第47話 迷子の少女

 俺たちは雑談をしながら、大型ショッピングモールへの道を歩くと5分程で到着した。


「ここか…… やっぱり土日だと混んでるな……」


 今日は土曜日、家族で来ている人やデートをしているカップルなど、たくさんの人で混んでいた。


「お兄ちゃんはどこか行きたいお店とかある??」


「特に決めてなかったな…… 先に彩音の行きたいところでいいよ」


「んじゃあ、服屋さん行こ〜」


「了解」


 俺と彩音はエスカレーターに乗って2階に上がり、服屋に入った。


 服屋に入ると、夏服特集ようなコーナーがあって彩音は展示してあるマネキンをじっくりと見ていた。


「これが欲しいのか??」


「いいなって思ったんだけど……」


 俺がマネキンの横にある値札を見ると、ガーゼブラウスとスカートのセットで1万5000円と中々いい値段だった。

 

 彩音が諦めた表情を見て、俺はマネキンの近くにあったセットの購入券を手に取った。


「これが気に入ったんだろ、買ってあげるよ」


「でも…… お兄ちゃんの欲しいものがあったら、買えなくなっちゃうよ??」


「いや、俺は彩音と買い物に行けるだけで幸せだから欲しい物はないよ それに俺は彩音にプレゼントしたこと無かったからな…… 今まで貰ったお礼をさせてくれ……」


 俺は彩音から誕生日プレゼントを何度も貰っていたが、彩音の欲しいものが分からず、お返しをしたことがなかったのでいい機会だと思った。


 俺が彩音に買ってあげることを伝えると、彩音は嬉しそうな表情をした。


「ほんとうにいいの??」


「ああ、男に二言は無い」


「やった〜!! お兄ちゃん、ありがとう!!」


 彩音は笑顔で俺の手をギュッと握って感謝の言葉を言った。


「まあ彩音には感謝してもしきれないからな、とりあえずサイズが大丈夫か、確認しないとな」


「うん!!」


 俺たちは試着コーナーでサイズが合っているかを確認しに行った。


 彩音は個室の中で、展示されていた服を試着して俺に見せてくれた。


「……ど、どうかな」


「これは……」


 (は??まーじで可愛いんだが…… だが、ここは冷静に兄として適切な意見を言わなきゃな……)


「すごく似合ってる、さすがは俺の妹だ」


 俺は心の中のオタクの部分を押し殺して、彩音に感想を言った。


「そうかな…… えへへ、そう言われると照れる……」


 彩音は俺の感想を聞いて、少し顔が赤くなったように見えた。

 照れている彩音の顔が可愛くて、俺も顔が赤くなってしましたので後ろを向いた。

 

「どうしたの??お兄ちゃん」


「い、いや なんでもない…… サイズが大丈夫なら次のお店に行くぞ」


 俺は強引に話を切り替えた。


「わかった〜 着替えるからちょっとまってて!!」


 彩音はそう言って、試着室のカーテンを閉めた。













 彩音が着替えた後、俺達は服を買ってお店を出た。


「お兄ちゃん、ありがと!!」


「喜んで貰えてよかったよ、次はどこのお店に行く??」


「この間出来たアイスの専門店に行ってみたいな〜」


「了解、そのお店はどこにあるの??」


「んーとね、確かここを少し歩いた先にあるはず」


 俺たちは少し歩くと、そこにはアイスの専門店があった。


 チョコレートやバニラ、キャラメル、ストロベリーなど様々な種類のアイスがメニュー表に写真付きで載っていた。


「ご注文は何にしますか??」


 男性の店員さんがメニュー表を俺と彩音に見せてくれた。


「彩音は何にする??」


「んーとね、キャラメルとストロベリーがいい!!」


「この2つ美味しそうだな…… んじゃあ俺もそれにする すみません、ストロベリーとキャラメルのダブルを2つください」


「ストロベリーとキャラメルを2つですね、お会計は800円になります」


 俺は大会の商品券を渡して、レシートと商品を受け取った。


「んじゃあ、そこの椅子とテーブルで食べようか」


「うん!!」


 俺と彩音はアイス屋の前にある食べれるスペースに行って椅子に座った。


「いただきます、ん〜 美味しい」


 彩音はストロベリーのアイスを幸せそうに食べていた。

 俺もアイスを食べようと、スプーンでストロベリーのアイスをすくうと、俺のズボンを誰かが引っ張った。


「ん??」


 俺が椅子の下を見ると、3歳くらいの黒髪ツインテールの少女がそこにいた。


「アイス……」


「え……」


 少女は俺のアイスを見て、欲しそうな視線を俺に送った。


「お兄ちゃん、この子は??」


「わかんない、なんかアイスって……」


「ん〜 多分、アイスが食べたいんじゃないかな?? 後で私がお兄ちゃんの分払うから、そのアイスをその子にあげて、私のはもう口付けちゃったからさ〜」


「お、おう…… まあ、とりあえず座って食べな」


 俺がそういうと、少女は俺と彩音の間にある椅子に座って俺の買ったアイスを食べ始めた。


 少女はストロベリーのアイスを食べて、笑顔になった。


「ありがとう、おじさん」


「ふっ…… おじさんって……」


 彩音は俺がおじさんと言われたのを見て、笑っていた。


「一応俺は高校1年生、まだピチピチの青年なんだけど……」


「おじさん、キャラメルも食べていい??」


 少女は俺の話なんか聞かずに、ストロベリーのアイスを間食してキャラメルも食べていいかと聞いた。


「食べてもいいよ……」


「やった〜 おじさん大好き〜」


「もうおじさんでいいよ……」


 少女の自由すぎる雰囲気に流されて、もうどうでも良くなった。

 


 





※後書き

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