第14話 もう元には戻れない
俺、坂口悠。心のどこかでは、まだ友恵は俺を裏切っていないんじゃないかという気持ちが有った。
今日は保健室から学校を早退した。絵里が一緒に付いてくると言ったが、そんな事される理由も無いので断った。
人間の体は勝手だ。こんな気持ちになっても腹は減る。マンションのある駅を降りて途中にあるコンビニで昼食と夕食分を買っておいた。
昼食を食べているとスマホが震えた。友恵からだ。出る事に躊躇したが、出ることにした。本人から直接聞けるかもしれない。
「もしもし、悠。早退したって聞いたから、驚いちゃった。どうしたの?」
「友恵。お前片角や城之内と付き合っているのか?」
「えっ、何言っているの。私は悠だけだよ」
「じゃあ、昨日何故図書室担当を代わったって俺に教えなかった。何故片角と一緒に帰った。何故スマホに出なかった?」
「それは…」
「答えられないのかよ」
「そんな事無い。お願い。会って説明させて」
「説明?理由が有るのか。俺を裏切った理由が」
「私は悠を裏切ってなんかいない。絶対裏切ってなんかいない。お願い、明日のお昼説明させて」
「駄目だ、お昼はお前と食べない。放課後にする」
「そんなあ。…分かった。放課後にしよう」
悠が電話を切った。どうして。片角君が口にする事無いし。私達の関係が城之内君にバレて途中であいつの相手もする事になったけど、同じ一ヶ月だけだと言っていたし。
あの二人がばらすはずがない。とにかく明日の放課後、きちんと説明すれば分かってくれるはず。
翌日、私は、GW明けから図書委員になってくれた同じクラスの女の子に急用が入ったと言って交代して貰った。
お昼、学食に悠はいなかった。放課後になり、2Aに行こうとしたところで片角君に呼び止められた。
「高橋、今日も一緒に帰ろうぜ」
「今日は駄目。悠と会う」
「もう分れたらいいじゃないか。あいつより俺のが良いだろう。いつもお前あの時口にしているじゃないか」
周りの子が変な目で私達を見ている。
「嫌よ。私の彼は悠。あんたじゃない」
「はっはっ、じゃあ今日はっきりさせてやるよ。一緒に坂口に会いに行こうぜ」
「えっ?!」
片角君が強引に2Aに入って行った。
「おい、坂口。ちょっと話が有る。来てくれ」
「なんだ、お前は?」
「俺は、そこにいる高橋と付き合っている片角だよ。つべこべ言わずに付いてきな」
俺、坂口悠。教室の後ろの入口からいきなり男が入って来たと思ったら、友恵と付き合っているとか言い出した。丁度いい。
周りが騒いでいるが俺と片角それに友恵と一緒に校舎裏に来た。
「坂口、高橋はもうお前じゃ足りないんだとよ。俺としている方が良いんだと。こいつの為だ。もう別れろ」
「悠、嘘よ。私は脅されて、させられているの」
「脅されて?どういう意味だ?」
「何言ってんだ高橋。GWのボランティアの帰りに、お前に誘われて公園のトイレでやったじゃないか。めちゃくちゃ気持ちよさそうに声を出していたぜ。だから俺達はその後もずっとだよ。お前じゃ物足りないんだと」
「嘘よ。あの時、こいつに襲われてビデオ取られたの。それで脅されたの。私の意思じゃない」
俺は、友恵を見た。懇願するような顔をしているけど、信じられない。
「俺が、友恵と別れないと言ったらどうする?」
「こうするだけだ」
いきなり殴りかかって来た。まるでスローモーションでも見ているみたいだ。殴りかかって来た腕をそのまま流して、脇腹に思い切り肘打ちを決めてやった。
ぐはっ。
「く、くそっ、このやろう」
飽きずにまた殴って来たよ。バカかこいつ。今度はその腕を取って相手の力のままにひねり倒した。
ぐえっ。
「これ以上やるなら腕を折るぞ」
「出来る訳ねえだろう」
少しひねりを強くした。
「わ、分かった。止めてくれ」
「お前のスマホを出せ」
「どうするつもりだ」
「出せと言っている」
また少し捻り上げた。
「わ、分かった。これだ」
俺はスマホを受け取ると
「友恵、脅されたっていうビデオが入っているか確認しろ、有ったら消せ」
「ふん、ロックは教えねえよ」
俺は、片角の顔に蹴りを入れて弾き飛ばすと友恵からスマホを取り、
「じゃあ、これで終わりだな」
スマホを地面のコンクリートに叩き付けて散々踏みつぶした。更にメモリカードやSIMカードも抜きとるともう一度踏みつぶした。
「ばか、止めろ。俺のスマホが…」
「覚えていろよ」
ボロボロになったスマホを持って片角が逃げ出した。俺はそのまま帰ろうとすると
「待って、悠」
そう言って俺の腕を掴んで来た。
「なんですぐに俺に話さなかった?」
「あいつが一ヶ月で終わらせるからって言われて。悠に黙っていたら分からないって言われて。お願い悠、許して」
「無理だ。俺の心はそんなに広くない」
手を振り払うとそのまま帰った。
どうしよう。悠にバレちゃった。でもこのままじゃ嫌だ。何とかしないと。
翌日、教室に入ると友坂が声を掛けて来た。
「悠、おはよ。もう大丈夫?」
「ああ、昨日スッキリさせたからな。ところで友坂、頼みがある」
「絵里って言う約束でしょ。なに?」
「絵里、お昼当分一緒に食べてくれないか」
「別に良いけど」
チラッといつも他の女の子の顔を見ている。
「いや、良いんだ。無理には言わない」
「ねえ、坂口君。私だったら毎日一緒に食べれるわよ」
なんと工藤真理愛が俺に声を掛けて来た。
「いや、工藤さんとは、まだ…」
「まだ、何?もう一緒のクラスでしょ。一緒にお昼食べてもおかしくないわ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。悠は私に声を掛けて来たのよ」
「でも友坂さん、都合悪そうじゃない。だから私が代わりに坂口君と一緒に食べる」
「はあ、何言ってんの!」
予鈴が鳴った。良かった。
結局、その日の昼は絵里と工藤さんと一緒に学食で食べた。周りの生徒が目を丸くしている。
「おい、あいつ、友坂さんと工藤さんの二人と一緒に食べているぜ」
「知らないのかよ。あの男は2Cの高橋の元カレだよ」
「高橋?ああ、あの二股ゆるビッチか。でもなんでそんな奴が、あの二人と食べているんだ」
その話に俺がそいつらを睨みつけると顔を逸らして昼を食べ始めた。
「そう言えば、高橋さん、校内じゃ、悠と付き合っている内に片角と付き合い始めて更にそこに城之内が加わったららしいよ」
「絵里、なんでそんなこと知っている?」
「もう生徒の間じゃ有名よ」
「そうなのか」
私、工藤真理愛。友坂さんは私と違って情報通。色々な事が彼女の耳に入って来るんだろう。
あっ、高橋さんがやって来た。片角君と一緒だ。こちらを見たけどそのまま二人で奥のテーブルに行ってしまった。
俺、片角弘和。坂口の野郎、俺の大事なスマホもボロボロにしやがって。必ず仕返ししてやる。それにしてもなんであんな野郎に友坂と工藤が一緒に居るんだよ。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
次回以降をお楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます