第2話 気になる人

最後に大切なお願いが有ります。


―――――


 今日も予鈴が鳴るまでは本を読んでいる。友坂の毎度の挨拶も終わっている。


 予鈴が鳴った。


 担任の先生が教室に入って来た。下条五郎。五十過ぎのちょい悪おっさんみたいな先生。女子に人気がある。


 連絡事項の最後に

「坂口、昼休み俺の所に来い」

 もう少しうまく言えないのかよあの先生。そら見ろまた始まった。


「ねえ、坂口君。何かやったのかしら」

「なんか下条先生、怒っている感じだったわよね」

「そうそう、坂口君ってさ、いつも一人で目付き悪いし、なんか怖いよね」


 勝手に言ってろ!


 一限目の先生が入って来た。



 昼休みになり、貴重な昼休みを犠牲にして俺は担任の所に行く為に職員室に入った。

もうこの先生には何回か呼ばれている。

「坂口、全国統一知能選手権の結果が来たぞ。全くお前って奴は呆れるな。ほらこれが結果だ」


 坂口悠。全国統一知能選手権 数学一位 物理一位 総合一位


「まあ、お前の頭も分かるが、授業はちゃんと受けろよ。他の生徒の目もある」

「分かっています」


 俺は、結果の通知を担任から受け取ると直ぐに職員室を出た。



「下条先生、今の何ですか?」

「全国統一知能選手権の結果です。総合一位。呆れますよ」

「あの、全国統一知能選手権って小、中、高、大を問わない数学と物理の知能選手権ですよね。文科省が四年前に始めた。それをあの子が一位なんですか!」


「声が大きいですよ。あいつが一位を取るのは今度が初めてじゃないんです。中学三年の時もそうです。

 日本にも飛び級制度が有りますが、坂口は興味が無いようです。一度聞いたのですが、飛び級先がレベルが低いとかとんでもない事言ってました。もっとも行っても直ぐ卒業してしまうでしょうけどね」

「え、え、えーっ!」



 私、工藤真理愛(くどうまりな)。1Bの生徒。今、職員室にいる。担任から結果を受け取ったところだ。私は他の生徒より大分頭が良いと自負している。私と同じ全国統一知能選手権を受けている生徒がいるとは思わなかった。


それも一位なんて。私は二百六十七番。全国一斉に五百人しか参加する事が出来ないのに。誰だろうあの子。




 俺は、遅れて学食に行った。自動券売機には売り切れの赤文字が大分付いている。定食類は全滅だ。仕方なくカツカレーの券を買ってカウンタに出した。



 カウンタから出て来たカツカレーをトレイに乗せて窓際の二人席の片方に座って、外を見ながら食べ始めると俺の許しも無く勝手に目の前の椅子に座った奴がいる。



「悠、どうだったの。担任、あの件でしょ。今頃だものね結果出るの」

 俺はポケットから通知を出して目の前に投げた。


「ふふっ、流石ね。じゃあね」

 何なんだあいつ。



 私、友坂絵里。坂口悠とは同じ中学。彼は今、感情の無い暗い目をしている。身長百七十八センチ。やや緑がかった短髪。小学校の頃からやっている武道と剣道のお陰で見た目細い細マッチョだ。


 中学二年の最初のころまでは、頭が悪くて悪ガキの北沢芳美と仲が良く、いつも笑いの絶えない明るい子だった。


 だけど、中二の夏が終わった後から人間が変わったように口が重くなり鋭い目つきになってしまった。


 彼の頭が良いのは昔から。ダントツ、いわゆるギフテッドだ。中学知合った頃には、全く理解出来ない本を読んでいた。英語では無かったと思う。


 もっと凄い事を知ったのは、全国統一知能選手権、数学と物理だけに絞った小、中、高、大を問わない知能選手権で、中学三年の時に一位を取った事だ。


 あの選手権に出て来る問題は大学生でも早々に解けないと言われている。私も担任から勧められたが、全く歯が立たない事を知っている私は、受ける事と言うか書類選考で通らない事が分かっていた為、申し込みを止めた。


 彼は北沢芳美と一緒に小学校、中学校を通して地元の武道場に通っている。詳しくは分からないが空手に似た武術と剣道に似た武術を教えている所だ。


 いつも二人で楽しそうにしていた。今でも悠は通っている見たいだ。北沢が通っているかは知らない。


 しかし、あのばか北(北沢芳美)が良くこの高校に入れたものだ。大方悠に思い切り特訓でもされたんだろう。


 私は、悠の事が思い切り好き。でもあの容姿からして彼に声を掛けるような奴はいない筈。だから高校卒業前に彼を拾って私の物にする。それでいい。





 二学期末試験が終わり、もうすぐ冬休みになる。今日は学期末試験の上位三十名の発表がある。

 私は下駄箱で上履きに履き替えると急いで掲示板の側に行った。




 有った。二位だ。工藤満里奈という子も結構出来る。同順位だ。一位は興味がない。取れないからだ。


 理由は簡単。悠がいつも満点でいるから。一学期中間、一学期末、二学期中間、そして二学期末試験全て満点だ。

 でもあいつにとっては当たり前の事か。



 私、工藤真理愛。今回もあの子が満点の一位だ。一度も満点が取れなかった時はない。この前の職員室の時の話といい、どんな子なんだろう。



 まだ、授業開始には時間がある。1Bの私は隣のクラス1Aに行ってみた。この前の職員室ではほとんど見ていなかった。誰だか分からない。


 あっ、同じ順位の友坂絵里さんがいる。彼女なら分かるかも。私は入口から彼女に近付いて


「友坂さん、教えて」

 友達と話をしていた彼女は振り返ると


「あんた工藤真理愛ね、何か用?」

「坂口悠って人いるかしら?」


「「「えっ?!」」」


 周りの人が驚いている。どうしてかしら?


「悠の事?ちょっと来なよ」


 彼女は、窓際の一番後ろに座って本を読んでいる男の子の前に私を連れて行くと


「悠、この子があんたに用だって」

 その人は本から目を離すと上目遣いに私を見た。


 人を食い殺すような鋭い目つきだ。ちょっと怖い。

「何か用か?」

「毎回満点を取っている人がどんな人かと思って来たの」


 彼が読んでいるのは、十一元ひも理論が書かれている原書だ。信じられない。


「用がないなら帰ってくれ。邪魔だ」

「分かったわ。私は工藤真理愛覚えておいてね」


 私はそう言うと自分のクラスに戻った。

「悠、知り合い?」

「俺が知るかよ」


 何あの子、悠に近付くなんて。


―――――


 友坂絵里と工藤真理愛。今後の展開をお楽しみに


お願いが有ります。

本来は読者様の評価によって付けられる星★ですが、書き始めは星★が少ないと投稿意欲が消えそうになります。ぜひご協力お願いします。


感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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