『引きこもりも歩けば元恋人にあたる』

「犬も歩けば棒に当たる」昔の賢人さかびとかく語りき。

 しかし、俺はえてこう言おう、

」と。


                     ◆


 今回も間違えるか?

 いいや。間違えない。

 変則へんそくシフト上がりの瑠璃るりと深夜の緑地公園りょくちこうえんで待ち合わせ。


                     ◆


「…世話になった。はいコレお礼」彼女は菓子折かしおりをしめし。

「要らん」大した事はしてない。お礼を言われる筋合すじあいもない。

「こういうのは黙って受取りなさいよ」

「高い菓子なら自分で食え」で。

「…んじゃあ」折れるか?瑠璃。「そこのベンチで食べようよ」

「…付き合えってか?」

「良いでしょ?」有無を言わせないあたりが彼女で。

「仕方ない」ベンチに座りながら言う。


 菓子折りの中身はチョコレートのかかったドライフルーツであり。

 

「セレクトの趣味が悪い」なじる俺。当然だろうが。

「これしか美味しいの知らない」嘘こけ。

「まあ…いいか」折れた俺はチョコレートに包まれたフルーツ―林檎リンゴ―をかじる。コンポートにされた林檎とチョコの組み合わせ。美味くない訳がない。

「美味しいでしょ」

「流石かの店」神戸あたりのパティスリーの名物だったはず。

「選んだ私を褒めなさい」

「アンタの好みじゃん」

「…センスが良いのも一種の才能」得意げに言う彼女。

「自分で言うかよ、このめ」なじりつつも2つ目に手を伸ばす俺がおり。

自負心じふしん自己尊重じこそんちょう」俺の目を見えながら言う彼女。

「俺の事だな?」

「じゃなきゃ誰なのよ。この場合」

「ですよねえ」


「で?自己尊重ができなくなる病気ですって?」矛先ほこさきが別のポイントに向きつつあり。

「薬んで療養中」

「無様ね」

「改めて言われても傷つかん」

貴方あなた」と一息に言い切る瑠璃。

「今なら分かる。悪いことをしていた。だが。」俺が言う台詞セリフか?

「…病気になって素直にならないでよ」しおれて言う瑠璃。

」事実。病気になってから心も体も丸くなった。

「遅いよ」

「もう終わった事だ」

「そっか。じゃあ…残りは貴方あなたにあげるから。私は帰る」

「送ってはやらん。気をつけて帰れよな」

「…彼氏かれし呼ぶから良いよ」

「お幸せに」


 こうして。

 俺はもと恋人に過去の自分をなじられ。

 

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