眠れないから散歩する~ドラゴンを連れた鍵師と史上最弱なパーティーの仲間たちKAC版~

野林緑里

第1話

 眠れない。


 シェリアンナは何度も目を閉じて寝ようとするも、目がさえきって眠くならないのだり


 どうしようか。


 明日は首都ステラにある森へ行かないといけないのにまったく眠れない。


「うーん。散歩でもするか」


 シェリアンナは寝床から起き上がると寝間着から普段着に着替える。


 部屋をでると、家族を起こさないようにこっそりと家をでる。


 外は真っ暗だ。


 どの家も寝静まっているから家の電灯もついていない。


 それもそうだろう。


 いまは深夜だ。



 かろうじて空にぽっかりと浮かぶ二つの月だけが辺りを照らしているだけだった。


「少し冷えるわね」


 シェリアンナは上着を羽織るととくに目的もなく歩いていく。



 住宅地を抜けるとしばらく田んぼ道が続いていく。


「あら?」


 しばらく畦道を歩いていると、向こうにポツンとある家に明かりが灯っていることに気づいた。



「あそこはロックウェルさんの家よね。こんな時間まで起きているのかしら?」


 シェリアンナは明かりのついた家に向かうことにした。


 家に近づくと窓が開いていることに気づく。


 シェリアンナはその窓からこっそりとなかを覗きこむとロックウェルがなにやら作業をしている最中だった。


「こんにちわ」


 シェリアンナが思わず話しかけると、ロックウェルは手を止めて振り向く。


 普段は穏やかなロックウェルも突然深夜の訪問者がやってきたらびっくりするだろう。目を丸くしたロックウェルだったが、すぐにいつもの穏やかな笑顔を浮かべる。


「やあ。シェリアンナ。また深夜に散歩かい」


「またってなによ。べつにいつも深夜にさまよっているわけじゃないわよ」


 シェリアンナはむっとする。


「じゃあ、なにをしているんだい? 」


「眠れないから外を散歩していたのよ。それよりもロックウェルさんこそなにしているの? こんな夜遅く」


「実は明日までに鍵を仕上げないといけないんだよ」


「鍵? どうして?」


「リハインドさんが明日から首都ステラにいくからしばらく留守にするんだよ。だから、用心のために鍵をかけたいらしい」


「首都ステラ!? 私も明日いく予定なの」


「きみもか。もしかしてダッサドリの捕獲?」


「そうよ。最近うちで飼ってたダッサドリが死んじゃって新しく手に入れないといけないのよ」


「そうか。もうすぐ田植えの時期だから急がないといけないんだね。あっ首都ステラにいくなら」



 ロックウェルは突然立ち上がると、戸棚にある引き出しから手紙を取り出すとシェリアンナに差し出す。


「ステラに行くついでに息子へ渡してくれないか?」


「キイ? 別に構わないわよ」


 シェリアンナは手紙を受けとるとマジマジとみた。



「ありがとう。明日郵便に出すつもりだったんだけど、シェリアンナがいくならちょうどよかったよ」



「確かにそうよね。わかったわ。ちゃんとキイに渡すわ」


「もうひとつ」


 ロックウェルがシェリアンナの目の前で手を広げるとなにやら呪文を唱える。


 そして、手を離すとニッコリと微笑んだ。


「なにしたの?」


「ゆっくり眠れるように魔法をかけたのさ」


「鍵魔法にそんなことできるの?」


「まあ、ただの鍵魔法の応用だ。さあ、帰りなさい。帰ったらすぐに眠れるはずだよ」


 本当にそうかしらとシェリアンナは首をかしげたが、ロックウェルの穏やかな表情をみていると眠れるきがした。



「わかったわ。ロックウェルさんも無理しないで休むんだよ」


「ああわかった」


 シェリアンナはロックウェルに手をふるともと来た道を戻ることにした。



 それから家に戻った頃にはすっかり眠気がさしてきた。


 あくびをしながら寝床についたシャリアンナはすぐさま夢の中へと入っていったのであった。












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眠れないから散歩する~ドラゴンを連れた鍵師と史上最弱なパーティーの仲間たちKAC版~ 野林緑里 @gswolf0718

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