【KAC20234】―①『夜に歩けば他人に当たる』
小田舵木
『引きこもりも歩けば酔っ払いにあたる』
「犬も歩けば棒に当たる」昔の
しかし、俺は
「引きこもりも歩けば酔っ払いにあたる」と。
◆
事の起こりは。
発売したばかりのゲームを徹夜プレイし、朝に疲れはてて
俺の家は
公園を突っ切れば、コンビニで。
とりあえず…おにぎり欲しいよなあ、とスエット姿で歩いていたのだが―
「水…」と
「ああ。警察
「…スルーかあ、この野郎」情けなく道路に
「…姉貴。家まで帰るまでが飲み会だぞ」と俺は寝
「…
「襲われるぞ」としゃがんで俺が言えば。
「回収せえ」とねだる姉貴。
「歩けカス」と俺は自分を棚に上げて
「歩けてたらこうなってねーっつの」と姉は返事。
「…今からコンビニいくから待ってろ」と俺は姉を助け起こし、肩を貸し、通路の脇のベンチに乗っける。いつの間にか重くなってやがら。
「…私を放置するのね!
「振られたのね?」ご
「…こっぴどく」と半泣きの姉貴。
「…
「
「へいへい…」
◆
コンビニから帰れば。ベンチの姉は溶けて一体になりつつあり。
「馬鹿
「…後5分寝かせて下さい」
「ここは職場でも家でもねえ」
「…愚弟じゃんよ。つまり?」目を開けつつ言う姉。
「外だ。パンツまる見せで寝てたぞアンタ」と俺が言えば。
「今日のは見られて良いやつだから」とか言い出し。
「隆に今日振られたのか?」と俺は水を差し出しながら問い。
「…やる気あったのに」と水を口に含みつつ言う姉。
「そういう欲
「…そこは否定せん」
「…今は肝ドリ飲んどけ」と俺は瓶を差し出す。
「アンタこういうの何処で覚えた?」と受取りながら問われ。
「あのね、一応社会人やってたから」俺は就職はしていたのだ。つい1年前まで。
「…そうだった、ね」と伏し目がちに受ける姉。
「別に気ぃ使わんで良いぞ」と俺が言えば。
「だってさあ」と姉は言うが。
「俺が悪いの」オーバーワークが原因で体とメンタルをやってしまって。今は療養中だったりする。
「…
「姉貴らしくない」と俺は思う。この人は俺以上に突っ走る
「私だってさ…家ではああ言うしかないじゃんよ?親の手前」
「別に気にすることないだろ?」オヤジもオカンも同情的だ。無理しやがって、と。
「いやあ?お父さんもお母さんもアンタに気を使ってああ言ってるだけでさ」
「…そんなもん?」と俺が問えば。
「そんなもん。やっぱ親としてはバリバリやって欲しいのよ」
「…で?姉貴が無理してその役をやってると?」家族という劇団の中での
「そのつもりはあるな」とフンと鼻息を吐きながら言う姉。
「苦労させるな」と俺は何処か他人事のように言い。
「全くだ。で。彼氏に泣きついてたら―『重い』だとさ」
「…『ウザい』の間違いではなく?」
「私だって女だっつう」むくれて言う姉貴。
「俺にとっては頭の上がらない兄貴みたいなもんだけど」昔から
「お前なあ。今から脱いでやろうか?」スーツのジャケットに手をかけるな。
「
「いやあ。今日は拒否られるなあ」
「…姉貴」なんとも言い難い。どう慰めるべきか。と言うか、俺が慰めるべきなのか?
「…安い慰めしない
「しないほうがマシだろ?そこは
「我が弟よお!!」と抱きついて来る姉。
「酒臭えよ!!どんだけ飲んだんだよ?」
「んあー?ワインのボトル開けて…後ポン酒も一本開けたかな。後ビールをジョッキで何杯か…」ウチの家系は酒豪だらけである。まあ、酔うことは酔うがダウンだけは絶対しない。意地で家に帰りたがる。
「無茶しよる」
「振られた日ぐらい」
「へいへい…んじゃ帰ろう」
「肩貸して」
こうして。
夜の散歩は姉の回収で潰れた。
そして姉と少し仲直りをした。
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