者さんの呼び出しがあったので、席外します」


 斉藤先生はそう言って、小走りで病室を出た。


「ん〜 まあ別に歩くだけだし、悠也と雪奈ちゃん 手伝ってもらってもいい〜??」


「ああ、いいよ」


「任せてください!!」


 俺は可憐の元に行って、可憐に肩を貸した。

 

 可憐の肩を支えると、女の子特有の柔軟剤のような匂いがした。


「どうしたの〜??」


「いや…… なんでもない」


「もしかして、ボクの匂いでも嗅いだ?? 変態〜」


「ち、違うわ!!」


「ボクはこう見えて潔癖症だからね〜 お風呂は毎日入ってるよ〜」


「なるほどね、だからか…… って痛い痛い……」


 俺が納得すると、可憐は俺の右頬を引っ張った。


「やっぱり嗅いだんだ…… 変態だね〜」


「いや、これは不可抗力だ!!」


 俺が可憐に反論していると、雪奈はこの光景を見て笑っていた。


「やっぱり、お2人って仲良いいんですね!!」


「まあね〜」


「いてて…… まあそれなりには」


 俺は自分の頬を確認すると真っ赤に腫れていた。


「大丈夫ですか??」

 

 雪奈は俺の近くに来て、ペットボトルを渡した。


「大丈夫、ありがと」

 

 俺は冷えた水の入ったペットボトルを当てて、冷やしながら雪奈に感謝を伝えた。


「悠也が変なことするから悪いんだよ〜」


「ごめんって!! まあ、この辺にして…… そろそろ行くぞ」


「うん お願い〜」


 俺は可憐を補助して、可憐はベッドから立ち上がって病室のスリッパを履いた。


「んじゃ、行こっか〜」


「うん」


「はい!!」


 可憐は点滴を刺しながら、普通に歩き始めた。


「普通に歩けるんだな」


「まあね〜 足腰は人並みに丈夫だけと、走るとかは多分無理かも……」


「大丈夫ですよ!! いざって時は悠也君がおんぶしてくれます!!」


「変態におんぶされるのは、ちょっと怖いかも〜」


「あのな!! だからさっきのは、不可抗力だって!!」


「はいはい、まあそういうことにしとくよ〜」


 俺たちはこんな他愛の無い会話をしながら、病院の中や外にある公園のような場所などを歩き回った。




 



 歩き回って気がつくと4時55分になっていて、病院の面会終了時間が近づいていた。



「んじゃあ、この辺で俺たちは帰るぞ」


「お邪魔しました!!」


「うん、今日はありがとうね〜」


 俺と雪奈は可憐に手を振って、病室を出た。


「可憐ちゃん、本当に優しくて面白い方で良かったです!!」


「そうか、誘って良かった」


「はい!! んじゃあ、これから世界の頂点を目指して頑張りましょう!!」


「だな」


 俺と雪奈がエレベーターの近くで話していると、斉藤先生がエレベーターの前にいた。


「今日はわざわざ、ありがとうございます」

 

「いえ、感謝されることじゃないですよ 大切な仲間なんで」


「はい!!」


 俺と雪奈が斉藤先生にそう言うと、斉藤先生は嬉しそうな表情をした。


「そうですか 可憐さんは病院であまり笑うことがないんですけど、皆さんといる時は常に楽しそうで…… 本当に皆さん、ありがとうございます」


 斉藤先生は俺と雪奈に頭を下げた。


「いえいえ、俺たちも可憐にはいつも助けて貰っていて…… それに何よりも一緒にいて楽しいので、頭を下げないでください」


「そうです!! 悠也君が時々変なことするんですけど…… 楽しいです!!」


「変なこと……??」


 斉藤先生はドン引きしたような顔で、俺の事を見た。


「あーあー 違います、違います!! こいつが適当なこと言っただけです、本当に誤解ですから!! お前も余計なこと言うなって!!」


「冗談ですよ〜」


 俺が雪奈と話していると、斉藤先生はふふっと笑った。


「どうしました??」


「いえ…… なんか、あなた達と可憐さんが仲良くなれて良かったなと思いまして」


「俺たちも可憐と仲良くなれて本当に良かったと思っていますよ」


「可憐ちゃんは大切な友達です!!」


 俺と雪奈が返事をすると、病院の面会終了時刻の放送が流れた。


「んじゃあ、俺たちはこの辺で失礼します 今日はありがとうございました」


「また来ますね!!」


「いつでも来てください お待ちしてます」


 俺たちはエレベーターで1階のボタンを押して、エレベーターに乗り込んだ。

 



※後書き

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