深夜は道連れチックにお散歩
奈名瀬
深夜は道連れチックにお散歩
友人から「怖いのが好きな癖に変なの」と笑われたことがあるけれど……毎晩、眠る時は蛍光灯の小さな明かりを点けたまま就寝すると決めている。
そういうのが好きで、信じているからこそ真っ暗な中で眠るのは怖いのだ。
だから、寝付けない夜にふと散歩がしたくなったとしても、まず窓から空を見る。
新月や満月といった、いかにもな月が顔を見せる夜道にうっかり外出しないためだ。
「…………」
カーテン越しに窓から見上げた月は卵のような楕円形をしていた。
三日月や弦月と比べても幽霊や妖怪が好みそうな風情はない。
『これなら』と思いつつ、上着へ手を伸ばす。
しかし――、
「……あっ」
――袖に腕を通した所で、彼の顔が浮かんだ。
以前、深夜に一人で出歩くことがあると話した時、ひどく心配そうな顔をさせてしまったっけ……。
「……うーん」
両親に咎められた時は何も思わなかったけれど、何故か今は胸がきゅっと締め付けられるようだった。
いや、自分から話さなければバレないか……。
そんな考えも脳裏を過るが、どうにも気乗りしない。
気付いた時には、上着についたファスナーを上げたり下げたりしながら部屋の中でウロウロしていた。
◆
昼間と違って車が少ないせいか、横断歩道の信号機はどこか眠たそうに見えた。
ちょうど、隣であくびをする妹と同じくらいに……。
「……ねぇ、あたしって何で起こされたの?」
妹は夢うつつといった様子で、私にもたれかかりながら質問をしてくる。
でも――、
「話したでしょ? 一人だと友達に心配されるからって」
「……それってさ、ちょくちょく話に出てくる男友達?」
――友達というのが彼のことだと気付くなり、目を見開いてしまった。
上手い弁解が思いつかず沈黙を返す。
すると妹は、それを肯定と受け取ったようだ。
「今度から、あたしじゃなくてその彼氏に付き添ってもらいなね」
「かっ――ばか! まだそういうのじゃないのっ!」
深夜は道連れチックにお散歩 奈名瀬 @nanase-tomoya
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