第25話 工藤さんは始めが肝心と思う
話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。
宜しくお願いします。
―――――
俺、坂口悠。もうすぐシステムが完成する。警視総監とサイバーセキュリティ対策本部に説明した俺の提案はターゲットを絞って実証試験をするという事になった。
NSCへ展開は、もっと十分な試験結果を持って実績を示してからと説明し、時期尚早と俺が却下した。
そんな事をされては俺の計画が実行出来なくなってしまう可能性もある。別の意味でもコンテンジェンシープランは必要そうだ。もっとも俺の作戦が完了すればこのシステムは俺にとって不要だ。
昔ながらのトロイの木馬を忍ばしておくのも良いかもしれない。作戦が終わったら時限発動のゼロサプレスで何も無くなってしまうのはそれなりに面白い。
真理愛とは、システム構築がされている間に何回かデートした。最近キスもしている。そろそろ最終段階に入っても良さそうだ。
しかし、最近の真理愛との仲の良さに絵里が毎日の様に文句を言って来る。そもそもあいつなんで俺に執着しているんだ。俺に構う暇が有れば俺なんかより素敵な彼氏でも探せばいいのに。年中告白受けているんだから。
普段、俺達は図書室で落ち合った後、予鈴が鳴るまで一緒に居て、その後はファミレスか喫茶店に行く事にしている。
帰りは俺が彼女の家の最寄り駅まで送った。家までは送らない。万一俺の事がばれるのを防ぐためだ。今は駅前の喫茶店にいる。
「真理愛、いつも放課後ワンパターンだから、今日は俺の部屋に来る?」
「えっ?」
「そろそろ、俺の部屋に来て話をしても良いかなと思って」
彼の部屋に誘われるのは嬉しいけど、それってもしかして。でも今日は綺麗な下着付けて無いし。
「どうしたの真理愛。俺の部屋に行くの嫌かな?」
「そんな事ない。でも今日はちょっと。明日じゃ駄目かな?」
「明日は土曜日だからお昼一緒に食べて部屋に行こうか」
「うん、それでいい」
彼とは何回かデートもしてキスもしている。勿論手も繋いで名前呼び。私を部屋に誘ってくれるって事は、もしかして私もいよいよ。きゃーっ、どうしよう。
「あの、真理愛、顔赤いですけど」
「えっ、いや、あっ、まあ」
「どうしたの?」
「ううん、何でもない。じゃあ今日は帰ろうか」
「うん、駅まで送って行く」
翌日の放課後、今日は学食で食べずに駅の傍のファミレスで簡単に食事をしてから俺の部屋に真理愛を連れて来た。
「お邪魔しまーす」
「誰もいないよ」
「まあ、礼儀という事で」
彼のマンションの玄関に入った。はっきり言って大きい。アパート一室1DK位を考えていたけど、彼の住んでいる部屋は玄関から廊下もあるオープンキッチン型2LDK。充分に家族が住める大きさだ。
「わーっ、広い。ここに一人で住んでいるの?」
「ああ」
「寂しくない?」
「慣れたよ。もう二年以上だからね。あっ、あのドアは開けないでね」
あの部屋の中には色々な機材が置いてある。質問されたら面倒だ。
「ふふっ、良く言う女の子に見せられない物がぎっしりとか」
「さ、さあ、どうかな」
一応そういう事にしておこう。
「分かったわ。開けないから」
「今、紅茶を淹れるからちょっと待って」
「うん、ありがとう」
彼が紅茶を淹れてくれている間に私はリビング側にあるローテーブルのソファに座って待っていた。大きなテレビが目の前にある。窓は二重カーテン。それ以外これといった物は置いていない。結構シンプルだ。
「出来たよ」
彼が私の横に並ぶように座った。
「ありがとう」
少し飲むと
「結構美味しい」
「そう?ティバッグから淹れたから味が安定しているんだよ」
「でもティバッグも上手く淹れないと美味しくないよ。悠は何をしても上手だね」
「そうかな。あの、ゲームとか全然ないから映画でも見る?」
「ううん、いらない」
「そう」
彼は何も言わずに私の顔を見て、並んで座っていた隙間を埋めた。彼の顔が近づいて来た。唇が合った。紅茶の匂いがする。彼が私を抱き絞めようとした時、
「ちょ、ちょっと待って」
「えっ?」
「あの、出来ればシャワー浴びたい」
「そういう事か。いいよ。こっち」
彼の案内で洗面所とお風呂場に行った。新しいタオルも用意してくれた。
「悠少し待って」
「うん」
私は初めてをあげるのに、体に汗の匂いが付いているのは、自分自身が嫌な気がした。初めてをあげるなら綺麗な体でいたい。
彼女がシャワーを浴びている。今日を過ぎれば、彼女の心は完全に掴めるだろう。これでいい。
勿論俺も真理愛の事は好きだ。その気持ちで彼女を抱く。それは彼女に対する礼儀であり俺の心情だ。
彼女が出て来た。
「君の部屋に行きたい」
「うん」
真理愛の体は白く透き通るような肌だ。見た目より胸も大きく、しっかりと腰も括れている。俺が少しだけ触っても感じている。優しくしてあげよう。
……………………。
「っ!」
「大丈夫?」
「うん、来て」
初めてを私の大好きな人にあげた。途中随分大きな声を出してしまったけど、初めてだもの良いんだよね。あっ、目が覚めた。
「あっ、寝ちゃった」
「ふふっ、寝顔可愛いよ」
「そ、そう。自分の寝顔は見れないから」
彼がまた私の体を触って来た。私はそれに委ねた。さっきとは違った。これが…。
「悠、明日も会える」
「もちろんだよ。また此処に来る?」
「うん」
真理愛とは二日続けてした。もう彼女の心は掴んだだろう。もうすぐシステムも出来上がる。
俺の想像が外れている事を思いたい反面、当たっていて欲しいという気持ちもあった。
いずれにしろ、もうすぐ分かる。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
次回以降をお楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます