第24話 工藤さんとデート
全体的に工藤真理愛視点です。
話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。
宜しくお願いします。
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私、工藤真理愛。最近坂口君が私にとても優しい。あの公園の時、彼が言った友達プラスアルファ位になりたいという言葉を信じていい気がしている。
もちろん友坂さんに対しても優しいけど、それは中学からの友達としての接し方。でも私にはプラスアルファの部分が明らかにあるのを感じる。嬉しい。
今日も彼と会う。一緒に映画を見て昼食を摂って…ふふっ、それからどうするのかな彼。
あっ、もう改札で待っている。ネイビーブルーのパンツに真っ白なシャツそれにパンツと同じカラーのジャケットだ。こうしてみると結構かっこいい。皆は目が怖いというけど、日常的に鋭い目つきだというだけだ。慣れればかっこよく見える。前髪が垂れている様な男じゃない。すっきりとした髪型だ。
最近、彼を見ると少し胸が熱くなる。あっ、私に気付いてくれた。
「坂口君、待ったぁ?」
「いや、まだ待ち合わせ時間前だよ」
「ふふっ、行こうか。今日はどんな映画見るの?」
「一応決めて有るけど工藤さんの見たい映画に変更しても構わないよ」
「そうかあ、じゃあフロントに着いたらね」
私達は、改札を出て右に曲がり少し歩いて三階にある映画館のフロントに着いた。
「そんなに混んでないね」
「うん、良かった」
「じゃあ、工藤さんの好きな映画はどれ?」
「あれ」
彼女が指差したのは、俺が最初から見ようと思っていたアメリカの有名タレントの映画だ。
「へーっ、実言うと俺もあれを見たかったんだ」
「えっ、本当。うわーっ、嬉しいな。坂口君と気が合った」
「そうだね」
多分彼女が選ぶであろう映画をピックアップしておいて良かった。
「さっ、チケット買って中に入るか」
「ちょっと待って。映画館と言えばやっぱり飲み物とか必要ない?」
「うん、そうだね。何が良い?」
「私はイチゴシェイク」
「了解」
彼の笑顔が良い。
上映が始まるとちょっとほろ苦くて甘酸っぱい内容だった。私の右手が、つい彼の左手を握ってしまったけど、彼は無反応。だからそのままにしておいた。
クライマックスで私は更に彼の左手をぎゅっと握ってしまうと彼が反対側の手を私の左手の上に乗せてくれた。そして軽く包んでくれた。彼の手は大きい。
上映が終わり、照明がつくと彼は、私の顔を見て恥ずかしそうな顔をしてサッと手を引いた。そのままでも良かったのに。
映画館の外に出ると
「結構面白かったね」
「うん、中々面白かった」
「お昼何処にする?」
「〇ックでもいいかな?」
「そうしようか」
駅の傍にある〇ックに行くと日曜日の事も有って、結構混んでいた。
「私、席を取っておく。お魚のハンバーガーと暖かいミルクティ」
「了解」
私は、空いているテーブルを見つけると彼が見える側の席に座った。周りの人より少しだけ背の高い彼は直ぐに分かる。
じっと彼を見ているとこちらに気付いて少しだけ微笑んでくれた。何故か私の胸がキュンと熱くなった。
彼がトレイに注文の品を載せて持って来てくれる。
「少し混んでて待たせちゃった。ごめん」
「ううん、坂口君が謝る事無いよ。それよりお腹空いちゃた。早く食べよ」
「ああ」
彼はダ○○マックとポテトL、それにコークLだ。流石、高校男子。私達は今見た映画の感想を話しながら食事をした。とても心が楽しいと言っている。食事が終わると
「工藤さん、少し散歩でもしようか」
「うん」
〇ックを出ると少し風が吹いていた。午前中はそうでもなかったけど、昼過ぎから吹き始めたようだ。
お店を出て、左にUターンするように歩く。少し行くと川べりに出た。何も言わずに二人で歩いた。彼は川側を歩いてくれる。
偶に手が触れ合い、ドキッとするけど彼は無表情。少し歩いていると風が冷たくなって来た。
「寒い」
「分かった」
彼は自分が着ているジャケットをサッと脱ぐと
「これ着なよ」
「でもそれじゃあ坂口君が寒くなる」
「俺は全然平気。この程度で寒かったら寒稽古出来ない」
「じゃあ」
彼が私の肩に掛けてくれた。彼が来ていた所為も有るけどとても暖かい。そして彼の匂いがする。男の人の匂いだけど嫌な匂いじゃない。
「どう?」
「うん、とても暖かいよ」
「良かった」
「坂口君優しいね」
「そんな事言われる事中々ない。嬉しいよ」
「ふふっ」
彼が立ち止まって少し遠くの山脈(やまなみ)を見ている。どうしたのかな?
少ししてから
「どうしたの坂口君?」
「うん、綺麗だなと思って」
空は綺麗に晴れ渡って雲がポツン、ポツンと浮いている。ここから見える山脈のひと際大きな山の上の方に少しだけ雲がかかっていた。
「ほんと、綺麗だね」
少しだけそうしていると彼が私の方を見てじっと見ている。そうずっと見ている。多分そういう事だよね。
私は少しだけつま先立ちになって目を閉じた。彼が私の背中に手を回して来た。私の唇に軽く彼の唇が当たる。初めての感触。決して強くなく柔らかい感触。
少しすると彼が唇を離した。私は彼の背中に手を回して顔が彼に見えない様に彼の胸に顔を付けて
「私でいいの?」
「うん」
私はもう一度顔を上げて目を閉じた。今度はさっきより少しだけしっかりと唇を合わせて来た。
それが終わると私は
「ねえ、もう真理愛って呼んでくれるよね」
「いいよ。真理愛」
「じゃあ、私も悠って呼ぶ」
「ああいいよ。でもお願いが有る。学校ではもう少しの間、苗字呼びにしてくれないかな」
「なんで?」
「我儘な友達が一人いる。彼女が切れると怖そうだから」
「あははっ、強いのにそこの所は弱いのね」
「まあな」
それから、私達は手を繋いでもう少し川べりを散歩した。大分体が冷えたので、今度は少し洒落たお店で暖かいミルクティを二人で飲んで、私の家のある駅まで送って貰った。
私の家のある駅までここから九つ目、もう周りはすっかり暗くなっている。途中、彼が
「ここの駅が俺のマンションの有る駅だよ」
そう言って私の顔を見た。いずれ来ることになるのかな。
俺、坂口悠。今日は一日工藤真理愛と一緒だった。彼女の心の中に入る為の行いもした。もう少しで完全に彼女の心を掴める。
俺が警視庁サイバーセキュリティ対策本部に提案したシステムのプロトタイプが出来上がるまでもう少し。それまでに自分のレシーバも完成させる。そうすれば作戦開始だ。
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面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
次回以降をお楽しみに。
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